キッザニアにみる後悔しない仕事の選び方
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:植咲えみ(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
「ママ、ピザ作ってきたよ」
息子が目を輝かせて私のところに戻ってきた。
私は3歳になる息子と夫の3人で、豊洲のららぽーとに入っているキッザニアに来ていた。
キッザニアをご存知だろうか。
キッザニアは子供が主役となり、100種類ものあこがれの職業体験をできる施設だ。
子供が仕事をしてお金を稼ぐ。稼いだお金で買い物もできるし、銀行に貯金することもできる。
まるで世の中をぎゅっと凝縮したような世界なのだ。
「どんな職業を選んでもいい」
このキッザニアには、未来に期待を膨らませるキラキラした、それでいて真剣な眼差しの子供達であふれていた。
みなさんにとって、今の仕事は天職だろうか?
もしくは天職とは言えないまでも、納得した仕事に就いているだろうか?
私は以前、病院で理学療法士というリハビリの仕事をしていた。
客観的に見ても、世の中に必要とされる素晴らしい仕事だと思うし、患者さんに感謝されるし、やりがいもある。
しかし私にはこの仕事を天職とは胸を張って言えない理由があった。
この仕事を選んだのは自分の意思ではなかった。
恥ずかしいことに、自分の意思ではなかった。
文系か理系か、どんな大学を受験するのか、全てが親の意向だった。
私は言われるがまま、この職業についた。
それでも15年も続いたのだから、案外私に向いていた仕事だったのかもしれない。
しかしどこかに違和感があった。
「私の仕事、一生これでいいの?」
そんな思いが大きくなった。
「もう35歳だし、3歳の子供もいるし、今更転職しないで今のところにずっといたほうが安全じゃないの?」
心の中で葛藤が続いた。
「だけど私は自分でこの仕事を選んだわけじゃない」
15年も経つのに、いい年をして最初の「やらされた」という感覚をいまだに引きずっていた。
そのちょっとした違和感を自分の中で無視できなくなったとき、私は自然と退職願を書き始めていた。
子供の時の職業選びはホテルのビュッフェに良く似ている。
ビュッフェ台には和洋中、前菜にデザート、たくさんの料理が並んでいる。
ローストビーフやフォアグラなどのメインとなる華やかな料理、目立たないけど身体に優しい料理、お口直しに食べるさっぱりとしたデザート。
もちろん行くホテルのランクによって並んでいる料理は違うかもしれないが、これらは自分の意思でどれをとっても良いのだ。
どれから食べよう、何が美味しいんだろう、とにかくワクワクする。
こうしたビュッフェのように、目の前にありとあらゆる職業が並んでいて初めて、こどもはその中から自らの意思で選択することができるはずだ。
残念ながら大人になってから新たに職を探すとなると、子供の頃はなんでも選べたはずのビュッフェ台は一度片付けられてしまう。
自分の実力、経済的な背景、過去との比較、これらいろんな状況をふまえて限られた選択肢から選び、そしてほんのちょっとカスタマイズできるくらい。
それでも私は「選び」たかった。
日本では、高校生の頃には理系だとか文系だとか、音楽系だとか、美術系だとか、ある程度の職業的な方向性を決めることになる。
この時点で憧れる職業に実体を伴って触れていなければ、やりたい仕事が何なのか、はっきりと選ぶことができない。
私は高校生の時点でこれといった憧れる仕事に出会っていなかった。
自分の人生の目標も持てなかったし、親という大きな強い意志に抗うことができなかった。
確かに私は小さい頃に職業選択というビュッフェ台に自分で行く機会がなかった。
親が選んだものを受け入れるだけの人生だった。
しかし今は、遠回りだったけれど自分で人生を選ぶことができるようになったのだ。
だからこそ、どうか自分の子供には自ら職業選択のビュッフェ台に行って自分で人生を選び目標を持って生きて欲しいと思う。
最後にキッザニアの素晴らしいところをお伝えしておきたいと思う。
「これをやりたいです、お願いします」と自分の意思で受付ができない子は職業体験をすることはできない。
また、職業体験を案内するスタッフは子供に話しかけるような言葉遣いは一切せず、イヤイヤとぐずる3歳の息子にも「〇〇さん、一緒にやりましょうよ」とまるで一人前の大人のように話しかけてくれる。
そして何より成功体験を全力で褒めてくれる。
もし子供が稼いだお金で買い物をするとしても、店の中に大人は一切立ち入ることができない。
大人が余計な干渉ができないようになっているのである。
つまりこのキッザニアという場所は、大人にとっても子供を一人の個として認めるための重要な場所でもあるのだと私は実際に体験して感じた。
キッザニアは子供自身が主体となって、自ら職業を選ぶ機会を与えられる有益なスポットだ。
まだ行ったことのない方は、是非子供と一緒に訪れてみて欲しい。
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