自分の過去と就職活動に疲れた僕が天狼院のスタッフ募集に応募した理由
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:原雄貴(ライティング・ゼミ平日コース)
やりたいことが浮かんでこない。
就活生の7月なのに。
僕はやりたい研究があって大学院に入った。
大学生の時、ボランティア活動を通して環境政策に興味を持った。そこから大学を卒業するまで自分で環境政策について調べた。調べていくと、今まで自分の知らなかった出来事や環境政策の基本知識、人物を知ることができて、自分の専門分野への勉強熱も加速した。
しかし、入りたい大学院を探すのは苦労した。1年間かけて全国中から志望する大学院を探し出し、お世話になりたい先生に直接何度も挨拶に行った。その甲斐あってか、無事に大学院に入ることができて、新しい生活環境の中で僕は研究をスタートした。
大学院の1年目は様々な授業に顔を出して、いろんなことを学んだ。内容は主に環境政策などの環境分野、地域社会など自分の研究している内容をさらに深く理解できるようなものだった。大半の授業は毎回提出物や調べたことについての報告があったから苦しい思いもした。でも、最後まですべてやり通せたし、新しい知識を得て日常生活を少しだけ変えてみるきっかけになっていた。
しかし、2年目。就職活動が本格化したところで状況は大きく変わった。
自己嫌悪になってしまった。
はじまりは就職活動でお約束といわれる「自己分析」。自己分析は自分の適性を見出すことを目的の1つとするため、どうしても自分の過去を見なければならない。
僕も試しに自分の過去を振り返ってみた。
最悪だった。
自分は大学院に至るまでに高校での部活や大学での課外活動などを通して様々な分野に手を出してきた。でも、何をやっても何を得たのかが分からなかった。
地域の課外活動でボランティア活動をやって、地元の人から「ありがとう」と言われても何も感じない。おまけに何か課題や壁に当たっても人に相談できない。これでは課外活動の場数ばかりが増えるだけで、自分には何も残らない。
あまりに何もなく、あまりに悲惨な自分の過去。
僕はしばらく部屋に閉じこもり、寝こむしかなかった。
だけど、どこかには就職しなければならない。そう思い返したのが3月。しかも企業では説明会が開始されてだいぶ経った下旬のことだった。
今までの自分を振り払うかのように僕は落ち着いた雰囲気を醸し出し、会う人にはみんな笑顔をふるまった。中には面接でいい手ごたえを得た選考もあった。
そんな中でも、すっきりしないものが心のどこかにあった。
この正体はやっぱり、自分の過去だった。大学のキャリアセンターの人などの手伝いもあって、何とか面接で話せるだけの自己PRは作れた。だけど、自己PRにある自分の長所や大学生の時にがんばったことは今の自分には役に立っているようには全く感じられない。どうしても。
そのうち、会う人に笑顔を振るまうことにも疲れ、醸し出していた落ち着いた雰囲気もどこかに消え去っていた。やりたことも分からないまま、7月になっていた。
「このまま僕はどこかへ消え去るのだろうか」「僕はどこへいくべきなのだろうか」
気がつくと自分の存在意義を問うような状況になっていって、またもや不穏な空気が流れた。ホテルに泊まって1人徹夜で今後のことを考えたりもしたけれど、結局自分では結論が出せなかった。
その日々の中のある日、突如1つの文章が僕の目に飛び込んできた。
「天狼院 スタッフ募集」
僕は天狼院書店でゼミやイベントに参加していたから、以前から天狼院書店で時々スタッフ募集をしていることは知っていたけれど、「スタッフになるほど天狼院書店に何かを感じているわけではないな」といつも半分興味なしで流していた。
でも、このときは違った。
そこには、書店のスタッフの中ではよく目にする川代さんが、仕事をする上での心構えとそれにたどり着くまでの苦悩の日々が綴られていた。夜も寝られないほど色々悩んだという内容に僕は徐々に共感を抱きはじめ、しまいには身をのりだして文章を読んでいた。
「仕事を最後までやり通すこと」
「自分の責任は、自分でとるべきだ」
川代さんの言葉が心に少しずつ蓄積されていき、最後まで読んだときにふと浮かんだ。
「自分はなんだかんだいって、やりはじめたことは最後までやり通したじゃないか」
そうだった。いままでの自分は色々な分野に手を出して、しまいには大学院にまできた。何かをやるたびに何も感じられず、何も得られないことには不甲斐なさを感じていた。でも、結局全部放り出さなかった。なぜか全部やり通した。その時々を精一杯に生きながら。
「川代さんも精一杯生きてきたんだ。そういえば、社長の三浦さんにも苦労話があったな」
そして、次の瞬間には僕の気持ちはかたまっていた。
「これだけ苦労した人が働いている場所だ。きっと働く価値があるだろう」
「この人たちと働いてみたいな」
久しぶりに何かを感じた瞬間だった。
何だか乗せられてしまった気もしたけれど、
「スタッフ募集に応募してしまいましたよ、天狼院さん」
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