メディアグランプリ

ライティング・ゼミが、ABCユニットにのせて私にくれたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:神崎舞(ライティング・ゼミ日曜コース)

 

 

「だからさあ、君の日本語はいつもわかりづらいんだよ!」

 

また始まった。上司からのダメ出し。

私だって、自分の書いた資料がわかりやすいなんて思っていない。

納期までに作れって言われたから作っただけだ。

語彙力のない私が資料を作ったらこうなるよと、半ば当てつけだった。

わかりやすく作れるというなら、上司が最初から自分で作ればいいじゃないか。

仕事中にSNSばかり見ている暇があるならさ。

 

文章を書きたくないから就職活動をした。はずだった。

大学院修士課程に進んだものの、論文を書くことも論文を読むことも自分には向いていないと悟り、博士課程への進学は見送ることにした。

毎月の収入も欲しかった。

親の口出しにもうんざりしていた。

就職すれば、今の悩みが全部解決するはずだった。

 

文系留年院生である私を拾ってくれたのは、とある教材制作会社だった。

研究開発チームという、新商品の教材を開発する部署への配属となった。

入社直後に研究開発チームに配属されたのは私が初めてだったということもあり、聞こえのいい花形部署に配属された私は、控えめに言って浮かれていた。

 

しばらく経つと、社内の様々な声が嫌でも耳に入ってくる。

「最近の研究開発チームは売れるものを作ってくれない」

「経営陣が作りたいものを、研究開発チームに作らせているだけでしょ」

「新商品はクオリティがね……。使わない方がいいよ」

そんなことはわかっている。

新商品が売れるようなものではないことも、経営陣が作りたいものを研究開発チームが作っていることも、クオリティの高いものを私が作れないこともわかっている。

新人の私を研究開発チームに配属させた会社に怒りをぶつけるしかなかった。

数字さえ上げていれば認められる営業の人たちが羨ましくて仕方なかった。

 

そんな矢先だった。SNSに「天狼院ライティング・ゼミ」の案内を見たのは。

天狼院ってあれだ。三宅さんがブログ書いてるやつだ。

三宅さんは妹の同級生で、SNSで私とも繋がっていた。

だから、SNSに流れてくる三宅さんの記事はたまに目にしていた。

三宅さんの書いた記事は、たしかに面白かった。

 

私はここに一筋の希望を見出した。

三宅さんみたいに面白く文章が書けるようになったら、私の仕事もうまくいくかもしれない。

上司に日本語がわかりづらいと言われることもなくなれば、私の手ですごい教材を作れるかもしれない。

次の瞬間には、受講申し込みを終えていた。

 

ライティング・ゼミに数回出席した私は、あることに気が付いてしまった。

ここは私が来るべき場所じゃなかった……。

ライターになりたくて、三浦さんに憧れていて、天狼院のファン人が集まっている場所なんだ。

私みたいな「書きたくないけど書かされるんです助けてください」とかいう構ってちゃんは見当たらなかった。

語彙力がないから書けないわけではないことを知ってしまった私は、もはや昔の言い訳を使うことすらできなくなり、余計に苦しくなった。

それでも、とりあえず講義には出席した。

既にお金は払ってしまっていたし、日曜の夜は他に予定がなかったから嫌でも出席できてしまった。

ただ、課題を提出したことは1度もなかった。

何を書いていいかもわからなければ、書くために時間を割く気にもなれなかった……。

 

そのころ会社では、研究開発チームが主催する社内勉強会が流行っていた。

研究開発にあたって入手した業界の最先端の情報を、営業など別の部署の人に教える勉強会だ。

私が主催した勉強会の結果は、散々だった。

うまく説明できない、聴衆から反応もない、急な質疑応答に頭が真っ白になる……。

私にとって、書く才能以上に持ち合わせていないのが、べしゃりの才能だった。

 

成す術をなくした私の頭の中で、それでも、皆の言葉が渦巻いていた。

やっぱこういう勉強会いいよねえ、と求めてくる営業部長。

いいもの作れよ、と発破をかけてくる経営陣。

なんで本読んでないの、と怒る上司。

君にとっては勉強になったかもしれないけどそれぐらい常識でしょ、と突き放す先輩。

社員が勉強しないことの責任がこっちにくる、と嘆く人事。

馬鹿でも読める本があったら教えてください、と助けを求める後輩。

書くことはサービスである、と言い続ける三浦さん。

 

そんな時だった。

「メルマガをやりたい。社内向けの、勉強用メルマガをやりたい」

ふと思いついた案に、一番驚いたのは私自身だった。

文章を書きたくなくて就職したんじゃなかったのかと。

でも、何かそこに道があるような気がした。

上司の許可は2つ返事でおり、週次の全社朝礼で社内メルマガの開始と読者募集の告知を行った。

 

記念すべき第一回のメルマガでは、ある本の告知を行った。

私はここで、人生で初めてABCユニットを使って文章を書いた。

書くと決めてしまえば、書きたいことはいくらでも溢れてきた。

なるほど、私に足りなかったのは語彙力ではなかった。

書くことに真正面から向き合う気持ち、つまり、うまく書けようと書けなかろうと自分が書いたものに全責任を負う覚悟が足りなかったのだ。

 

第一回メルマガを配信した後、「その本買うことにしました」「ちょっと見たいので本を貸してください」という返信が飛び交った。

気がつけば、メルマガの読者数は社員の半数を超えていた。

 

もう、書かない理由はなかった。

幸いなことに、ライティング・ゼミの課題を提出するチャンスはあと1回残っている。

私は今、最初で最後の、ライティング・ゼミの課題を書いている。

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2017-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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