メディアグランプリ

私の友達はきっとあなたの友達


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:海野真琴(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私には、時々会いたくなる友達がいる。
正直、しょっちゅうは会いたくないが、月イチくらいで無性に会いたくなる。
 
彼は、私が会いたいなと言うといつでも駆けつけてくれる。
仕事のピークを過ぎたとはいえ、忙しいのに、そんな顔はひとつも見せない。
すごく優しくて、素直で、懐深い人。
別に私のことが好きとかそういうことじゃなくて、あらゆる人が大好き。人類愛。そんな人。
 
あらゆる人が大好きな彼だけど、恋多き男。
それでもって素直だから、愛情表現がすごい。
  
彼女とうまくいってるときは
「彼女と手をつなぎたくて。手をつなぎたくてどうしようもないんだけど、どうしたらいい? 少しでも彼女に触れてると幸せで」
「彼女、何かしてほしいことあるかな。僕のできることなんでもしてあげるのに」
「僕の愛を全部あげたい! 本気で!」
とか言いだす。いい年してアホちゃうか、と心の中で思ってるけど、可愛いからついついニヤニヤして聞いちゃう。
  
ある時は
「好き。わかってると思うけど、僕、君のこと大好きだから、君も僕のこと愛してほしい。愛してよ、お願い」
と彼女に4回続けて言ったらしい。
それはあかんで、引かれるで、と忠告した。
案の定、彼女はつれない態度を取ったらしいけど、彼はさらに輪をかけて
「つらいな……。なんで君は僕にこんな寂しい思いさせるの?」
とたたみかけたらしい。
まぁ聞くまでもなく、結果は明らかだったので、私はそっと彼の方をたたいた。
  
彼は今まで何人の女の子と付き合ってきたんだろう。
数え切れないくらい、別れ際の話も聞いた。
「彼女が、行きの列車のチケットを買ってね……。彼女は何とも思ってないらしい。僕が周りにいると、うっとうしいみたい……」
「昨日、全て終わったよ……。何か余計なこと言っちゃったみたいだ……。もう、穴があったら入りたい」
  
たまに面倒な女の子を引っ掛けて
「彼女が、ちょっと変わってるんだよ。何度か別れようとしたんだけど、泣き出して『お願い、もう絶対あなたが嫌がることはしないから』とか言ってきて、僕も信じちゃうんだけど、結局また元戻りなんだよね」
ため息をつきながら、ぼやいている。
ちゃんとケリつけて、別れたほうがいいよ。
「皆にそう言われる。でもできないからこんな状態なんだよ」
  
  
私が彼と出会ったのは、もう15年も前のことだ。
私は小学3年生で、彼はその時もう大人だった。
彼は日本語が話せなくて、私は一生懸命英語を勉強した。当然スペルは読めないから、上にカタカナを振ってもらって、読んで覚えた。
  
彼のこと、きっとあなたも知ってると思うんです。
  
彼は昔、世界で一番忙しいんじゃないかというくらい働いてたらしい。
「毎晩毎晩大変だよ! 馬車馬のように丸一日働いてる。家に帰ったら丸太みたいになって寝てるよ。それも彼女にプレゼントをあげるためだけどね。だから家に帰った時には、彼女にギュってしてもらいたいんだけどな」
「誰か助けて、マジでムリ」
  
愛にあふれた彼は、私が落ち込んでる時には徹底的につきあってくれる。そして結構、正論を言う。
「人生は短い。誰かとケンカしてる暇なんてないよ」
「愛はお金で買えない」
「君にできないことなんてない。わからないことなんてない。君を支えてくれる大きな力さえあればね。君には愛が必要なんだと思うよ」
「全部背負い込んでしまう必要なんてないよ。できなかったことも受け入れて。そうすればきっと世界は開けるはず」
「僕のお母さんの名言を教えてあげよう。なすがままに」
そうやった、うん。心の中でうなずいて、こういうことって普段忘れちゃうんだよなぁ、と思い出す。
  
  
久しぶりに、彼に会いたくなって、私は自転車に乗るのをやめた。
自転車に乗っているときは彼に会えない。彼に会えるのは、歩いてるときだけ。
無性に、アホみたいに簡単な英語が聴きたくなるときもあれば、彼の詩的な世界に連れて行ってほしいときもある。
おだやかに、慰めてほしいときも。
  
彼は世界中で、何万人もの、何十万人もの、スマホかオーディオプレーヤーに入ってる。
I wanna hold your hand, From me to you, All my loving, Love me do, Please please me, Ticket to ride, Yesterday, Girl, Hard day’s night, Help, We can work it out, Can’t buy me love, All need you is love, Hey Jude, and Let it be.
  
愛にあふれる彼の生き方は、最初の頃のアルバムにすでに描かれている。
「思い出の場所がいくつもあって、残っているところもあれば、なくなってしまったところもある。全部の場所には、それぞれ友達とか、大切な人との思い出があるから、忘れられない」
だけど、それよりも強く、君のことを愛していくよ。
と歌詞は続く。
In my life.
  
いつも、周りの人と精一杯つきあう。その土台の上に自分はある。その上で、今私の目の前にいる人のことを一番大切にする。
  
月曜日、歩いて通勤する冬の朝に、改めて思い出した。
こうやって、大事なことを思い出させてくれるから、時々会いたくなるんだよなぁ。
あなたも、久しぶりに会ってみませんか。The Beatles.
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/42175

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2017-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事