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猫のイタズラには理由(わけ)がある。~ティッシュ事件の真相~


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記事:琴森美香子(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
その日、急な残業を終えて帰宅し、リビングのドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、白いふわふわとした物が散らばる光景だった。
 
「えっ! 雪?!」
しかし、部屋の中に雪が降るはずもない。よく見ると、それは無惨に引き裂かれたティッシュペーパーだった。
 
「あきこ~、今度はティッシュ?!」
私は、出勤前にティッシュボックスを棚の中に仕舞い忘れた自分の迂闊さを呪った。
 
そんな私の視線の先には、3週間前に保護猫施設から正式譲渡を受けたばかりの黒猫「あきこ」が、悪びれる様子もなく、ちょこんと座っていた。
 
私は子供の頃から猫が大好きだった。しかし、転勤族の家庭に育ち、ペット不可の社宅暮らしが長かったため、飼うことは叶わなかった。
 
大学卒業後、就職してからもペット可物件は家賃の高さに諦める日々、猫との生活は夢のままだった。だが、管理職となって転勤した新たな土地で、念願のペット可住宅に住めるようになった。
 
引っ越し後、荷物の片づけもそこそこに、地元の保護猫団体のサイトを隅々までチェックし、甘えん坊な黒猫の女の子を見つけた。
 
「この子だ!」と直感し、迷わずトライアルを申し込んだのが先月末。それから1週間のトライアル期間を経て、正式に家族として迎え入れたのが3週間前だった。
 
ようやく実現した猫との暮らし。ところが、最初「借りてきた猫」だったあきこが、イタズラ天使(=悪魔?)へと変貌していくのに時間はかからなかった。
 
「こんなはずじゃなかったのに……」
このままではせっかくの猫ライフが台無しだ。何とかしなければ。
 
次の日から私は、ネットで「猫 イタズラ防止」と検索し、片っ端から熟読していった。その結果、猫のイタズラについて、いくつかの重要な気付きを得ることができた。
 
まず一つ目は、猫にとっての「イタズラ」は、人間のいたずらと違い、本能的な行動である、ということ。
 
例えば、家具を引っかくのは「爪を研ぐ」ため。もしも爪を研がなかったら、伸びすぎて巻き爪になり、肉球や皮膚を傷つけるおそれがある。つまり、爪とぎは猫にとって必須の、いわばお仕事なので、イタズラではなく、人間にとっての「問題行動」と位置付けることが必要。
 
二つ目は、爪とぎのように本能的な行動は、「やめさせる」ことは出来ないので、適した場所を用意できるかどうかがカギとなる。
 
例えば、爪とぎを部屋のあちこちに置けば、家具よりそちらを使う可能性が高まるし、窓際に爪とぎ兼用のキャットタワーを設置すれば、爪とぎと同時に木によじ登る本能も満たすことができる。
 
三つ目は、猫が問題行動をしたとき、大声で叱るのは逆効果だということ。猫は「ヤッタ! 受けた!」と勘違いし、イタズラがエスカレートすることも。
反応せず、その場を離れるのがベスト。「期待したリアクションと違う……」と猫を失望させることで、問題行動を抑える効果がある。
 
 
それに、問題行動をしたときに大声で叱ると、驚いて一時的にやめるかもしれないが、それは「怖いからやめる」だけであり、根本的な改善にはつながらない。叱るより、爪とぎを正しい場所で使ったらご褒美を与えるといった「ポジティブ・フィードバック」が、猫にも効果的とのこと。
 
ただ、こういった冷静な対応は、なかなかできないので、「猫が問題行動をしそうになったら、猫じゃらしで気を逸らす」といったルールを予め作っておくことが有効だ。
 
そして四つ目が、すべての猫に同じ対策が通用するわけではないということ。活発な猫にはエネルギー発散の遊び、おっとりした猫には穏やかな対応、というように、猫の個性に適したカスタムメイドの対応が求められる。
 
そして最後が、問題行動の改善には時間がかかる、ということ。焦らずじっくり見守るのが成功への近道。忍耐力が、猫の未来を変えるのだ。
 
こういったことが分かってくるにつけ、あきこが問題行動を取るたび、感情的に叱っていた自分を反省した。あきこはきっと悲しかっただろう。
 
そもそも、あきこは保護猫施設で大勢の猫と一緒に暮らしていた。それがうちに来て、突然ひとりぼっちになったのだから、きっと、どうやって遊べばよいか分からなかったに違いない。
 
しかも、私が残業すれば食事の時間が遅れ、お腹も空いたはず。寂しさと空腹を紛らわせるため、ティッシュを箱から引き出して遊び、狩猟本能を満たしたとしても、責められまい。
 
「まずは、あきこが安心して過ごせる環境を整えよう」
そう決めた私は、次の休日にホームセンターで「自動給餌器」を購入した。これであきこは、私が残業しても、いつでも決まった時間にごはんが食べられる。
 
さらに、ネット検索でティッシュを引っ張り出せない「フタ付きティッシュケース」を探し出し、注文した。
 
そうして、目の前でゴロンと転がり、お腹を見せて「撫でて、撫でて!」と甘えてくるあきこに向かって、そっと声をかけた。
 
「今まで、ゴメン。これからもヨロシクね」
 
 
 
 
***

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2025-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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