メディアグランプリ

大切なものを捨ててみて気がついたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:諏訪太郎(ライティングゼミ・平日コース)

「間に合わない……」

上司に頼まれた資料の提出期限まであと3日。
パソコンの前に座り30分が経つが1文字も進んでいない。
終わりが見えず気持ちばかりが焦っていく。
このピンチを救ってくれたのが、おばあちゃんから聞いた一言だった。

昔は年に2回ほど、おばあちゃんの家に行っていた。
おばあちゃんの家に行くと、楽しいにしていたことがあった。
それが、ぬか床だった。

家では見ることがない大きな樽と、「ぬか」の独特の匂い。
何より、「ぬか」の中に手を突っ込んで、ぐちゃぐちゃになりながら野菜を探すのが面白かった。
しかも、おばあちゃんのぬか漬けはとても優しい味で、子供でも美味しく食べられた。

おばあちゃんのぬか漬けが、優しい味になる理由の1つは愛情だ。
ぬか漬けはとてもデリケートな食品なので、1日でも手入れをしないと味が落ちていく。
だから毎日、「ぬか」をかき回さなくてはいけない。
毎日「ぬか」をかき回すのは、時間的にも体力的にも大変だ。
だから、美味しいぬか漬けを作るには、まるで子供を育てるかのように愛情を注いでいくのだ。

これだけ愛情を注いで育てたとしても、ぬか床は悪くなるものだ。
しかし、毎日愛情を注いできたぬか床だ。
何とか助けてあげたいと思うだろう。
だから、おばあちゃんに「なんとかならないか?」と聞いてみた。
すると意外な答えが返ってきた。

「捨てちゃいな!」

おばあちゃんは、作っている人の気持ちが痛いほど分かるっている。
愛情を注いできたものを、捨てる悔しさが分かっている。
でも、一度悪くなったぬか床は、使い物にならないことも知っている。
だからこそ、いつまでも古いものにこだわるのではなく、新しいぬか床を作り、これまでよりも良いものを作って欲しいという思いを込めて、厳しいことを言っているのだ。

おばあちゃんのぬか床の話を思い出しながら、今の私と同じだなと思った。
作りかけの資料は、1週間かけて作った資料だ。
愛着もあるし、内容も気に入っていた。
しかし、途中で進まなくなってしまったということは、この資料は悪くなったぬか床と同じではないか?
無理に完成させるより、一度リセットして作り直したほうがいいのではないか?

しかし、今から新しい資料を作り直したとして時間は足りるのか?
そして、新しい資料を作り直したとして、今の資料よりもいいものが出来るのか?

そんな私の気持ちを後押したのが、おばあちゃんの「捨てちゃいな」の一言だった。
きっと、おばあちゃんが作り直せと言っているのだ。
今通っている資料はきっぱりと諦めて、一から資料を作り直すことにした。

そうと決まれば、すぐに取り掛からなくてはいけない。
残り時間はあと3日。
もう時間がない。
まずは全体像を考え直そうと紙とペンを持ち、一枚の紙に書き出していく。

実際に書き出してみた、びっくりした。
先ほどは30分考えても全くペンが進まなかったのに、書きたいことが山のように浮かんできてペンが止まらない。
あっという間にA4一枚の紙は、書きたいことでびっしり埋まった。

あとは、パソコンを使って資料としてまとめるだけだ。
A4一枚にまとめた全体像を見ながら資料を作成していく。
気がついたが2,000字程度の資料が、半日程度で出来上がった。

前の資料を作る時に、一週間かけても終わらなかったのが嘘のようだ。
一番大切な資料の内容についても、前の資料よりも素晴らしい内容の資料を作ることができ、上司から一発OKをもらえた。

「捨てちゃいな」

事実は1つだが、解釈は人の数だけある。
でも人は自分の持つ解釈を事実だと思い込み、人の解釈について考えようとしない。
その解釈が愛情を持っていればいるほど、自分の解釈に固視する。
でも、それでは、人々と理解しあえないし、自分の言いたいことを伝えることが出来ない。

だから、一度全部を捨てることが大切になる。
一度捨てることで、1つの事実に対して、上から、下から、右から、左からと、色々な解釈で考えられるようになる。
そうすることで、「こんな考えもある」、「あんな考えもある」と、色々な解釈を考えることが出来る。

色々な解釈で考えられるようになることで、人々との理解が進み、自分が言いたいことが伝わるようにある。
だから、仕事やプライベートが上手くいくようになる。

捨てることは、すべてを捨てて0から考えることだと思っていた。
しかし、0から考えるのではなく、今まであった自分の考えにプラスしていくことだと、今回の件を通じて学ぶことが出来た。

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2018-04-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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