悪玉コレステロールをぶっ飛ばせ!
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:水口 宏司(ライティング・ゼミ5月コース)
衝撃だった。いや、絶望だったと言ってもいい。
毎年恒例の健康診断。今年はいつにも増して胃が痛い。結果用紙に記載された「コレステロール値:要検査」の文字とその下には冷徹なコメントが書かれていた。「30分以上の運動と食生活の改善」を推奨します。運動については、数ヶ月前からジムに通い始め、毎日30分の筋トレとウォーキングは習慣化できていた。汗を流すのは心地よく、運動不足は解消されつつあった。しかし、真の敵は、俺の食生活に潜んでいたのだ。
俺の食卓は、まるで茶色の戦場だった。朝からカツサンド、昼はラーメンにチャーハン、夜は唐揚げとビール。肉と油にまみれた茶色い料理ばかりが並び、緑のものは飾り程度にしか存在しない。これが健康の敵、メタボ鬼の強力な糧になっていたとは、思いもしなかった。このままでは、いずれ俺の体はメタボ鬼に完全に支配されてしまうだろう。
野菜が必要だ…だが、スーパーが近くにない。
ふと見上げた先には、殺風景なベランダ。かつては物干し竿と、時折放置された段ボール箱が転がるだけの無機質な空間だった。しかし、今はそこに希望の光が見えた。
そうだ、ここで家庭菜園作ろう! 身近に野菜があれば、きっと食生活も変わり、メタボ鬼を退治できるはずだ。しかし、なにせ俺は初心者。右も左もわからない。肥料の種類も、土の選び方も、水やりの頻度も、何もかもが未知の世界だった。
本屋に駆け込み、園芸コーナーで初心者向けの分厚い本を何冊か買い漁った。
夜な夜な読み込み、見よう見まねでプランターを並べ、土を準備した。初心者でも育てやすく、すぐに芽吹いてくれると評判の、選りすぐりの精鋭たちだ。鮮やかな緑が眩しいサニーレタス、みずみずしい緑のキュウリ、薬味の達人大葉、そして食卓のアイドルミニトマト。彼らが、俺の仲間となる初期メンバー、いわば第一陣となる。
プランターに土を入れ、小さな苗をそっと植え付け、水をやる日々が始まった。最初はただの土と苗にしか見えず、正直、面白みも感じなかった。「植物の生命ってこんなに地味なのか……?」焦る気持ちを抑え、気長に数日を過ごした。毎朝、ベランダに出ては、土の表面をじっと見つめる。変化のない日々に、時折「本当に芽が出るのだろうか」と不安がよぎった。
しかし、ある朝。土から小さな芽が、まるで力強く土を押し上げ、顔を出しているではないか! 「おお!」その力強さに、思わず声を上げてしまった。まるで生まれたばかりの赤ん坊のようだ。その小さな芽が、土を払い除けて地上へ向かう姿は、まさに生命の躍動そのものだった。そこからは、親になった気分で野菜たちの成長を見守った。毎日の水やりは、単なる作業ではなく、彼らへの愛情表現へと変わった。時には「今日も元気か?」と話しかけ、彼らもまた、すくすくと育つ姿で応えてくれる。言葉は発さないが、その成長こそが彼らの返事だった。
そうして、仲間の野菜たちは、すくすくと、いや、ぐんぐんと大きくなっていった。葉は青々と茂り、茎は太く伸び、蕾がつき、そして小さな実が膨らみ始めた。毎日、彼らの成長を見るのが楽しみで仕方なかった。
そして、ついにその時が来た! 収穫の時だ。
食卓に並んだ彼らは、それだけで食卓を彩り、食欲をそそる。今まで茶色一色だった俺の食卓は、まるで鮮やかなパレットのように生まれ変わった。何より、自分で育てた野菜は、スーパーで買うものとは比べ物にならないほど、みずみずしくて美味しい。口に入れた瞬間のパリッとした食感、鼻腔をくすぐる爽やかな香り。家族も「こんなに美味しい野菜、初めて食べた!」と目を輝かせた。我が家では、毎日「むしゃむしゃ」という咀嚼音が響き渡り、まるで収穫祭のようだった。朝からカラフルな野菜を食べるだけで、気分がハッピーになり、体中に力が満ちていくのを感じた。
その後は仲間を増やすため、近くの畑の区画を借りることにし、新しい野菜としてカボチャ、ピーマン、ナス、パプリカ、ほうれん草…畑はどんどん賑やかになり、メンバーは増えていった。
そんな仲間たちとの共同生活は、あっという間に時が過ぎた。彼らと協力し、共に不健康という目に見えない敵と戦う中で、俺の体は確実に変わっていった。顔色も良くなり、体も軽くなった。階段を上っても息切れしなくなり、朝の目覚めも格段に良くなった。以前は常に感じていた倦怠感も消え去っていた。
ある日、郵便ポストに一枚の封筒が届いていた。そこには「健康診断のご案内」という文字が書かれていた。
「そうか、もう1年か……」
あの日の悔しさが、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。要検査という冷酷な判定、メタボ鬼の影に怯えていた日々。しかし、今の俺は違う。俺には、ベランダや畑で育った、頼もしい仲間たちがいる。彼らと共に培ってきた知識と経験、そして何よりも、健康な食生活という強い武器がある。あの日の不健康な俺は、もはやいない。
魅力的なとんかつや唐揚げの誘惑に打ち勝つ時が来た。あの悔しさを晴らすため、そして、俺が手に入れたこの新しい健康を証明するため、俺は自信満々に健康診断の会場へと向かった。俺たちとの戦いは、ここからが本番だ!さあ、行こう!
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00