気がついたらトライアスロン選手になっていた話
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記事:Sina(ライティング・ゼミ平日コース)
「海外出張の稟議上げておきましたので」
「え?そうなんですか?ありがとうございます」
来週から上司になる方と電話で話したときの会話である。来週から上司になるのも初めて聞いたことならば、まだまだ先と思っていた海外出張の話も進んでいるらしく驚いた。
ベンチャー企業に転職して半年が過ぎた。ここでの仕事は走りながら進む。スピード、スピード、スピード! とにかく何もかもが速い。常に走り続ける様はさながらトライアスロンのようだ。種目は複合。泳いで、走って、自転車で。海でも陸でも走る、走る、走る!
仕事は段取りが肝心で、案件を受注できるように営業して、提案して、受注できたら人を集めてプロジェクトを作り、そこから要件定義、設計、製造、テスト、リリース、納品と進む。規模によっては数カ月から数年になるものもあるものの基本的には同じ工程を辿る。それがITの世界のスタンダードな仕事の流れである。
ベンチャーだからといって基本が大きく変わる訳ではない。ただ、それぞれに対応するスピードが違う。旧来の会社にいたころに1週間かかると思われた仕事がここでは2日ないし3日のペースで進む。海外出張も新しい上司ができるのもいつの間にか決まっており、それが即座に伝えられる。なんとなく噂が聞こえてきて「そうなのかなー」と思っていたら、話が本格的になってから下に伝えられるのが今までの仕事の時間感覚だった。それに比べると大違いだった。
ITという分野で仕事をしていると、客先で働くことも多くある。お客様先でその会社の社員のように働くこともよくあること。お陰様で多くの会社とお付き合いしてきたが、社風は様々である。会社を「法人」というが、人間のように人格があるように思える。それぞれが個性を持った人の集まりである点はどこの会社も同じであるのに、そこに別の社風が出来上がっているのは見事なものだ。この会社ならではの考え方というスタンダードが存在している。そして、その中にいる人達は自分達がその社風の一部であることに気づくことは少なく、こういう仕事のやり方が「常識」と思っていたりする。外から入った人間にとってみれば、何が常識と思われているかを探るのがスタートで、知らないで失敗することもある。
当たり前を掘り下げると会社のコアが見えてくるのである。
先日、どこかの県庁の仕事改革のレポートをニュースで見た。改革で行ったのは共有スペースにディスプレイを設置したことと県庁内向けには紙の資料を極力廃止したこと。今までは会議の度に分厚い資料を人数分印刷して配布していたが、ディスプレイを共有スペースに置き、ノートパソコンから資料を映して会議することに変えた。そうしたら印刷代が減り、残業時間が減り、定時に帰れるようになったそうである。
資料を印刷して配るとなると、ページのレイアウトが美しいように、フォントが違っていないか、1ページからはみ出ないように、など内容以外にも気を配らなくてはいけない点がたくさんある。出来上がった資料を一旦印刷してレイアウトのチェックをし、「あ、ここフォントが違う」となったらまた印刷しなおして、原稿を作り、人数分コピーして、「はー、終わった」とやっている時間が無くなったら仕事が効率化できました、そんな話題であった。
今の会社ではディスプレイで会議するのは当たり前になっており、印刷のためのあれこれに気を遣うことはない。参加者の人数が増減しても慌てなくて済むのもいいところだ。
さらに仕事のやりとりにメールではなくSkypeを使うのも驚きだった。はじめは「上司とチャットなんかしていいんですか?」と思ったものだが、すっかり慣れたものである。相談事も報告もSkypeで送る。メールと違って返信が速い。そしてグループでの共有も簡単だ。「お疲れ様です」も書かず即要件に入って問題ないし、実際に使ってみると違和感もない。
決定の速さ、仕事のスピード感はそういった積み重ねから発生しているようである。渦中に居ると段々と慣れてきて、走り続けていることを忘れる程だ。働き方改革のテーマでニュースになるくらいに新しい働き方をしている気もしない。
トライアスロンなんてスポーツ狂の鉄人のすることで、筋骨隆々の特別な人にしかできないものかと思っていた。それが案外と普通の人にもできるらしい。それを知ったのも今の会社に入ってからだ。会社にはトライアスロンチームがあり、社長含め20人近い人達がレースに参加する。
自転車は10数万円からでお金のかかるスポーツではあるが、お金をかけたからにはというモチベーションにもなる。海を泳ぐのにもウエットスーツを着るので浮ける。だからカナヅチでもなんとかなる。そしてマラソンはすっかりお馴染みのスポーツだ。複合競技の難しさはもちろんあるが、やると決めて練習すればできるようになるものらしいのだ。
走っていてふと隣を見たら、社長が走っていた、なんていうところもベンチャーの面白いところ。今日も鉄人たちと机を並べ、ビジネスに勤しんでいる。
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