チーム天狼院

人が空を飛ぶのが当たり前になった時代に、僕らは一体何をすべきなのか?



*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:永井聖司(チーム天狼院)

 
32年の人生を振り返ってみると、何度これらの言葉を言ったか、わからない。
 
「言いましたよね?」
「伝えたじゃないですか?」
「なんでわからないんですか?」
 
これらの言葉を使う時、いつも僕はイライラしていた。
『伝えた』自分は正しく、理解できない相手が悪い。そのように考えて、これらの言葉を相手にぶつけていた。
自分自身の伝え方を見直そうとしなかったわけではない。伝え方に関する本を読み、少しは改善されたところもあったと思う。
4年前にライティング・ゼミを受講し、人に伝える機会が徐々に増えてくれば、随分マシになったところはあると思う。
 
それでも、自分自身の考えがまだまだ甘かったと思い知らされる言葉に、この夏、出会ってしまった。
まだ3ヶ月半ほど今年も残っているけれど、『2021年心に響いた言葉』ランキングのNo.1に、早くも当確した。
 
「伝える」より「伝わる」
 
『プレゼン思考』という本の中でこの言葉に出会った時、伝える事に関する僕の、根本的な考えやイメージがガラガラと音を立てて崩れ去るような、自分の頭の中にある、伝えることに関する考え方に、『間違えてます!』との烙印が大きく刻まれたような、そんな感覚がするような、言葉だった。
 
たった一文字、「え」と「わ」が変わっただけである。それなのに、こんなにも意味が違う。
 
「伝える」ことでこれまで満足してきたなんて、バカじゃないのか?
鋭利な刃を喉元に突きつけられてしまったような、そんな気さえした。
 
この言葉に出会って以来、僕の頭の中にはこの言葉がどっしりと居座るようになった。この本を読んだ8月以降、会議の場などで自然と、『伝わる』という言葉を僕が頻繁に使うようになったことに、きっと同僚たちは気づいているだろう。
 
何かを言った、SNSに投稿した、伝えた、で満足してはいけないのだ。
本当に『伝わっているか?』を考えられているか?
言葉にまとめようとすればあまりにも簡単で、「わかってるよそんなこと!」と思わず言いたくなる。
しかし、実際に出来ているかを考えてみると、『伝える』と『伝わる』の言葉の間には、大きな壁があることに気付くのだ。
 
 
そして不思議なことに、この言葉に出会って以降、この言葉についての理解を深めるような出来事が、ボクの身には続けて起こった。
 
 
「文章は『説得』の技術、図は『納得』の技術」
 
こう仰ったのは、8/16に開催された「図で考える120分基礎特講」イベントにご登壇頂いた、「50歳からの人生戦略は「図」で考える」の著者・久恒啓一先生だった。久恒先生は、ここ数年よく耳にするようになった、『図解』であるとか、『図で考える』と言った事に関する、第1人者でもある。
 
「伝える」より「伝わる」
この言葉を知っていた僕は久恒先生の言葉に、なるほど、と深く頷いた。
 
例えば通販ページに掲載されている商品説明は、まさしくそうだ。
いかにこの商品が素晴らしく、買うに値するのかを伝え、『説得』をしようとしている。
 
そもそもこの文章もそうだ。
『「伝える」より「伝わる」』という言葉の意味や意義について、これを読んでいるあなたに理解してもらえるように、説得をしようとしている、と言っても間違いではないだろう。
 
しかし、『説得』で人は動くだろうか?
例えば知人から『100万円貸して欲しい!』と言われたとしよう。
その際に、どれだけ言葉を並べられても『説得』だけではお金は貸さないだろう。『説得』の言葉が届き、『納得』に変わってはじめて、僕たちはお金を貸すはずだ。
 
例えばコンビニでペットボトルに入ったジュースを買うときだってそうだ。
容量、値段、パッケージ等などを総合的に判断して『納得』したからこそ、僕たちはその商品を購入しているはずだ。
今、少し顔を上げて周囲を見渡した時に見えるもの、もしくは身につけているものはほとんど全て、アナタが『納得』したからこそ、手元にあるはずなのだ。
 
残酷ではあるけれど、商品やサービスを売ろうとする場合、いくら商品開発にお金を掛けて高品質なものを作り、広告宣伝費を掛けて『説得』をしようとしても、お客様の『納得』に変わらない場合、購入していただくことは出来ない、というわけなのだ。
 
 
こうした『言葉』との出会いの連鎖に1人感動している中で、ダメ押しの機会があった。
 
それが、9月頭まで開催されていた、『DC展』であった。
 
『DC』という名前を聞いて、ピンと来る方も多いかもしれない。
 
そう、スーパーマンやバットマンなど、世界的に知られたスーパーヒーローを生み出した出版社の名前である。
 
『DC展』では、過去の映画で使用されたコスチュームや小道具、コミックの原画などが大量に展示されており、そのうちの1つで、スーパーマンを主人公にした『マン・オブ・スティール』等の監督を務めたザック・スナイダーのインタビュー映像が流されていた。
その中でザック・スナイダーが言っていた言葉に、僕は思わずハッとした。
 
「今の時代の観客は、人が空を飛ぶ、と言っても、もはや驚きはしません。
だから僕たちクリエイターは、『どうして空を飛ぶのか』とか、『どうしてスーパーパワーを振るうのか』『正義のために戦うのか』など、観客に受け入れてもらえるよう、丁寧に描かなければいけないのです」
 
まさしく、
「伝える」より「伝わる」の精神ではないか。
 
日本とか海外とか、全く関係はない。
 
ハリウッドの中でも恐らくトップクラスのクリエイターがこう言っているのだ。
これが、クリエイターとして持つべきスタンスなのだと、僕は確信した。
 
そして同じ展覧会の中で、バットマンを主人公にした映画『ダークナイト』などの衣装を担当した人物は、インタビュー映像の中でこのようなことを言っていた。
 
「どうすれば、キャラクターが自然に存在しているように見えるか、毎日考えていました。どうしてこのような形・衣装となったのか私なりにストーリーを考えて、それに見合うものになるよう、色んなジャンルの素材を研究し、作り上げていったのです」
 
 
正直に言ってこのインタビュー映像を見るまで、これまでの映画に登場するバットマンやスーパーマンなどスーパーヒーローの衣装について、そこまで意識することはなかった。
しかしこの、『意識させないこと』こそが、プロフェッショナルの実力なのだと、このインタビュー映像を見て、思い知らされた。
人間が空を飛び、目からビームを出し、地球外生命体とも戦う。そんな、現実では起こり得ない荒唐無稽なストーリーを、違和感なく観客に見せることが出来る。ヒーローが当然のように存在する世界観が自然に『伝わる』そのために、プロフェッショナルたちは考え抜いているのだ。
 
たかがマント1つとっても、どのような素材をマントに使えば、『伝わる』のか?
マントの色は? 長さは? 重さは? どうすれば自然と受け止められ、観客に『伝わる』のか?
 
監督の要望を聞きながら、クリエイター一人ひとりがどのようにすれば自然に『伝わる』のか考え抜く。その果てに生まれたのが、私たちが目にしてきた、スーパーヒーロー映画だったのだ。
 
そのような観点で展示されている実際の衣装を見てみると、どこまで考えつくされたものなのかがわからなくなり、恐ろしささえ感じるような気もしてきた。
 
2時間ほど掛けてゆっくりと展示内容を確認し、様々な映画に使われた生の衣装などを見て興奮すると同時に、帰り道、僕は僕自身に対して、様々な問いを突きつけられたような気がした。
 
『伝わる』ように、考え抜いているか?
『伝えた』ことで満足していないか?
『伝わる』ために、どこまで配慮ができているか?
 
正直、『NO』と言うしか、今はできない。そのことを情けなく思うと同時に、今このタイミングで気づけたことを幸福と思うしかない、と思った。
 
日々、膨大な数のアイデアや商品・サービスが生み出される現代。
『伝えた』ことで、満足して良いワケがないのだ。
 
『伝わって、いるか?』
どれだけこのことを意識できるか? 
きっとこれが、勝利のための、合言葉なのだ。

◽︎永井 聖司(チーム天狼院)
おそらく日本で唯一のビジネス書専門店、天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz店長。
大学卒業後、出版と採用コンサルを主な柱とする企業に就職し、コールセンター業務などを経験。30歳以降の人生について思い悩んだ20代後半、『人生を変えるライティング・ゼミ』を知り、2017年8月開講コースを受講。その後、ライティング・ゼミの上級コースにあたるプロゼミ(現ライターズ倶楽部)を3期受講し、2018年11月より天狼院書店に合流。
2019年4月より、ライティング・ゼミのフィードバックを担当。2019年9月より、シアターカフェ天狼院店長、2020年1月より現職。天狼院書店全体のビジネス書の担当を務める一方、ライティング・ゼミで学んだノウハウを活かし、ビジネス書著者を招いたイベントを多数開催している。
メディア出演 雑誌「ダ・ヴィンチ」「リクナビNEXT」

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