下手な鉄砲を人のために撃ち続ける
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:NORIMAKI(ライティング・ゼミ 特講)
ここ数日、テレビでは毎日、平昌オリンピックの日本人選手のメダル獲得、活躍の様子が伝えられている。自分が定めた道で、限界に向かって努力し続けるというのは、本当に大変なことだし、それだけにとても美しいと思う。そして、そういう風に全力をぶつけられる道があるということが、純粋にとてもうらやましく思う。
自分で言うのもなんだが、私は小さいころから、割と優等生な子どもだった。保育園の先生からはよく「物知り」だと言われていて、アルバムには「豆博士」なんてメッセージが残っている。小学校に入っても成績はずっと優秀だったし、クラスのリーダー的ポジションもよく任された。中学に入れば生徒会の代表、高校では部活の幹部という感じで、常に同学年の代表的な役割を果たし、まわりからも信頼されていた。高校の調査書でも「本校を代表する逸材」というお褒めの言葉をもらっていたし、大学受験も塾に行くこともなく自力で突破して、大学でも割といい成績をとって、難なく卒業した。
就職して社会人になってからは、そりゃそれなりにいろんなミスもしてきたが、与えられた課題をいつでも「ソツなく」こなし、「無難」に振る舞ってきた。たぶん上司からは「使い勝手のいい奴」だと思われていただろうし、その期待に応えるように仕事をしてきた部分もある。日本企業ではどこでもいまだに重要視される「根回し」や「調整」も得意だし、うちみたいな大きな組織では、「歯車」として重宝がってもらえているだろう。
それでもだ。「自分にしかできない仕事はなんですか?」と訊かれると、自信を持って答えられるものが全くない。そして、そのことがひどくもどかしい。10年以上仕事をしてきたから、組織の中での「畑」みたいなものはなんとなく決まってきたように思うけど、いざ自分がいなくなっても、その穴埋めはきっと誰かが簡単に取って代わってやるんだろう。そういう意味じゃ、自分は「のっぺらぼう」な仕事しかしていない。自分のオリジナリティなんてあったもんじゃない。
それでも、「とにかく、自分ならではのことがしたい」という前のめりの思いだけは先行する。そのために、読書だったりセミナーだったりでインプットだけは何度も繰り返して、蘊蓄だけは増えていく。だがそれがなんだ? 結局肝心なアウトプットにつながらない。はっきり言って、単なる頭でっかちのイタい奴だ。それに、いろんなことに興味を持って片っ端から手を出してみるものの、だいたい中途半端に終わって大成しない。なんでも「ソツなく」できる能力がここでは災いして、新しいことも割とすぐにコツを身につけて、すぐに7、8割はこなせるようになってしまう。ところが、「なーんだ簡単。これ、いけそうじゃん」と思ったところで、突然デカい壁に襲われる。その瞬間、「あーあ、これもまた違ったか」と一気にネガティブな底なし沼に落ち込む。そうやって、「自分探し」の「つまみ食い」の無限ループにハマっていってしまう。
じつはライティングも4か月やってみて、それなりに書くことにも慣れてきて、前よりはかなり書けるようになって、「お、いけるかも」と思っていたところだった。ところが、記事がOKになる確率は上がらない、できたときとできないときのクオリティのバラつきは大きい、おまけに、制限時間とお題が与えられたなかでは、まったく何も書けないということも経験して、またいつもの「つまみ食い」ループのワナに陥り始めたと感じていた。
そうやって自分で自分をどんどん苦しめていき、もう限界だと感じたころ、ひとつだけ大事なことに気づくことができた。それは、自分の努力には「相手がいない」ということだった。だから、空回りするのだ。「自分にしかできないことを探したい」とかエラそうなことを言いながら、所詮それは自分の虚栄心を満たすための逃げ道でしかない。だから、何をやってもいつまでたってもつまらないのだ。
そう思って、これまでの経験を振り返って、曲がりなりにも、自分が人のために役に立てそうなことを、絞りに絞り出して、リストにしてみた。
とりあえず、仕事で長期間関わったことでいえば、「若者向けのキャリアアドバイス」。進路の相談に乗る、みたいなことはできる。それに、うちみたいな無味乾燥な事務文書が多い業界で、「わかりやすい文書をつくる」というのもずっと心がけてきたことだから、入れてもよさそうだ。海外で偉い人の「カバン持ち」も経験させてもらったから、いわゆる「アテンド」も多少はこなせる。ネイティブでもないし留学経験もないが、一応、英語は日常的にも業務で使っているので、基礎的な翻訳とか英作文とかも苦にならない。たぶん平均的なビジネスパーソンよりはだいぶ多く本を読んでいるし、学生時代に哲学をかじっていたから、知識の基礎体力はある。ネットや本などを使って調べものをするのも得意だ。あとは職場の人のモノマネをして笑いを取っているから、ちょっとしたユーモアセンスというのもまあ入れておくか。
と、まあとりあえずこんなところだ。もちろん、どれも「その道のプロ」というレベルではないし、値段のつくような「商品価値」があるとも思えない。でもここでなんとか絞り出した今持てる「スキルのかけら」を、少しずつでもこれからは人のために使っていこうと思う。そうじゃないと、永遠に自分は変わらない。「自分探し」の「つまみ食い」のループからは抜け出せない。だから、今度これらのリストをFacebookにでも投稿して、「お手伝いさせてくれませんか?」を募ってみようと思う。
もちろん、これをやらせてください、あれをやらせてくださいと言ったところで、相手のニーズには合わないかもしれないし、そもそも実績がないのだから信用もない。でも、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」とはよく言われる。最初は当たらなくても、とにかく「スキルのかけら」をがむしゃらに打ち続けていこうと思う。当然、やっていくうちに、「全然大したことないじゃん」「こんなんで『スキル』だとか言ってんの?」とダメ出しや批判を食らうことも覚悟している。それでも、くじけずやり続けてみよう。もうたぶん、自分が変わるにはこれしかない。「自分らしさ」に出合いたかったら、誰かのために行動するしかない。そんなことを心に決めて、明日からまた生きていきたい。
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