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過敏性腸症候群になったら、QOLが上がった話


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記事:アオノスミレ(ライティングゼミ・1月コース)
 
 
「すみません! 降ります!」
私は、慌てて電車を降り、駅のトイレへと走った。
 
これが私の会社員時代の通勤光景である。会社へ向かう電車の中で、お腹がギュルルとなり、一駅ごとに降りてトイレへ向かった。これが毎日である。そんな調子なので、駅のトイレの場所は全て把握していた。また、一駅ごとに降りてトイレは向かうため、通勤時間は、通常の3倍かかった。3倍かかる通勤時間を見越して、早起きして電車に乗るため、常に寝不足であった。
 
病院で診察してもらったところ、腸自体には何の悪いところは見つからなかった。そして、過敏性腸症候群と診断された。ストレスなどによる自律神経の乱れからくるものと言われているが、過敏性腸症候群の原因はよく分かっていない。
 
私の場合、この症状は会社へ行く電車の中で起こるものであって、帰りは何事もなく電車に乗って帰ることができた。まるで、学校に行く時間になるとお腹が痛くなる小学生のようである。
 
薬で一時的に落ち着いたりしたが、またぶり返したりと中々良くならなかった。初めは行きの電車の中だけで起こっていた症状が徐々に広がり、買い物をしてレジで並んでいる時や初めて行く場所でも起こるようになった。要は、すぐにトイレに行けないか、初めてでトイレの場所がよく分からない場合などである。
 
こんな調子なので、休日も出かけるのが怖くなり、引きこもり状態になった。
 
薬だけでなく、納豆や味噌、甘酒などの発酵食品を試したり、自律神経を整えるためにヨガを始めたりした。それを始めたことによる期待で気分が明るくなるからか、初めは効果があった。ただ、続けていくうちに、また逆戻りになった。
 
一番効果があった方法は『会社を辞める』であった。
 
当時の仕事は、元々やっていた仕事の部署がなくなったため、異動した全く畑違いの部署での全く経験がない仕事であった。おまけに相談できる人がおらず、私1人で進めなくてはいけない。正直、辛かった。
 
転職しようにも、勤めていた会社がとてもマニアックな分野であったため、どう進めていいのか分からなかった。冷静に考えてみると、そんなことはないのだが、精神的に追い詰められており、視野を広げて考えると言うことが出来なくなっていた。転職とまでいかなくとも休職という方法だってあったのに。
 
会社を辞める踏ん切りすらつかないでいたのだが、過敏性腸症候群のあまりの辛さに、そしてこのままの状態だったら、いつか『漏らす』と言う恐怖感で、ついに会社を辞めることになったのだ。
 
会社を辞めた私は、しばらく何もやる気が起きず、家でぼーっとしていた。そんな生活を2ヶ月くらい送り、ようやく気力が出てきたところで、今までの生活を見直し始めた。早寝早起きの規則正しい生活をし、バランスの取れた食事を心がけることにした。食事なのだが、パンやパスタなどの小麦製品を減らし、米中心の食生活に変えた。これは割と効果があったと思う。ただ、これは、私の体質もあるのかもしれない。
 
会社員時代、ストレスからか、甘いものが食べたくて仕方がなかった。コーヒーも一日4〜5杯と、がぶ飲みしていた。会社を辞めたら、甘いものもコーヒーも欲しくなくなり、コーヒーも1日1杯くらいに収まった。すると夜もよく眠れるようになり、それと比例してお腹の調子も良くなってきた。そして、体調が整い出したところで、近所の公園を散歩し始めた。
 
現在でも、完全に治ったとまではいかない。それでも夫とお出かけをしたり、気の合う友達と女子会をするまでに回復した。パートでの仕事も始められるようになった。そして、生活習慣が整ったからか、3キロほど痩せ、会う友達皆から肌が綺麗になったと言われた。
 
あの時、会社を辞めていなかったら、どうなっていたかを考えると、かなり怖い。過敏性腸症候群だけでなく、その他の数値で健康診断で引っかかったこともあった。もしかして、今頃ストレスで突然死とかしてたんじゃないだろうか。
 
私の過敏性腸症候群は、気づかせてくれた。私が無視し続けていた「もう限界だ」と言う私の心の声を。身体の不調は、自分でも気づかない自分の心の声を表しているのかもしれない。
 
身体が健康で好きなことが出来るというのはある意味、奇跡だ。しかし、皮肉なことに健康な時には、その奇跡に気付かない。
 
生きていると今までの人生を見直すポイントがやってくる。病気など、それはあまり嬉しくない形でやってくるのかもしれない。でも、それがやってきた時にはしっかりと自分の心の声を聞きたいと思う。
 
私の生活は、過敏性腸症候群に罹る前よりも明らかに満足度が高まった。こんな病気には二度となりたくないが、今ある幸せに気づいたのは、この病気のおかげだ。
 
 
 
 
***

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2025-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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