イエネコ様は犬びより
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:茂垣朋子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「猫は気が強くて、懐かない」
今まで犬しか飼ったことのない私は、正直それくらいにしか思ってなかった。
犬は忠実、猫はきままで魚が好きで……、あっ、そういえば、実家の庭にキレイに骨だけおいてった、のら猫がいたなぁ。
猫って持つと背骨がどこまでも伸びて、もちみたいに伸びてそれからどうしたら良いの?
関節外れちゃったりするんじゃないの?
という訳のわからない恐怖感もあり、なんとなく触るのも躊躇していた。
ある日、友人と猫と犬、どちらが好きかというありきたりな話になって、初めて猫カフェに行くことになった。
アレルギー大丈夫かな?
猫に嫌われないかな?
猫とどうやって遊んだら良いのだろう?
店内はガラス張りで、開店前から猫たちが「ニャーン、いらっしゃいませ!」
とでも言っているかの様に出迎えてくれた、猫スタッフはこんな私にもフレンドリーに接客してくれる。
ある猫は、私の膝に乗って、私にお尻を向け、しっぽを顔近くでふぁさふぁさっ! としてくれて、なんだか猫にお祓いをされているみたいな恰好になってしまった。
「猫の尻が近いな、いったい何をされているのだろう?」と戸惑っていたところ、猫に詳しい友人いわく、「マーキングだよ!」猫の匂いをつける習性のことだと初めて知った。
一匹一匹の猫の性格は、全然違う。
優しい子もいれば、つれない子も。俗に言うツンデレみたいな子も。
そうして猫カフェにはまっていった。
しばらくして、かねてから興味のあった保護猫カフェにも行くことになった。
保護猫カフェとは、震災や多頭崩壊、飼い主が先に亡くなってしまい行き場をなくした子、野良猫として暮らしていた子など、何らかの事情で保護された猫
が猫カフェスタッフとなり人間を丁寧に接客してくれる。
中でも好んで行っていたのが、里親募集型保護猫カフェ。
こちらも保護猫カフェだが、インスピレーションの会う子がいたらその子と一緒に暮らすことができる。猫と暮らしたいと考えるようになっていた私にはうってつけだった。
「迎えるなら健康で性格の良い子、ブランド猫ではなくのら猫」
ペットショップなどでよく見るブランド猫は、どの子もかわいい。
でもペットショップの猫は、見た目もかわいく血統書付きで「かわいい!」と注目を浴びきっとすぐに売れてしまう、おいしいごはんもたべさせてくれて、めいっぱい愛情を注いでくれる家族ができる、きっと楽しい一生を過ごせるね、と容易に想像がついた。
そして運命的な出会いをしたのが、今一緒に住んでいる白黒のデブ猫、ふたばくん。
里親募集型、保護猫カフェ三大デブ猫のうち一匹と呼ばれていた巨体の持ち主、歳は三歳、人間でいうともう中年のナイスミドルなおっさんだったが、外見はおっさんでも実際はとても繊細で、ハートはビビりなかわいい子、人間が大好き、猫は嫌い。
大きな巨体がゴロン! とあおむけに転がって人間に、
「なでてくれ」
「毛づくろいしてくれ!」
ポーズをとった時、その大きな巨体が一気に、床にぺしゃ、となったのがあまりにも見事で、一目ぼれしてしまった。
なでてほしいときは必ずお腹を開き「なでてくれ」と言わんばかりのおっさん顔をするし、名前を読んだらすぐに巨体をゆらして走ってくる。
調子が悪い時は、「どうした?」とでも言わんばかりの顔をして、隣で顔を覗き込んでもくる。
寝る時に名前を呼ぶと寝室までしっぽをピン! と立てて、寝室まで一緒に並んで歩き、枕の横スペースに横たわる、そして横で寝ている私の頭を蹴りながら犬の様に、いや人間の様に眠りにつく、そんな猫だ。
そんなふたばくんだが、一緒に住み始めた当初、一度だけ庭にでてしまったことがある。
私はとても焦った。
が、ここはひとまず冷静に行動しておびき寄せなくちゃ! と考えた。
「ふたばくん、ごはんだよ! ふたばくん!」
カリカリのごはんを持ち、懸命に話かけた。
正直足は小鹿の様にガクガクして、涙がこぼれた。
一生会えなくなってしまうかもしれない!
車に引かれるかもしれない。
どうしよう! ! やばい! 私の馬鹿!
そんな気持ちでいっぱいだった。
そんななさけない飼い主の姿をみて不憫に思ったのか、
何故かふたばくんは自分から、家の中へとスタスタと歩いていった。
飼い主の想いを察してくれたのだろうか。
すんなりと家に戻ってきてくれた。
え? と拍子抜けした気持ちと、安堵した気持ちと、猫って戻ってきてくれるものなの? という疑問と、正直ぐちゃぐちゃだったが、
「本当に良かった」
ふたばくんといううちの猫、まるで犬みたいだな、と考えるようになった。
犬、というよりむしろ人間の化身じゃないだろうか。前世は人間だったんですか?
そんな頭脳と巨体を持ち合わせた猫が、家にいる。
昨年はもう一匹、一年にも満たない迷子の若いみけ猫を迎えた為、
我が家は猫が二匹となった。
若輩猫を指導すべく、先住猫、ふたばくんの奮闘の日々は現在でも続いている。
猫二匹で毎日、運動会の様にかけっこをしているので、ふたばおじさんのメタボは解消するかな? と思ったけれども、それ以上に食べることが好きで意外と痩せないでいる。
今年は人間の私が健康診断をちゃんと受けた。
むしろ猫よりも私の方が、10キロ体重増で痩せなければいけないという結果が待っていた。
猫のことをメタボと笑っている場合では、ない。
むしろ私が猫に「もうちょっとやせろよ、おばさん」と笑われているのかもしれない。
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