子供時代の読書は金利が高い貯金である
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記事:イシザキマキ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「読書好きですよね? 何が好きですか? 何度も読んでいる本は何ですか?」
この質問にいまだにドキッとする。
そして嘘をついている子供のようにしどろもどろになる。趣味はと聞かれたらよく読書ですと答えてきたのに。そして読書量が多い人も私と話していたら読書量多そうと思うらしい。子供の頃は大量の本を読んでいた。だけど私は高校生の時、お金を稼ぐようになってから本を読む量が減っていった。本を読んでいた時間がアルバイトや仕事のための時間に変わった。
学生時代はアルバイトと単位を落とさない事の両立、そして社会人になってからは仕事と仕事に関わるなにかを学ぶための時間で、読む時間や体力がなくなっていた。長い間、心身ともにしんどくても読めたのは、課題提出のための本、週刊モーニングと東野圭吾のミステリー小説、ライトなビジネス書、そして仕事に関わる情報源となる雑誌や業界紙。きっと読書が趣味な人からすると、趣味読書と答えないで! と思われるレベルだったと思う。
でも、この2年読書量が増えた、特にこの半年は1か月に5-10冊は読めている。小説を読んで、その中に出てくる描写や登場人物の言葉に共感し、海の中で綺麗な魚を追いかけてシュノーケリングするように物語の中にどっぷりつかり追いかける感覚が戻ってきた。
ほとんど本を読んでいなかった空白の20年間ぐらい。その時代も大量の女性誌や情報誌、新聞漫画は読んでいた。文字中毒であったことは間違いない。ただ小説は村上春樹の「1Q84」のような超話題作しか読んでいなかった。小説を読んでいなかったら読書が好きとは大きな声でいってはいけないそんな引け目があった。
しかし、本、というものがなにかを学び共感し自分の中に取り込んでいき、未来のアクションを変えるものという定義なら、大人の場合それは、小説でなくとも、ビジネス書、雑誌や漫画、新聞でもWEBの記事でもいいのかもしれない。文字を読むことは様々な人と出会い話すことで得る影響に似ていると感じるからだ。
子供時代は1年に200冊は本を眺めそして読んでいた時代が何年もある。国語の先生の家に生まれとにかく本だけはいっぱいある環境にいることが多かったからだ。兄が持っていた科学や歴史の本、冒険図鑑が私の幼い時代の時間を埋めていた。小学校に通うようになると、図書館の手書きの貸し出しカードが1年に何枚も重なっていた。絵本から、絵の多い小説になり、絵がほとんどない小説が読めるようになっていった。クマの子ウーフ、ぐりとぐら、ずっこけ3人組、かぎばあさんのはなし、シャーロックホームズ、大草原の小さな家、それらをへて、ミヒャエル・エンデ、江戸川乱歩や、氷室冴子のなんて素敵にジャパネスクを読むようになっていった。
そして中学生になると、親が定期購読していたニューズウィークやアエラ、ロードショー、橋本治、落合信彦、沢木耕太郎、宮部みゆき、吉川英治、アガサ・クリスティ、スティーブヴン・キング、に進んでいった。兄たちが読んでいた、週刊誌ジャンプやスピリッツも当たり前のように勝手に読んでいた。本や雑誌に対しては、私のものは私のもの、親兄弟のものは私のもの、ジャイアン的だった。
親兄弟と住んでいた時代、家族の会話やみんなで一緒にした何かという思い出がない。わしわしと読んでいた本たちの事だけは覚えている。今思うと、本が子供時代の私の相手をしてくれていた。そして、大人になって小説を読まなくなっても、会話をすると小説を読む人という印象を受けるといわれた時にどういう事かと聞くと想像力がたくましいという事らしい。どうやら褒められているようだ。それはごく最近まで子供時代の貯金だった。
その貯金のおかげで、少なくとも文字を追いかけることは苦ではなく、様々な情報を仕入れるのが上手になりいろんな分野の人達と話しあい何かに取り組む事を楽しいと思う大人になった。多様な人に出会うことは本を読み広がる世界に似ているのだと思う。
子供時代の読書、自分の過ごしていた空間に本が沢山転がっていたことをとても感謝している。それは大量の本を所有する国語の先生の家に生まれたから。そして国語の先生だった父が亡くなって丁度1年がたつ。1万冊いや恐らくそれ以上の本を残して逝った。兄弟で父の家を整理し、その大量の本に圧倒され正直途方に暮れながら、そういう環境で一定期間育ったことが自分たちの今に繋がり財産になっている事をそれぞれ感じていた。
本が沢山ある場所が落ち着く場所。それを今再確認している。
そして子供時代の読書は金利が高くてお得なようだと実感がある。
その実感ができた今、大人でも子供でも、本が自然に好きと思ってもらえるきっかけを作りたいと思う。読んで面白かった本について友人に話すこと、子供に絵本をプレゼントすることそういう些細な事から始めたい。
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