チーム天狼院

小さなリマインダー



*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:関口早穂(チーム天狼院)




それは2年越しの再会だった。




初めての時には見た目にギャップがあって本当に驚いたものだ。

ハードな感じなのに、中身は驚くほど優しい。忘れられない。

朝晩が涼しくなるようなこの時期になると、ふと思い出すのだった。

 

休日の朝に少し早く起きて、「今日は何があるかな」と小さなお店に向かう。
唐突だが、私は野菜の直売所に行くのが大好きである。

季節の朝採り野菜が並ぶ。

たっぷり太陽の光を浴びて、しっかり熟してから収穫されたトマト。色が濃くて新鮮なきゅうりや茄子。少し形が悪かろうが、規格外の大きさであろうが、それを選ぶのもまた楽しい。新鮮な野菜たちからはいつもパワーをもらえる。農家の方が美味しい食べ方なんかも教えてくれるから、本当に宝探しだと思っている。

 

あとはいつもお目当てのものがあるとは限らない。今日はなかった、というそこもいい。時にはスーパーに並ばないような不思議なものや、新潟の地元にしかないと思っていた懐かしい野菜や果物たちが並ぶ時もある。だからこそ、まさに宝探しなのである。

先日もいつものようにトレジャーハンティングへ向かっていた。

 

だが、だいぶ季節も秋めいてきて、大好きな夏野菜がもう終わりに近づいていることをひしひしと感じている。どことなく寂しさを感じながら歩いていた。あの夏のワクワク感はもうない。

遠くからでも分かる。もう太陽の光をそのままぎゅっと丸めたようなトマトはもう売っていない。

「まあ秋茄子もおいしいから、買って帰れたらいいな」

「今日のお宝はあまり期待できないかな」

そんな思いでお店に入った。

 

すると、バチっと目が合ってしまったのだ。

私たちの生活で、身近で知らない人はまずいないだろう。
正直、1年中あって身近だと言っても過言ではないだろう。

 

殻付きのこともあるし、剥いてあることもあるし、柿の種なんかと一緒のこともある。

ここまで引っ張っておいて何だが

私が2年間忘れられなかったのは

 

「生落花生」である!!!!
そう、生のピーナッツである!!!!!

 

いつも季節のものを出してくれる、大好きなお料理屋さんがある。
そこで、2年前に何気なく出してもらったのが

「生落花生の塩茹で」だったのだ。

 

もうこの時の驚きと言ったらない。

だって、落花生って乾いているもんでしょ!?
パキッとむいて、カリッと食べるもんでしょ!!?

まさか触った途端、ぐにゃっとするなんて思わないでしょ!!!?

ええええ!!!!!!!!!!!??

頭の中がバグってしまった。

固定観念に縛られているというか、頭の中では決まりきっていたイメージが180度変わって目の前にある。

 

ギャップありすぎ……柔らかくてみずみずしい落花生。

 

驚きすぎて思わず女将に声をかけてしまった。

すると、

「実は落花生って、9月〜10月が旬なのよ」

「この辺でも作っている農家さんがいて、今しか食べられないの」

 

乾燥しているものと同じように、殻のつなぎ目に手をやると簡単に割れた。
中身はとっても白い。
「旬とかあるんだ……」

「そうか、落花生って豆か」

と意味のわからない感想をつぶやく。

 

ほくほく……と落花生らしからぬオノマトペをまといながら、旨味が口の中に広がる。
塩味が効いていて、シンプルな味でそれでいて後味はちゃんとピーナッツ。
優しさに包まれるような、本当に最高な味なのである。

常識が覆り、脳みそがびっくりしたことと、かなり美味しかったのと相まって、その夜の出来事は、忘れられない思い出になってしまった。

 

本当にその日に収穫された分だけなので多く並ぶわけではない。
偶然に出会えた生落花生を愛おしみながら1袋カゴに入れた。

他の野菜と一緒にエコバックに入れ、足取り軽く家に帰る。

 

家に帰ってきてそそくさとレシピを検索する。
「生落花生 塩 茹で方」

たっぷりのお湯と、その3〜4パーセントの塩があるといいと学び、大さじでこちらもたっぷりと加える。

落とし蓋をして、ぐつぐつと茹でていく。
意外と時間がかかるようで、3〜40分ほど火にかけておく。

 

ぷかぷか湧いては消えていく泡を見ながら思い返す。

⦅落花生は乾燥していてカリッとしているもの。⦆

「そうだと思い込んでいること」って多いのかもしれないな。

 

「これはこう」

「こうじゃなきゃいけない」
「これしかない」

「常識ではこう」

疑わずに、思い込んでいることの何と多いことか。こんな親指ほどの落花生から教えられる。いろんな面で、もしかしたら無意識のうちに思考が囚われているところ、知らないでいることってまだまだたくさんあるのだろうな。

(いや、落花生の例だけでいえば有名な産地である千葉県民の方なんかは当たり前に柔らくみずみずしい落花生を知っているのだろう……笑)

 

人生においても新しい発見や、思い込んでいたことと違う結果が起こることを楽しめるような、柔軟な自分でいたいなと思う。アイディアだって先入観や固定観念に縛られず、頭を柔らかくして出していけたらなと願う。

 

そんなことを、落花生を柔らかく煮ながら考えていた。
一緒に頭も柔らかくなったらいいな、なんて能天気なことが湯気と一緒に浮かんでは消えた。

 

次は、いつ出合えるかな。
案外すぐかも知れないし、また日が開くのかも知れない。

でも、落花生をみるたびに「そうだ、頭を柔らかく〜」とリマインドしてくれるこの体験を今後も役立てていきたいなと思う。

 

みなさんも、ぜひ生落花生を見かけた際は、家に連れて帰ってみてほしい。
特に茹でたては格別だから!

大きなギャップと、その美味しさとを共有してくれたら幸いである。

◽︎関口早穂(チーム天狼院)

***

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