お守りになってくれたもの
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:北村祥子(チーム天狼院)
「今日のリップ可愛い~!」
「そのワンピめっちゃ似合ってるね!」
まず大学で仲良しの友達に会ったら「おはよう」の後に出がちな言葉である。わざわざ思ってない時は言わないけれど、可愛いと思った時は必ず褒める。そして、褒めてもらえる。
いやそんな相手のおしゃれな部分を褒めるなんて女子女子した世界あるの? って思っていた。高校までは制服を着ていたからそんなことは行われていなくて。メイクして学校に行ったら怒られたし。でも、この会話は自然な成り行きだった。やってみたら案外そんなにわざとらしいことでもなかった。自分がいいなと思うものをいいって言う。単純に楽しい気持ちが循環する。
可愛いものを着て毎日お出かけするのが楽しい。気分に合った洋服を選ぶって行為がワクワクする。可愛い格好をしたいから、ちゃんと毎日大学に行く、みたいなところもある。それはさすがに盛ったけど。
決して褒められたいからおしゃれしている訳ではない。自分のためにお化粧して、かわいい服を着ている。でも、そうなるには時間がかかった。
元々は自分の容姿に全く自信がなかった。整形したくてしたくてしょうがなかった。よく「二重 埋没」「鼻 ヒアルロン酸」のワードでよく検索していた。そして、その検索履歴のせいでインスタの広告が整形に関するものばかりになった。それを見るたび嫌気がさして、「広告を非表示にする」を押して、理由は「自分に合わない」を選択していた。整形したらどこに出て行っても恥ずかしくない自分になれて、何かから解放されるんじゃないか。そう思っていた。でも、失敗したらどうしようかと整形する勇気はなかった。そんな自分が馬鹿らしかった。とても悲しかった。
周りに可愛いって言ってくれる人はいた。本当に有難いことだったのだけれど、どうしても自分の顔が認められなかった。もっと可愛く生んでほしかったと心から思っていた。
今から思うと自分のことを受け入れられていなかった。
でも、なんとか可愛くなれるようにメイクや服装を頑張った。すると、大学の友達が褒めるという形でフィードバックをくれた。「今日なんか可愛いね」「今日大人っぽいファッションで好き!」って。女子も男子も。周りの反応を聞きながら自分に似合うものを探していくのが面白かった。
おしゃれに敏感な環境の影響は大きかった。
東大生の友達がわたしの通うキャンパスに遊びに来てくれた時、「学食にいる人みんなが表参道に行くみたいな格好してる」と言っていた。めちゃくちゃ笑った。確かにおしゃれな人は多い。周りがおしゃれだと、自分もおしゃれにならなきゃという思いが芽生えやすい。
他にも、「人から見られるからファッションであって、自分がどう思うかは二の次だ」と言ってる友達もいる。人から見られることを一番に考えて服を買えるなんてすごい!
周りの人たちも見た目に気を遣うのが好きなのんだろう。その環境には助けられた。
「なんで男子よりも早く起きて化粧しなきゃなんないんだ」って思っていた時期もあった。けど、だんだんちょっとでも自分が可愛く見えるようにと試行錯誤する時間が愛しくなってきた。鏡を見ている時間がときめく時間に変わった。自分は可愛くないからダメな人だと思っていたのに。
お化粧して、服を選ぶ時間は自分のことを一番に考えている。その時間だけは「わたしなんて」の精神がなくなる。つまり、自分に構っていることになる。それが結果的に今まで受け入れてなかった自分を受け入れて、自分を大切にすることに繋がったんじゃないか。
自分が本当にいいと思うもの、好きなものを探す。見つける。そして、それを自分に与える。
毎日、自分を労わることを大事にすると、なんだか満たされた気持ちになった。例えば、好きなイチゴの香りのボディークリームを丁寧に塗っている時とか。
わたしの場合は、自分の目が奥二重なことではなくて、自分のことを認めてなかったことが問題だった。それがおしゃれをして、自分に向き合う時間を重ねることで、自分に愛着を持てるようになった。完璧な二重の自分なら価値があるんだろうな、と思ってきた。けれど、そんなことはない。どんなわたしでもわたしであるというだけで価値があるんだ。
そう気付かせてくれた。
わたしにとって、可愛いお化粧をして、好きな服を着ることは自分を強くしてくれるお守りだ。おしゃれは自分にかける愛情になる。可愛い格好をしていると、うきうきする。嫌なことがあっても上機嫌を取り戻しやすい。
コンタクトレンズも同じ効果があると思っている。個人的には眼鏡があると、なんだか世界と隔たりが生まれるような気がする。コンタクトの時の方がオープンな気持ちになれる。人に話しかけやすくなる。
自分の価値を否定しなくなった時、人に真心を向けられるようになった気がする。そして、表情も明るくなったと思う。
「今日もわたしいける!」って思うために大好きな洋服を着て、メイクする。
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