チーム天狼院

【実録!】ほんとにあった狭い家の話〜令和にもなって冷凍庫のない家に住んだ一年間《スタッフ平野の備忘録》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平野謙治(チーム天狼院)

 

 

異動、それは突然に

 

業種・職種・会社規模にもよるけれど、多くの社会人が経験する可能性のある突然の異動。関東圏に生まれて25年もの間、一度も実家を出ていなかった僕には無縁だと思っていた。しかし忘れもしないあの日、2020年10月に行われた朝の会議にて、僕は突然大阪への異動を言い渡された。

 

言われた瞬間、「いや、マジか!!!」と。正直、ここ数年で一番驚いたと思う。それこそ社会人になってから一番だったのではないかな?
しかも異動までの猶予がわずか11日。急すぎるだろ。いろは坂か!!

 

いろんな感情が湧き上がってきたけれども、最も大きいのは不安だったと思う。だって、ひとり暮らしとかしたことないし。それも全く知らない土地で。
生活面も少なからず心配だった。だけど正直、それを遥かに上回る不安が存在した。ぶっちゃけた話、経済面である。

 
 

一人暮らしの初期費用って、どれくらい必要なの?

 

異動する可能性なんて全く想定しておらず、わずかな暇さえあれば友人と遊び回っていた僕は、実家にいたにも関わらず貯金額が非常に少なかった。具体的な額を公表するのは憚られるけれども、池井戸潤原作ドラマの主人公の所属会社の初期状態くらい、経済面には不安があった。

 

知らない方が幸せなのでは? と思いつつ、やがて訪れる現実に目を向けねばと、恐る恐る「一人暮らし 初期費用」で検索してみる。

 

……え、マジか。こんなにかかるの! 「カーテン=買い揃える」ではなく、「ついているもの」と勘違いしていた当時25歳のアホには、正直ショッキングな金額だった。
カーテンどころか。電気すらついていないという現実をしばらく受け入れられないでいた。契約したての家が、これほどまでに何もないなんて。モンハンの初期装備が充実していると感じさせるレベルだ。

 

ショックを受けたのは、買い揃えるべきものだけはない。当然のことながら「賃貸契約の初期費用」も、重くのしかかってくる。
えーなになに。僕が検索したページによると「賃貸契約の内容にもよるが、一人暮らしの初期費用は家賃の5ヵ月分程度」? それってつまり、30万円くらいかかるじゃん。

 

引越しすらほぼ経験したことがない僕は、家具家電とか諸々買ったとしても、20万円くらいあれば全部足りるのかな? と甘く考えていた。恐ろしい勘違いである。むしろ20万円では、賃貸の契約すらままならないではないか!

 

調べた結果どうやら、大阪で一人暮らしするならば、初期費用が約25〜30万円ほどがかかり、家具・家電だけでさらに20万円ほど。その他諸々の生活用品で5万円ほど。合計50万円くらいはかかりそう、というのがわかった。
引越し費用が含まれていない段階でこれだ。恐ろしいね!

 
 

なんとか安く済ます方法はないか?

 

菊花賞で一発当てにいこうかと本気で悩んだけれどもなんとか踏みとどまった僕は、安く住む方法はないか? と考え始める。そうだ。まずは情報収集しよう。こういう時は親に聞くのが一番と思い相談してみたところ、思わぬ選択肢を言い渡される。

 

「大阪に長くはいないんでしょ。それなら家具・家電付き物件にすれば?」

 

家具・家電付き物件! 思いもしなかった。あるではないか。カーテンも電気もついている家が! これで20万円近く浮く、と確信した僕は家具・家電付き物件に住むことに決めた。

 
 

10月末、ついに関西へと異動。もちろん最初は家がないから、11月中は会社の経費でホテル暮らし。さて、この間に決着をつけないと……

 

休日になり、早速不動産会社へ。希望の条件に「家具・家電付き物件」と伝えると、「今ご案内できる部屋が2つあります」と言われる。2つ!? むしろ、2つしかないのか。中途半端な時期だったから、物件の入れ替えも少なかったとのこと。

 

選択肢の少なさに一瞬たじろぐものの、続いて気になる質問をぶつけてみた。「家具・家電次の物件は、家賃や管理費が高くなるのか?」と。懸念していたことだったが、担当者曰く「家具・家電付き物件だからと言って高くなることはない」とのこと。なんだそれ、めちゃくちゃ助かるな。それならやっぱり「家具・家電付き」がいい!

 

まあ百聞は一見にしかず、ということで早速内見へ。担当者に「すぐ埋まるから早く決めた方がいいですよ!」と急かされながら観に行った。

 

結論から言うと、2つとも良かった。カーテン、電気どころじゃない。ベッド、机、椅子、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、電気ケトル、ドライヤーまでついてくる! 至れり尽くせりかよ。それこそ今住んでいるビジネスホテルのような雰囲気の部屋だった。
家賃と立地はそこまで変わらなかったので、独立洗面台の家を選び、内見翌日には申し込み手続きを済ませた。

 

入居時の初期費用は、23.8万円。時間もなかったし急かされて決めてしまったけれど、相見積もりをとればもっと安い仲介はあったかもしれない。まあそれは次回以降に生かす反省点として、家具・家電費用が浮いたのは間違いなくデカい。

 
 

実際に住んでみて、どうだった?

 

入居初日。
洗濯機やテレビまで買う必要なくなったぜ、ヒャッハー! とはしゃいでいるのも束の間。恐ろしいことに気づいてしまった。

 

……あれ、この家冷凍庫なくね?

 

そう。「冷蔵庫はある」と聞かされていたからよく見ていなかったけれども、よくよく確認してみると小さな冷蔵庫がキッチンの下の狭いスペースに押し込まれている。その小ささと言ったらまさに、ビジネスホテルサイズ。そこまでビジネスホテルかい! いや、この間まで泊まっていたホテルのよりも下手したら小さいような……。当然ながら、冷凍庫などは存在しない。おいおい! 一人暮らししたら冷凍ご飯にめちゃくちゃお世話になる予定だったのに!!

 

この小さな冷蔵庫、一体どれくらい入るんだ? 試しに2リットルペットボトルを入れてみたら、2本でパンパン! なんなら、形によっては1本しか入らない。冷凍庫がないどころか、冷蔵庫のキャパシティにも難あり。ラッシュ時の埼京線くらい詰め込んでも、2日分の食料が限界。こりゃスーパーに行く頻度が増えそうだぜ……。

 

ついでに言うと、炊飯器もなかった。さすがに購入を検討したけれども、余ったご飯凍らすスペースないじゃんということに気づき、やむなく断念。そうだよ、思い出せ。極力何も買わないために、この家に住んだんだろ。変な意地が湧いてきた僕は、冷凍庫も炊飯器も買わない道を選んだ。

 

内見したにも関わらず住むまで全く気づかなかった当時25歳のアホはそれなりには途方に暮れた。だけど翌日にはもう開き直っていた。だって自業自得だし。与えられた条件で有意義に生活してやるぜ、ってね。

 

開き直ってからの生活は、決して悪いものではなかった。冷蔵庫が狭いから、アイスが無い、お酒も無い、ご飯を炊くこと一度も無いという、吉幾三にも「おらの村の方がマシ」と言われてしまいそうな状況ではあったけれども、住めば都とはよくいったもので、慣れてしまえば案外不自由なくやれていた。パスタなどを中心に食し、ご飯は即席パックで代用。最初から無いものだと思えば、不思議と不便には感じない。他の条件は満足いくものだったし。

むしろ、限られたリソースで戦わなければならないこの生活を、楽しんですらいた(ドMではないです)。アイス・お酒に続いて、断つ必要がないお菓子まで自らの意志で禁止して、ストイックな自分に浸っていた。

 

大阪店で一緒に働いていたアルバイトの女子大生に「どうよ、この生活? なかなかストイックでしょ」といった感じで自慢したら、「平野さんは何を楽しみに生きてるんですか?」と哀れみの目を向けられるという屈辱も味わったけれども。誰がなんと言おうが、僕はこの生活を楽しんでいた。誰がなんと言おうと、「幸せ!ボンビーボーイ」だった。

 
 

期間限定の異動なら家具・家電付き物件がおすすめ!

 

2021年11月、またしても僕は異動を言い渡された。とは言っても、知らない土地ではない。東京に戻ることになったのである。
「たった一年で慌ただしいね」と周囲からは心配されたものの、家具・家電を一切買わなかったため退去はそれほど手間ではなかった。荷物といっても、服くらい。貰ってきた段ボールに詰めて、最寄りのコンビニに自力で運び、配送をお願いした。業者を使うより遥かに安価かつ楽に、引越し作業を終えることができた。

 

少なからず欠点のある暮らしだったのは認めざるを得ないけれども、結果として良い選択ができたと今では思う。経済的に不安がある方や、期間限定の異動でフットワークを軽くしたい方には、ぜひオススメしたい選択肢だ。

 

あえてデメリットを他に挙げるなら、選択肢の少なさだ。当然のことながら、家具・家電付き物件は通常の物件と比較してそもそもの数が少ない。条件にこだわりがあればあるほど、希望の見つけるのは困難になる。実際僕に与えられた選択肢も、2つしかなかった。そのうちの片方が、バストイレ別かつ、独立洗面台の物件だったのは、本当にラッキーだったと振り返ってみて思う。

 

経済的に余裕がある場合、またその地域に長く住む場合は、わざわざ「家具・家電付き物件」を選択肢に入れる必要はないだろう。僕にしたって「遅くとも3年以内には東京に帰る」つもりだったからこそ、「家具・家電付き物件」を選んだ。実際、東京に帰った今では実家を出て賃貸で暮らしているけれども、家具のついていない物件を選び、電気もカーテンも購入して生活している。当然、お金はかかるけれども、自分で家具を選ぶのは本当に楽しい。愛着も湧く。アイスだって買える! 自分で選んだものに囲まれて生活ができるのならば、それに越したことはない。

 

だから「家具・家電付き物件」を選んで良かったとは思っているけれども、今後の人生で住む予定はない。
だけどもしもまた、突然異動を言い渡されたら……。
その時は再び、お世話になるだろう。意地でも、冷凍庫のある家を探してやる!!

 

 

◽︎平野謙治(チーム天狼院)
東京天狼院スタッフ。
1995年生まれ26歳。千葉県出身。
早稲田大学卒業後、広告会社に入社。2年目に退職し、2019年7月から天狼院スタッフに転身。
現在は「東京天狼院」を中心に勤務。
2019年2月開講のライティング・ゼミを受講。16週間で15作品がメディアグランプリに掲載される。
メディアグランプリ33rd Season, 34th Season総合優勝。
『全く興味なかったはずのダンスグループ『BE:FIRST』のせいで、危うくノーパンで出勤しそうになった話。』など、累計6作品でメディアグランプリ週間1位を獲得。
その他、『ラブホテルの階段で、ボコボコに殴られた話』など。

http://tenro-in.com/writing-20190802-4

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