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新幹線でお酒を飲む人が許せるようになった理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:太田晴信(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
私はお酒が嫌いだ。いえ、お酒が飲めないわけではない。
飲み会とか懇親会とかでは場を壊さないために飲むこともあるのだが、お酒を飲んで体調を崩すこともないし、飲んでもすぐに酔いが覚めるから、おそらくお酒の分解力は人より強いと思う。
酔いつぶれたこともないし、二日酔いの経験もない。
 
なのに、お酒が嫌いだというのは、お酒そのものより飲んでいる人が嫌いなのだ。
 
私がお酒を飲んでいる人が嫌いなのは、酔っ払いもそうだが、場をわきまえず飲む人がいるからである。
 
スーパーのフードコートとか電車の中とか、公共の場と言われるところでも飲む人がいる。
こういう人が私は大きらいなのである。
 
公共の場でお酒を飲まれると、まず臭い。そして下品。
絡まれるのではないかとビクビクする。
電車の中のメイクと同じで「公共の場ですることじゃないだろ。家で飲めよ」と思ってしまう。
 
なので、駅で並んでいるときにお酒を持っている人を見ると、列を変えるようにしている。
 
ところが1点だけ昔と変わった点ができた。新幹線や特急電車の中でお酒を飲む人は許せるようになった。
 
1年ぐらい前までは、新幹線でお酒を飲むのも許せなかった。
 
「なんで家やホテルまで我慢できん?」「臭いから新幹線でお酒なんか飲むな!」「そもそも駅の売店やワゴン販売でビールやチューハイを売るな!」と思っていた。
 
新幹線でお弁当は、食べないと家まで我慢していたら、お腹が空いて体調を崩してしまう人もいるだろうから理解できたが、お酒は嗜好品である。
「そんなもん家まで我慢せい!」と思っていた。
 
それが、ある人の一言で認識が変わった。
 
私の好きなラジオ番組「北野誠のズバリ!」で、タレントの北野誠さんが言っていた「結局、お酒を飲むってONからOFFへの切り替わりなんだよな……」という言葉を受けて考えが変わった。
 
番組内で新幹線や電車内でのお酒はOKかNGかでリスナー同士で議論になった。あるリスナーは「新幹線でのお酒も臭いし辞めてほしい」と投稿すれば、別のリスナーが「新幹線でのビールぐらいは許されるのではないか?」と投稿して盛り上がった。最後、番組を締める時、MCの北野誠さんが言った一言が「お酒を飲むってONからOFFへの切り替わりなんだよな……」である。
 
北野誠さんが言うには「東京駅までは出張中。つまり勤務時間だからONタイム。しかし、新幹線が動き出したらプライベートの時間になってOFFタイムになる。そのONからOFFが切り替わったことがお酒を飲むと確認できる。旅行でも同じで、帰りの新幹線に乗ると、楽しい旅行が終わり、現実の世界に帰っていく。その気持ちの切り替えにお酒が飲みたくなる」ということだそうだ。
 
そう言われると、スーツを着た人がお酒を飲み始めた時の顔を見ると、どことなくホッとした顔をしている。
 
私も出張が多い仕事をしていたから分かる。自分の会社内で仕事するのなら、慣れた環境だし、多少はリラックスした気分で仕事しても問題ないが、出張でお客様先などに行ったら、常に緊張している。お客様の目があるから休憩時間も油断はできない。
9年間のサラリーマン生活で100回以上出張しただろうが、最後まで慣れることはなかった。
 
出張先の仕事は自社内の仕事より3倍は疲れる。
 
東京から大阪や名古屋へ帰る新幹線が動き出した時、緊張を解くことができる。
 
「ONとOFFが今、切り替わった。ここからはOFF……」と気持ちを切り替える道具が、お酒ということなのだ。
 
だから新幹線でお酒が飲みたいのだそうだ。
 
私はサラリーマンを辞めてから、ONとOFFがない生活をしている。
 
特にOFFというのは決めておらず、家で夜御飯を食べてからも「あの仕事今やっとくか」となったら、仕事していたりする。
 
丸1日OFFの日というのは1年に1日ぐらいしか取ってない。年がら年中ON状態になっている。
 
だから、完全にONとOFFという感覚がなくなっていた。だから新幹線でお酒を飲む人が理解できなかったし許せなかったのである。
 
しかし、何か気持ちや行動を切り替える時は、3000円の一番高い栄養ドリンク剤を飲んだり、トイレに行って顔を洗ったりして気合いを入れなおしたりする。特にそれがなにかしてくれるわけではないのだが、気持ちの切り替えの儀式なのだ。
 
新幹線でお酒を飲んでいる人は私にとっての「トイレで顔を洗って気合いの入れ直し」と同じで、お酒を飲むことがONからOFFに変わる儀式なのである。
 
よく、女性が家に帰ってメイクを落としたりブラを外すとホッとすると言うけど、それと同じかもしれない。
 
それを理解したら、新幹線でお酒を飲む人を許せるようになった。コンビニのイートインコーナーで、買った缶ビールを飲んでいる人も「あっ、この人、今、ONからOFFに切り替わったんだな」と許せるようになった。
 
相手を理解するって許せなかったものが許せるようになるんだなぁと、そこも感慨深くなった。
 
(ただ新幹線で酒盛りは、勘弁してほしいですが……)
 
あなたのONとOFFの切り替えの行動はなんですか? 

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2018-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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