実績ゼロで某有名メディアのライターになった話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:中村 英里(ライティング・ゼミ平日コース)
私はライターを目指そうと思い、3月末で会社員を辞めた。
仕事として文章を書いた経験は、会社員時代に自社ブログを書いていたくらいなもので、ライターとしての実績はゼロだ。
しかし今、ありがたいことに、とある若手ビジネスパーソン向けのメディアで記事を書く機会をもらえている。
そのメディアは、20代〜30代のビジネスパーソンであれば、名前を言えばおそらく誰もが知っているようなメディアで、記事がSNSで話題になることも多い。
なので、実績ゼロのペーペーが受かるとは、自分でも思っていなかった。
「経験もないのに、どうしてそんな有名なメディアで記事を書いているの?」と度々聞かれるが、きっかけはSNSだった。
Facebookでライターの求人情報をシェアするグループがあるのだが、そこでそのメディアの編集長の「ライターを募集している」というツイートがシェアされていた。
そのメディアは、元はフリーペーパーで、そのあとWebメディアに移行したのだが、フリーペーパー時代からよく読んでいた好きなメディアだったので、気になってそのツイートのリンクに飛んだ。
運営会社が変わったりはしていたが、エッジの効いた記事の数々は、私が好きだった頃の雰囲気と変わっていなかったので、ツイッターで編集長に「ライター募集のツイートを見ました、ぜひ書きたい」とメッセージを送ってみた。
人気のメディアだし、もしかしたら返事なんてこないかも……と思っていたが、なんと「ご連絡ありがとうございます。プロフィールと、これまでに書いた記事を教えてください」と返信をもらえた。
おおぉ返事キターーー! と嬉しく思うと同時に、「これまでに書いた記事」をどうするか悩んだ。
前職で、広報として自社ブログにインタビュー記事などを書いていたので、それを送ろうかと最初は考えた。
でも、「未経験だけどやる気はあります! 会社のブログで書いていた記事を送ります」なんて送るだけでは、受からないような気がした。
うーん、何か工夫できないか……と考えていたときに、ほかのメディアに応募したときに、「テストライティング」を求められたことがあったことを思い出した。
テストライティングとは、本採用の前に、テーマに沿って記事を書く、というもの。どのメディアにも必ずある訳ではなくて、求められたらやる、という感じだと思う。
応募したあとにテストライティングがあればいいな、と思ったが、ふと「勝手にテストライティングすればいいんじゃないか」と思い立ち、プロフィールとともに、そのメディアに乗る想定で記事を書いて、それを送ることにしてみた。
記事を書くにあたって、媒体資料をまず探した。
Webメディアは、企業がお金を払ってサービスや商品のPRのために作成する記事=「記事広告」を扱っているケースが多い。
「PR」と付いている記事がたまにあると思うが、それのことだ。
「媒体資料」は、広告を載せたい企業向けに、メディアの読者層などのデータを載せている資料のこと。
媒体資料は、メディアや運営会社のサイト上で公開されていることが多い。
また広告を出したい企業向けに、様々なメディアの媒体資料がまとめて掲載されているサイトもあるので、そこに載っている場合もある。
「メディア名 媒体資料」で検索していろいろ当たっているうちに、そのメディアの資料を無事見つけた。
そこでターゲット層やメディアのコンセプトを確認し、扱っているカテゴリの中から、どんな記事を書くか考え、実際に掲載されている記事を読み、そこに並んで違和感がないような文体、文章量を意識して記事を書いた。
その当時話題になっていた政治的なニュースの解説記事について、「話題になっているけど実際よく知らない、本当のところはどうなの?」という内容の記事を書いたのだが、間違ったことは書けないので、新聞の記事や省庁のサイトなど、とにかく調べまくった。
金曜日の朝に「過去に書いた記事をください」と言われ、記事を書き終えて返信したのは、土曜日の夕方ごろ。
そのときはまだ会社員だったので、仕事が終わった金曜日の夜〜土曜日にかけて、パソコンにかじりついて記事を書き続けた。
返信が遅くなればなるほど印象は悪くなると思ったので、必死だった。
途中睡眠はとったが、トータルで20時間くらいはかかったと思う。
書き上げた記事と、前職で書いたインタビュー記事と、そのメディアに対する熱烈な思いをしたためて、ツイッターのDMでメッセージを送ったところ、「まずはトライアルという形からでよければ」というお返事をいただき、ありがたいことに記事を書かせてもらえることとなった。
ただ、どんな場合でもこのやり方が通用するというわけではないだろう、とは思う。
今回のケースにおいては「わざわざ記事を書いてくれたことで、熱意が伝わった」と、「熱意」を評価してもらえた。
だが、記事を書くということは、相手にそれを確認させる労力を使わせるということだ。
頼んでもいないのに勝手にテストライティングを送りつけてくるなんて強引な奴だと、相手によっては捉えられてしまっていたかもしれない。
だから、このやり方をぜひ真似してください! と言いたいわけではない。
ここで私が言いたいのは、「ライター なる方法」で検索して出てくるような方法以外にも、相手が何を求めているのか、それを示すにはどうすればいいのかを自分なりに考えることで、できることはたくさんあるんじゃないかということだ。
「ドリルが欲しい人は穴を開けたい人」というのをご存知だろうか。
マーケティングでよく出る例え話で、ドリルが欲しい人は、ドリルそのものが欲しいわけではなくて、穴を開けたいというのが本当に求めていることなのだ、というものだ。
たとえば、ライターに限らず、求人情報に「必須条件:実務経験○年以上」なんて項目があるのをよく見かける。
私は、異業種転職を三回したことがあるが、求人を探して応募する場合は、この項目は基本的には無視していた。
もちろん、職種によっては、仕事上必要な資格を取得するために実務経験が必要なケースもある。
だがそうでない場合に、「実務経験が足りないから」と応募を諦めるのは、本当にもったいないことだ。
実務経験について「○年以上」という条件がある場合、それだけの経験があれば、これくらいの仕事ができるだろう、というのを判断するための一基準に過ぎない。
「実務経験○年以上の人」は、ドリルか穴かで言ったら、「ドリル」だ。
企業はドリルが欲しいわけではない。穴を開けたいのだ。
つまりドリルがなくても、穴を開ける能力を持っていることを示せばいいわけだ。
企業が求める能力に達していないケースも、もちろんある。
しかし、企業がどのくらいのレベルを求めているのかなんて、相手に見てもらわないとわからないので、自分で無理だと判断する必要はない。
それに、能力以上に「熱意」を重要視している場合もある。
今回の私のケースでいうと、テストライティングの記事を書く前に、「このメディアはライターにどんなことを求めているのだろう」ということを考えた。
そしてメディアに関する記事や、編集長のツイートを見ているうちに、ライターとしての実績やスキル以上に、メディアのコンセプトに共感し、「ここで書きたい!」と思っているかどうかという「熱意」を重視しているように感じた。
記事を書いたのは、編集が入らない状態での今の自分の文章力を伝えるためでもあったが、一番の目的は、熱意を形として示したかった、ということだ。
テストライティングにも執筆料が支払われるケースはあるようだが、「求められてもいないし執筆料も払われないけど、媒体資料を読み込んで20時間かけて記事を書く」ことに対して、「そこまでやる必要あるの?」と思われる方もいるかもしれない。
でも、口先だけで「経験ないけどやる気はあります!」なんて、誰だってできる。
それが通用してポテンシャル採用をしてもらえるのは、第二新卒くらいまでじゃないかと思う。
だから、「若手」と呼ばれる時期が過ぎてから、未経験からキャリアチェンジしようとするならなおさら、口先だけではない「熱意」を見せる必要がある。
そしてこれは、自分自身の熱量をはかるのにも役立つ。
なぜなら、好きでもないことに、熱くなんてなれないから。
そこまでやらなくていいか……と思って、過去に書いた広報時代のブログ記事だけを送ることもできた。
でもそうしなかったのは、このメディアで書きたい、そのためにできることをやり切りたいと思ったから。
何より、「これから私は、書くことを仕事にしていくんだ」という気持ちがあったからだ。
大学を出て、就活をして、会社に入る……多くの人が乗るそのレールに乗ってみんなと歩くのは、安心感があった。
「前へならえ」で、何も考えずに前の人と同じことをするだけでも、一定の評価はもらえた。
「ライター なる方法」で検索して出てくるのは、過去に誰かが試した方法だ。
「学ぶ」の語源は「真似る」だという話を聞いたことがあるが、何かを習得しようとする時に、最初のステップとして、すでにある方法を真似るのは良いことだとは思う。実際、私も真似しまくっている。
でも、「会社員」という、レールに沿って電車に揺られていれば良い場所から離れたわけだから、「前へならえ」の姿勢だけでは、きっと通用しなくなる時がくる。
学校のテストのように、正解はない。
自分なりに工夫して、道をつくっていく必要があるのだと思う。
自分の名前入りの記事が載ったとき、「やったー、これで私もライターだ!」と浮かれてしまったのも事実だが、有名なメディアに載ったからといって、私の実力がものすごくあがったわけではない。
○○というメディアで記事を書いています、というと「すごいですね」なんて言っていただけることもあるが、すごいのはあくまでも私ではない。
良いものは真似しつつ、自分なりの工夫もしつつ、ひとつずつ実績を積み上げていけたらと思う。
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