「心の減速帯を設けよう」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:結珠(ライティング・ゼミ平日コース)
私は怒られたり、悲しい出来事があったときに何日もその出来事に心が囚われてしまうことがよくある。表向きには明るく気にしていないように振る舞っているがその実、心の中では忘れられずにいたり、何日かしたあとにその記憶がふと再生されて落ち込むこともある。こういった経験をしている人は意外と多いのではないだろうか。
私はある時に、こういった怒りや悲しみといったネガティブな感情を抑え無になる術を身に着けたいという思いと好奇心から京都の祇園にある寺院が主催する座禅会に参加した。
朝9時の開始時間の15分前ほどに着き、受付を済ませた。
そして、開始時間になり講師を務める住職の方による説明が始まった。
まず、「座禅に適した姿勢」と「呼吸を数えることに意識を集中させる」ことが重要だというの説明を受け、1回目の瞑想が始まる。
……カン、カン、カン。
拍子木の音が開始の合図だ。
「何も考えないで、呼吸にだけ意識を向ければいい」と安易な心構えで望んだが……
「何も考えないって難し過ぎる!」という事にすぐ気付かされた。
どれだけ呼吸を数えていても、3から5回目を数える頃はもう違うことを考えている。
体を動かさない事で身体のちょっとした痒みや痛みにも気を取られてしまう。他の参加者のちょっとした動作の音や庭園内の鳥のさえずりでさえ、「何も考えない」事を妨げる鬱陶しい刺激に聞こえ、意識を囚われてしまう。
そして、気づいた頃には何回数えたかも忘れてしまい、1から数え直すという何とも歯がゆい時間を過ごすことになった。
「早く終わりの合図をしてくれ!」
こんな諦めのような考えも湧き出し、もう何も考えないなんて目標はどこかにいってしまった。
……カン、カン、カン。
終了の拍子木の音を聞き、やっと訪れた解放の時間を味わいながら思った。
「考えないなんて出来ない」
1回目の瞑想が終わり、再び住職さんの説明に入る。
「無になるとは、感情を抑えて何も考えないようにすることではありません。」
「考えてしまう自分を認めて、自分の思考を客観視することです。」
感情を抑えて無にさせることをばかり考えていた私には目からウロコだった。
そして、2回目の瞑想。
今度は無理に思考を抑えず自分が感じている感情を認めて、客観視してみるよう心がけて取り組んだ。
「足が痛いな」を「今、足が痛いと感じている自分がいるな」に。
「鳥の鳴き声が聞こえる」を「今、鳥の鳴き声に意識が向いているな」に。
自分頭に浮かんできたの思考を1つの広い視点から冷静に認知するのだ。
そうして、自分が呼吸に意識が向いていないことに気付き、また呼吸に意識を戻す。
この訓練を繰り返すことで、自分の思考のコントロールが出来るようになっていく。
2回目の瞑想で行ったこのプロセスは、私達の日々の生き方にも役立つという事に気づけた。
例えば、ミスをして怒られてしまい時、思考がその事に囚われてしまうと過去のその失敗を思い出し、現在のその囚われた思考でまた落ち込み、またやってしまうのではないかといった未来への考えまでも支配されてしまうこともある。
そんな時に、瞑想を行うことで一度その思考の連鎖を止めて、現実的な解決に考えを戻すことが出来る。
この座禅会で私はこれまでの瞑想へのイメージが間違っていたことを学び、思考をコントロールするための現実的な気付きとなった。
高速道路や一本道を運転しているとき、人は集中力が落ち無意識にスピードへの注意が無くなっていく。 瞑想するということはその道に減速帯を設けるようなものだ
減速帯は、敢えて道に凸凹の段差を設けることで物理的に減速させるとともに段差を乗り越えるときの車の動きと音で出しているスピードへの注意を促す効果がある。そして、スピードの出し過ぎに気づければスピードメーターを確認して適当なスピードに戻すことができる。 瞑想をする事は、自分の感情を客観視しすることで、車のスピードメーターを確認するように、自分が囚われている思考に気づき、自分の感情を落ち着けることが出来るのだ。
そして、瞑想の良いところはいつでもどこでも出来る事だ。
座禅の姿勢になれる場所があれば1番だか、無ければ手を組んで半眼になり、体の準備を整える。後は、呼吸に意識を集中し、自分が今、何を考えているのかに気づく事が出来れば瞑想になる。1回5分〜10分の瞑想でも効果があると言われている。
日々、様々な考えに囚われて考えすぎてしまう事の多い私達は、一日の中で思考の減速帯になるような時間を意識的に設けるように心がけてはいかがだろうか。
仕事の休憩中や寝る前の数分間、電車の中でもできる事だ。
自分の感情や考えにも意識を向けることで、自分が考えるべきより良い思考と正しい進む道が見えてくるはずである。
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