オタク女子と幸運の白スーツ
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記事:アオノスミレ(ライティングゼミ・1月コース)
「さ、寒い」
当時、結婚相談所で婚活していた私は、お見合いに向かう道を震えながら歩いていた。結婚相談所でのお見合いは、ホテルのラウンジで行われることが多い。そのため、お見合いに向かう時はTPOに合わせて綺麗めなワンピースなどを着ていたのだ。基本的におしゃれな服というのは、薄着なので寒い。しかも、その日は年末の寒さに加えて、みぞれまじりの雨が降る悪天候の日であった。
「もう無理。仲人さんに電話をかけて、今日のお見合いはキャンセルしよう」
結婚相談所では成立したお見合いをキャンセルすると、罰金を支払わなくてはいけない。しかし、払ってもいいと思えるぐらい今日のお見合いは行きたくない。寒過ぎて、お見合いの場所まで辿り着ける自信がない。
優柔不断な私は、キャンセルするかを決めかねたまま歩き続け、お見合い会場の近くまできてしまった。ここまで来たら仕方がない。お見合いして帰ろう。ホテルのラウンジでのお見合いだと、普段飲まないようなちょっといい紅茶が飲める。紅茶飲んであったまって帰ろう。
ホテルのロビーには、これからお見合いする男女が集まっている。男性はスーツ、女性は私が着ているようなワンピース姿だ。
お見合いする男女の群れを見ていた私は気づいた。スーツ姿の男子の中に、白いスーツを着た背の高い男がいることに。まさか、お見合いに白スーツ。うっわー、お見合いする相手の女の子、可哀想。そう思いながら、私はお見合いの席に向かった。
その可哀想な女の子は、私であった。白スーツ男が私のお見合いの相手だったのである。悪天候の中、寒さに震えながら、やっとの思いで辿り着いたお見合いの相手が、謎の白いスーツを着た男子。しかも、オシャレに着こなしている感じは全くなく、白スーツの中はヨレヨレの黒っぽいワイシャツに黒いネクタイ。お隣でお見合いしている細身のスーツをパリッと着こなしている男子を横目に見ながら、目の前にいる白スーツ男を見て泣きたくなる私である。
当時の私は、BL好きのオタク女子と言う自分にとてもコンプレックスを持っていた。オタクなだけじゃなくて、気が利かない上にズボラな女子であることも嫌だった。そのため、日常でも婚活でも、常識的で気配り上手な女子を必死に演じていた。それがとても辛かった。
お見合いでも、オタクだとバレないよう、ズボラ女子だと気づかれないように、自分を取り繕うのに必死だった。そして、疲労困憊していた。
目の前の白スーツ男のおかしな格好に、私はとても衝撃を受けた。そして、今まで必死に取り繕っていた何かは全て吹っ飛んだ。
いつもと違って、非常に肩の力が抜けたお見合いとなった。白スーツ男もオタクらしく、好きなゲームの話や漫画の話などしてお見合いは終了した。
話が弾んだか盛り上がったかと言われると、そんなことはなかった。何せ相手は、女子慣れしていないオタク男子である。ただ、お見合い後、いつもみたいに疲れることはなく、むしろ元気になった。そのノリで、私は結婚相談所のサイトから、白スーツ男に交際希望を出してしまったのである。
この白スーツ男が、後に私の夫となるのであるが、夫に聞いたことがある。なぜ、お見合いに白スーツで現れたのかを。
結婚相談所で婚活していた夫は、担当の仲人さんから服装についてアドバイスを受けた。
「男性も明るい色の服を着た方が、爽やかに見えていいですよ」
仲人さんのアドバイスを聞いた夫は、明るい色の服を探しに近所のリサイクルショップへ行き、白スーツを購入したのであった。
いや、仲人さんの言う明るい色の服って、そういう意味じゃない。ネイビーとか爽やかな色のスーツを着ろってことだ。オシャレに疎いオタク男子が、リサイクルショップで服を買うんじゃない。ちゃんと店員さんが相談にのってくれる店で、服を見繕ってもらえ〜。
夫はリサイクルショップで買った白スーツをとても気に入っていた。
「この白スーツ、シャアの私服みたいでカッコいいだろ」
シャアの私服? 根強い人気を誇るアニメ『ガンダム』には、白い仮面に赤い軍服を着たシャアというキャラクターが出てくる。そういえばシャアの私服って白スーツだった。シャアは確かにかっこいい。しかし、お見合いでシャアに会いたくない。
シャア好きの夫が再び白スーツを着ないように、私はリサイクルショップへ白スーツを売りに行った。我ら夫婦を結びつけてくれた幸運の白スーツよ。また、どこかで迷える婚活男女を結びつけておくれ。
運命の出会いは分かりにくい。それは本当にヘンテコな出会いかもしれない。でも、きっとこの地球上の色んなところで、色んな出会いが起きている。それは、本当にちょっとしたきっかけ。けれども、それで人生が変わることがあるのだ。
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