587円がもたらす幸福感
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:岡 健一郎(ライティング・ゼミ木曜コース)
朝日新聞の朝刊をコンビニで買うと150円だ。家では神戸新聞を購読しているので、朝日新聞を読むにはコンビニで買うのが簡単だなと思っていた。11/4(日)の朝日新聞の朝刊にお世話になっている人の記事が載ると聞いたのは直前の土曜日である。読むだけなら図書館へ行っても良いのだが、切り抜いて置いておきたいと思った。日曜日は特に何も予定がなかったのでお昼前に近所のセブンイレブンまで新聞を買うためだけに出かけた。
ご存知の方も多いと思うが、新聞は大抵入り口の近くにある。朝日新聞を手に取って、そのままレジまで行けばいいのだが、つい飲み物コーナーの方をグルっと回ってレジへ向かってしまった。その途中にはスイーツコーナーがある。もともとスイーツは好きなのだが、住んでいた神戸・阪神地区に美味しい洋菓子店が沢山あったこともあり、若い頃はコンビニで買うことはなく、洋菓子店で買うものだと考えていた。
「コンビニのシュークリームなんて工場生産の既製品だろ」という勝手な思い込みである。妻が「コンビニスイーツはなかなかコスパがいいわよ」と言い出したのは何年前だっただろうか。今では私も「おいしいな」と思えるものにいくつか出会うようになった。
そして新聞だけを買いに行ったはずのその日、出会ってしまった。
「白いわらびレアチーズ(108円)」
まず、想像がつかない。この「わらび」はわらび餅だよなと思いながら、わらび餅とレアチーズが頭の中では結びつかない。結びつかないがどちらも好物だ。しかし、今日は新聞を買いに来たのであって予定外のスイーツまで買っていいのかと悩んでしまう。でも私の場合、気になってしまった段階でいつも結論は出てしまっている。結局買うのである。あとは言い訳を考えているだけ。
「値段も手ごろだし、これは試すしかないな」
そうつぶやきながら「白いわらびレアチーズ」を手に取ったところまでは良かったのだが、家に帰ると妻と2人の子供がいることを思い出した。
「みんなの分をひとつずつお土産に買って帰ればいいか」
これまた自分で言い訳を作って納得し、改めてスイーツコーナーを見てみると他にもなかなか気になるものがある。
「スイートポテトパンケーキどら(199円)」
「大人ティラミスもこ(140円)」
ここまでは良かった。どれも新商品で少し意外性がある。「パンケーキどら」はパンケーキ寄りか、どら焼きよりか。「もこ」って何だろう。問題は4人なのであと一つ必要だという事だ。ここは定番「ダブルクリームのセブンシュー(140円)」で良しとした。
わらび餅とレアチーズの組み合わせや、パンケーキとどら焼きのどっちだろうという設定、写真的にはシュークリームにしか見えない「もこ」というもの。なぜこんなに謎めいたスイーツが多いのだろう。やはり手頃な価格で「謎を解くには試すしかないか」と思わせるのが狙いだろうか。そうだとすると私はまんまとその企画者の思惑に乗ってしまっていることになる。何とも悔しいが、でも気になる。ここはプライドを捨てて、思惑に乗ってしまって謎解きの答えを楽しもう、と考えながら帰路についた。新聞だけ買うはずが、その3.9倍の値段のスイーツを買ってしまっている私。こうやってコンビニPB商品は客単価を上げるのに役立っているのだなと勝手に納得してしまった。
さって、謎解きの結果です。
「パンケーキどら」はメイプルソースの影響もあり、パンケーキ寄りで納得。「大人ティラミスもこ」は、どう見てもシュークリームでした。ちょうど「ダブルクリームのセブンシュー」があるので、食べ比べてみると「もこ」は生地がもちっとしている。それ以外は違いが良く分からなかった。調べてみるとセブンイレブンのオリジナルで「柔らかいシュークリーム」のことを「もこ」というらしい。まあ、食べた通りという事で納得。最後に、購入するきっかけとなった「白いわらびレアチーズ」。今回の中で一番謎多きスイーツである。
これは表現するのが難しい。ただやっぱり買って良かったなと思えた。試してわかるこの幸福感。これがあるからつい謎解きをしたくなるのだ。もちろんがっかりすることもたまにはあるが、手頃な価格で楽しめる謎解きは日常の程よいスパイスだ。
ところで「結局全部自分で食べているじゃない」と思ったあなた。一人で全部食べたのではありません。どれも気になってしまったので、家族全員で分け合って食べたのですよ。 ***
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