ペンギンOL、「空を飛ぼう」と決意する
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:はなおか ゆう(ライティング・ゼミ 平日コース)
小さい頃から、どうにも、「みんなが当たり前にしていること」……少なくとも自分からそう見えて仕方がなかったこと、それが、やたらとうまくできなかった。
なかよしグループで「お揃い」を持つこと。
トイレには誘い合って行くこと。
テレビで流行っているものをみんなで楽しむこと。
教科書や配られたプリントを毎日持ち帰ること。
「委員会」で決まっているやることだけを、やること。
ロッカーの中に物を溜め込まないこと。
毎日、1ページずつドリルを解き進め、一冊やり抜くこと。
自分の興味ではなく、決まった順番で教科書を勉強すること。
授業中や通学路では、読みたい本を我慢すること。
朝、決まった時間に起きて、決まったルートで通学をすること。
着るものも、持つものも、部屋も、かわいく装うこと。などなどなど。
どれか1つくらいは「できない」仲間がいるものだけど、「全部仲間」はいなかった。
表立って、クラスメイトや教師、親から、全部を指摘されて、叱られている仲間は、ゼロだった。
成績は悪いけど、運動神経は抜群のやんちゃ坊主の思い出エピソードではなく、やっかいなことに、私はテストの成績だけは抜群に良いオンナノコだった。
大人になれば、くだらない、と笑ってしまえることだけど、小・中学生女子にとって、この手の「どうがんばってもできないこと」は絶望だった。
童話『みにくいアヒルの子』が描くように、いじめられる。周囲は、いじめるというか、扱いあぐねてスルーするしかない。
だって「色が違う」どころじゃないんだもん。仕方ない。
しかも、灰色だったアヒルの子は、将来は優美なハクチョウになれるけど、ここまで絶望的だと、親も教師も苦い顔で予言する。ハクチョウにもなれないぞ、と。
「どれだけ勉強ができたって、社会みんなと同じような基本ができないと、まともな仕事に就くなんてできません」
遠足で鳥類博物館へ出かけ、ほぼ世界中の鳥の剥製や、生態・特徴を一度に目の当たりにした時。私が惹かれたのは「ペンギン」だった。
ペンギンは、直立二足歩行する。飛べない。早く走れない。
鳥なのに、直立二足歩行という時点で、おかしい。
飛べない鳥。確かに他にもいる。その代わり、その鳥は速く走れたりする。
どちらもできないペンギンは「水中を飛ぶように泳げる」のだ。
10代のうち、私はペンギンに親近感を抱きつつ、嫉妬した。
私には、ペンギンにとっての「泳ぎ」のような、唯一無二的な特技がなかったから!
テストの成績がいいと言ったって、難関名門校にいるわけでもなく、全国模試など受けての1位でもなく、狭い狭い世界でのこと。
15歳もすぎれば、自分のルックスが標準以下だと明白に理解もできる。
どこかの殿方に「永久就職」もできそうにないし、突出した才能もないし、サラリーマンには「なれない」と予言されたし。いっそ糸車で指を突いて100年くらい眠りたい。だけど、どこにもそんな糸車はなかった。
大学生になって、少しばかりは取り繕うことを覚えた。
化粧も覚えた。我慢も覚えた。でも、連続3日以上は難しいんですけど……。
それでも、我慢にならない「好きなこと」は人の倍も倍、とことん没頭できる力が身についた。「泳ぎ」にあたるものが、ようやく見つけられた。
私は、泳ぎに泳いで、とにかく泳ぎまくった。高校卒業後、遠くへ遠くへと足掻き続けた。
そして「ペンギンしかいない」会社に就職できた。
そう、世の中には、必ず、同族がいる。正真正銘、絶滅危惧種、最後の一羽になれるほど、甘くもないのだ。
アヒルの村にだけいたら、それには一生気づけなかった。
私にとっての「泳ぎ」、それが「本を愛すること」だった。
私は今、「本」のことだけを考え、「本」のためにだけ、仕事に取り組み、サラリーマンをしている。
まともな「仕事」に就けないと言われたけれど、実際、今の仕事が「まとも」かどうかは誰が決めるかわからないけれど、会社員としてお給料をいただけている。
相変わらずデスクは汚い。
最低限しか化粧もできない。
納得できないことは3日も続けられない。
なんなら、興味がない人の顔も、名前は何度会っても覚えられない。
それでも。
会社員ができている。なんなら会社員が楽しい。
34歳OL、灰色のアヒルからハクチョウにはなれなかったけど、南極大陸まで泳ぎ着けた!
今、「本」を取り巻く環境は、南極さながらに厳しい。ブリザードが吹き荒れ見通しが利かず、それでいて温暖化は氷河を溶かし、大陸が減少している。南極がなくなってしまったら、世界は大きく影響を受ける。しかも悪い方に。
南極を守るために、ペンギンは立ち上がる。
声をあげたい、と思った。あげる力が欲しい、と願った。
よし!! ライティングゼミを受講しよう!
「読む」ことから「書く」ことへ。
ペンギンの、これはもしかしたら「空を飛ぶ」に等しい挑戦なのかもしれない。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/40081
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。