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バラバラだったチームが結束力を得た理由~タモリさんとキャッチボールしてみた場合に~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松原 さくら(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
「こんなにたくさんの事業できません」
「どうして松浦さんの方針でやらんとあかんのですか?」
「これは、どうしても一番の目的にしなければいけない方針なのです! 佐藤さんは、どう思いますか?」
「……」
 
しまった。失敗した。完全に敗北だ。
一番若くて経験が浅い佐藤さんに、とてもキツい口調で意見を促した私はどうかしている。
この流れで自由に発言できる訳がない。
周囲のみんなも完全に凍りついている……。
 
 
とある事業の企画運営を行う会議で、私は中堅どころの役割を担っていた。
中堅と言っても、チームリーダーの経験年数が浅いので、実質的な発言力は私が1番大きい。
 
そもそもこの会議で話の流れがこじれた原因は、数年前からの潮流で根源的な問題からだった。
私が「できる! 目指せる!」と考えている事は、そもそも数十年前からある理想的な目標だった。
だが、チームの主力メンバーの退職や異動があり、新しく経験の浅いメンバーへと年々入れ替わっていった結果、企画力も運営のノウハウも弱くなっているのだ。
私とその他のメンバーとの間には、完全に温度差ができてしまっていた。
「私だけが熱く、他のみんなは冷え切っている」そう、私は孤立していた。
 
 
「3年前は、企画も運営もどんどん引っ張っていってくれる人たちがいましたからねえ」
唯一、私の気持ちを解ってくれる三好さんと、以前成功した様々な事業を懐かしんでいた。
「たくさんのボランティアさんが熱心に協力してくれて、たくさん来てくれた参加者の皆さんも満足していただいて、これまで本当にいい事業ができていたのにね」
三好さんは一緒に成功した経験を共有しているため、明確なビジョンが持てるのだ。
しかし、二人だけではできない。全員で共有しなければ。
 
そこで私は、ふと思い出した。
ボランティアさんや参加者の皆さんから、たくさんのご意見をいただいてきたことを。
それは、良い内容ばかりではない。運営の矛盾点を突くような厳しい意見も度々あった。
何をするにつけ、常に完璧なことなどは有り得ない。やはり、改善すべき点は必ずあるものだ。
その場でお互いの意見を話すだけで解決する事もあったが、ほとんどの場合は、ボランティアさんや参加者の皆さんからのご意見を大切に持ち帰り、次回に向けての検討材料となる。
 
そうだ。私たち運営側の一人一人の意見も、同じではないだろうか。
仕事であること。企画側であること。そんなイメージが、皆スーパーマンでいなければいけないと私を固定観念で縛り付けていた。
 
「どんな事業だったら、企画できると思いますか?」
「どういう風に運営していきたいですか?」
「地に足のついた言葉を話してほしい。ぜひ、チーム全員の思いを共有させてください」
そんな気持ちで、次の話し合いの時には問いかけた。一人一人、スーパーマンではない、今の等身大の意見が並んだ。
そう、今の私たちのチームビジョンが、そこに薄っすらと見えてきた。
 
 
有名な司会者であるタモリさんの事を、「素晴らしいキャッチャーだ」という人がいた。
自分の話をするより、相手の話を上手に引き出している人だと。
相手の話をしっかりと受け止める。相槌と自分の体験なんかも織り交ぜながら共感していることを伝える。そうすると相手はもっと深く話したくなるのだろう。
また、タモリさんはインタビューで「自分が楽しいと思う事しかしない」と断言していた。
つまり、心地よく相手の話を引き出す名司会者は、まず自らが楽しむ事を大切にしているのだ。
「自分は! 自分は!」の意見を出すのではなく、相手の言葉を引き出して自ら楽しむ会話。
それこそが名司会者たる理由かもしれない。
 
 
そういえば、数年前に大成功した事業で一緒に働いていた先輩は、いつも楽しそうに仕事をこなしていた。
それは、事業の本番で参加者やボランティアの方々に見せる営業スマイルというには、大き過ぎるリアクションだった。
いつも全ての人に気を配り、話を聴き、一緒に笑ったり怒ったり、時には泣いたりもしていた。
チーム会議でも同じだった。チームメンバー全員の話をじっくりと聴いてくれた。
共に考え、悩み、そして何より、皆の話を聴くことを楽しんでくれていた。
そこには、共に事業に尽くす信頼感が確かにあった。
 
「沈黙は金、雄弁は銀」「言わぬが花」
言わぬは言うに勝る、淀みなく話せることも大事だが、黙るべきときを知ることはもっと大事だ、ということわざだ。
「押して駄目なら引いてみな」「話し上手は聞き上手」
そんな昔のメンバー達からの声が天から降ってくる様な気がした。
 
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2018-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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