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塩顔メガネクラスターに刺さりたい《絶対麗度ライティング》


*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

絶対麗度ビューティー・レコーディング・ラボ

 

記事:mayu(絶対麗度ライティング)

 

「結局、“王子様”っていないんだよね」

業務中、移動の合間、地下の立ち食い寿司のカウンターで、醤油を小皿に注ぎながら会社の上司はそう言って笑った。

同い年で、仕事ができて、いつもどこか一歩引いた距離感のある先輩だった。業務の話はよくするけれど、お互いあまり踏み込まない。なのに、なぜかお互い婚活をしていると分かってから、やけに話が盛り上がる。

仕事は現実的にバリバリこなすタイプなのに、恋愛観は意外と乙女なんだ、と思って少し笑ってしまった。

「そりゃそんな人いたら誰も苦労しないですよ」と内心毒づく。
大人なんだから、条件も生活も価値観もあるし、白馬に乗った誰かが突然すべて解決してくれるわけじゃないじゃないか、と。

でも同時に、自分の中にもまだ、その幻想の残骸みたいなものが微かに残っている気がして、少し恥ずかしくなる。

「で、どんな人選んでるの?」

「見た目で言うと、『塩顔メガネ』の人がタイプですね」

と答える。自分でも少し可笑しくなる。

それは、結婚相談所に入って初めてのカウンセリングで、仲人の方に「お相手のイメージはありますか?」と聞かれた時に出てきた言葉だった。それまで、自分の顔の好みをこんなふうに言語化したことはなかった気がする。

大学時代から付き合っていた彼との同棲・婚約破棄になり、1年ほど経って、漸く恋愛に前向きになれた頃、「彼氏もいないんだし、面白そうなことは全部やってみよう」と思って、広告で見かけた「恋愛目的読書会(BOOKL OVE)」に初めて参加した回は、三浦さんとIBJの方の対話型講義がセットになっていて、「恋愛は“1”を売るマーケティングだ」という話を聞いた。

妙に、その言葉が頭に残った。

たぶん私は、“運命”とか“相性”みたいな曖昧なものを、どこか整理して理解したかったんだと思う。

そして私は、そこで聞いた話を鵜呑みにして、まんまと結婚相談所に入った。

秘めフォトにも参加した。

気づいたら脱いでカメラの前にいた。

人生、意外と流れで進む。

秘めフォトの体験は不思議だった。撮影への参加も、気づけば5回目、6回目になり、名古屋遠征まで経験した。少しずつ、「いいかも」と思える写真が増えていく。人に見せられないフォルダに写真がどんどん増えていく。撮影を楽しみに、少し運動してみたり、下着を揃えたりもした。

 

最近、褒められることを前よりちゃんと受け取れる瞬間がある。

昔だったら、たぶんもう少し疑っていたと思う。社交辞令とか、たまたまとか、相手が優しいだけとか。

でも最近は、「わたしがそう見える瞬間もあるのかもしれない」と思える。

 

婚活は、もっと理想を捨てて、いかに現実に向き合うかの消耗戦だと思っていた。正直、しんどかったら人生のネタにしてやろうくらいの気持ちもあった。

でも実際始めてみると、意外なくらい、会う前より会った後の印象のほうがいい。

プロフィールや写真だけだった人に、声やテンポや表情が加わると、「もう少しこの人のことを知りたい」と思う。マッチングアプリみたいに、会う前に長くメッセージをしないのも、案外性に合っているのかもしれない。余計な先入観を持たずに会える。申し込みや申し受けの段階では、そこまで熱量が高いわけじゃない。条件が合うとか、共通の趣味があるとか、なんとなく気になるとか、そのくらいの温度感で会うことも多い。

でも実際に会ってみると、「もう少しこの人のことを知りたい」と思う。

自分の話をしつつ、こちらにも質問をしてくれる人。プロフィールを読み込んで話題を振ってくれる人。次の提案を自然にしてくれる人。私の夢の話を否定せず聞いてくれる人。ネイルをさらっと褒めてくれる人。多くは語らなくても、沈黙が苦にならない人。

お見合いした段階では、みんな普通にいい。

でも、決め手にはならない。

それが、一番やっかいだ。

条件、生活、距離感、価値観。フィーリングの上にいろんな要素が重なって、意思決定はどんどん複雑になる。

ふと、「結婚向きの人」という社会性に騙されていないか、と思う時がある。

ちゃんとしている。安定している。穏やか。誠実。もちろん大事。

でもそれは、“好き”と同じなんだろうか。

 

三浦さんの講義でたびたび登場する、「ドーパミン的な恋愛」という言葉を思い出す。確かに私は元々、熱量とか高揚感とか、少し危うい楽しさに引っ張られやすい。

けれども今、頭の中には同じクラスターに分類されそうな、何人もの塩顔メガネがいる。ときめきじゃなく安心で人を好きになることを、まだ私はうまく信じきれていない。

葛藤しながら、自分への理解を深めながら
わたしは、明日も塩顔メガネの、未来の夫を探しにいく。

***

この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。

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2026-06-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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