はじめてのひとり旅は、青い鳥
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:かつまる (ライティング・ゼミ特講)
僕は、俗にいうところの引っ込み思案だった。
それも超がつくほど。
子どもの頃から、何かと遠慮しては行動せずに、
「あそこでこうしてればな〜」
と後悔することも日常茶飯事だった。
引っ込み思案であっても自分の中に芯がある人はまだいい。
僕には、それすらなかった。
「自分は何がしたいのか」
「どういう人間になりたいのか」
そういったことを真剣に考えることもなく、また引っ込み思案が災いして現状を打破しようと行動することもなく、ただ毎日を惰性で過ごしていた。
それは、中学、高校を経て大学生になっても変わらなかった。
しかし、大学2年生の時だ。
ある時僕はふと思った。
「今のおれってヤバいんじゃね?」
大学生の次は社会人だ。
将来を真剣に考えなければならない。
しかし、今まで自分の意見を持たなかったからか、どんな社会人になりたいのか全くわからない。何かを行動したりすることもない人生だったから、選択肢の幅もなかった。
「大学3年になれば、就職活動が始まる。それまでになんとかしなければ」
僕は必死に考えた。
そして思いついた。
「旅に出よう」
どこか、今まで行ったことがないところにいこう。
いわゆる「自分さがしの旅」だ。
いま思えば、本当に安直な考えだ。自分さがしの旅に出て、実際に「自分」を見つけた!という人の話はあまり聞いたことがない。
しかし、これ以外には思いつかない。
行き先はすぐに決めた。
「下灘駅」
愛媛県にあるJRの小さな無人駅だ。
以前見た青春18切符を特集した雑誌。そこで駅舎越しに海が見える写真が使われたポスターを見た。
カメラで風景写真を撮るのが趣味だった僕は、
「いつか行けたらいいな〜」
とずっと思っていた。
そしてひとり旅当日。少しの服と相棒の一眼レフカメラをカバンに詰め、僕ははじめてのひとり旅に出た。
自分を変えるため。そして、自分を探すために。
高速バスとJRを乗り継いで、数時間。
下灘駅についた。
列車から降りる。
一歩降りた先には、一面に瀬戸内の海が広がっていた。
めちゃめちゃキレイだった。
「オォー!!」
ただただ感動した。
ここまで感動したのはいつ以来だろう。
それくらいの景色だった。
夢中で写真を撮った。あっという間に、カメラのメモリーカードが埋まっていった。
「どんな写真撮ったの?」
突然声をかけられた。
振り向くと、カメラを持った初老の男性がいた。
聞けば、定年退職後にバイクでカメラを持って日本中を旅してるのだという。
もらったミカンを2人でベンチに座って食べながら、写真を見せ合った。
「スゴい!!!」
僕の写真を一目見た男性はいった。
「めちゃめちゃうまいじゃん!! ブログとかやってる? やってないの!! 勿体無いよ!!ここまでの写真撮るんだから、世の中に出していかないと!!」
めっちゃ褒められた。
僕は
「ど、どうも」
としか言えなかったが、内心めちゃめちゃ嬉しかった。
そんな話を2人でしていると、
「カメラの話ですか?」
と声をかけられた。
そこにはカメラと三脚を持った、背の高いダンディな男性がいた。
「ここに来たくて、二泊三日で愛媛に来て通ってるんだけどなかなかいいのが撮れなくて。だからどんな写真撮ったんだろうなって」
そう男性はいった。
というわけで、3人でベンチに腰掛けてミカンを食べながら第2回写真の見せ合い回がはじまった。
「なにこれ!? スゴいキレイじゃん!! 君スゴいな!!」
僕の写真を見たダンディな男性が言った。
まさか初対面の人たちにここまで褒められるとは思っていなかった。
ただ、シンプルに嬉しかった。
その後、3人でカメラを持っていた人に声をかけたり、観光客の人に記念写真を撮ってあげたりした。
その中で、私の写真は多くの人から
「キレイ」「スゴい」
と言った言葉を、笑顔とともにいただいた。
悲しい発想をすれば、それらはお世辞やリップサービスだったのかもしれない。
でも、自分の撮った写真が、自分の作品がたくさんの人たちを笑顔にしているということに僕は喜びを感じた。
「そうだ! 僕は自分の撮った写真で多くの人を笑顔にしたい!」
僕の中に、人生の芯が生まれた。
なんてことはない。
その芯は、自分の趣味っていう、すぐそばにあった。
今の自分を変えなきゃいけないと思って、自分を探すために旅に出たのに、自分のさがしてた答えは本当に近くに存在していた。
まさに、童話の「青い鳥」みたいだった。
だから、いま僕のような悩みを抱えている全ての人にオススメしたい。
「リュック1つを持ってひとり旅にいこう」
みんなの求めている答えは、みんなのすぐそばにある。
そしてそれは、ひとり旅というフィルターを通して見ることができる。
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