チーム天狼院

ミーハーになると人生は楽しくなる


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記事:土居りさ子(チーム天狼院)
 
ミーハーってなんとなく恥ずかしい。
皆と同じものが好きなんてかっこ悪い。
 
私はいつからか、そんなふうに思うようになっていた。
 
私が一番「ミーハーだと思われたくない」と感じるのは、映画だ。
世間で話題になっている作品を観て、「あれ良かったよね」というより、「話題作はあんまり分からないけど、私はこれ(マニアックなもの)が好きなんだ」という方がかっこいいに決まっている。ろくに映画も知らないくせに、心のどこかでいつも、そんな気持ちがあった。
 
でも、今は違う。
むしろ、話題作はできるだけ早く劇場で観たい! と思うようになった。
 
きっかけは2016年の夏。2人の友人と京都へ遊びに行ったときのことだった。
下鴨神社のライトアップを観に行こうと、私たちは昼頃から集まっていた。
 
日没までは、まだたっぷりと時間があった。
とても暑い日だったので、外をうろうろするのはしんどい、という意見が三人で一致し、「涼しい映画館に行こう」という話になった。
何を観ようかという話になったとき、「今日から『君の名は。』の公開日じゃなかった?観ようよ!」と友人が言ったので、すぐにインターネットでチケットを予約して、観に行くことを決めた。
 
私は正直あまり乗り気ではなかった。
アニメは好きだが、公開前からテレビなどで大々的に宣伝され、アニメファン以外の人たちも「絶対観たい!」と声を揃えて言う、いわゆる「話題作」。
アンチ・ミーハーの私にとっては、観る前からすでに「なんとなく好きじゃない作品」だったのだ。
 
でも確かに真夏の京都を歩くのはしんどかったので、映画館へ行くことに異論はなかった。
 
映画館に到着し、中に入るとやはり涼しい。
しかし舞台挨拶でもあったのかな? と思うほど、ロビーは人で溢れていた。
目当ては皆『君の名は。』である。夏休み中ということもあって、本当にたくさんの人が観に来ていた。
話題作の公開初日に映画館に行くなんて、私にとってはじめてのことだった。
 
そうこうしているうちに、映画が始まった。
映画自体は大好きなので、始まるとなんだかんだ集中して物語の世界にのめり込む。
どんなストーリーなのかをほとんど知らなかったので、「あ、こんな話だったんだ」という気持ちでしばらくは観ていた。
その後、予想外の展開にあっと驚き、映像の美しさにうっとりして、RADWIMPSの音楽に何度も鳥肌が立った。
公開初日の上映に集まった、たくさんの「ミーハー」な観客たち。
その中で、この作品を素直に、心から楽しんでいる自分がいた。
 
ラストシーン。
タイトル『君の名は。』の文字がスクリーンにパッと現れ、主題歌の『なんでもないや』が流れ始めると、客席からすすり泣く声が聞こえた。
横に座っていた友人も号泣していた。
 
私はというと、放心状態だった。「私は今、すごい良作を観たんじゃないか」ずっとそんな気持ちでボーッとエンドロールを眺めていた。
場内の明かりがつき、余韻でいっぱいの会場を後にする人たち。
皆が作品について熱っぽく、楽しそうに話していた。
 
映画館を出たあと、私も友人たちと「すごくよかったね」と感想を言い合う。この作品の良さをぜんぜんうまく言葉にすることができなくて、「すごかった」「やばかった」としか言えないのが悔しい。それでも、この作品を観た人と話せることが嬉しかった。
 
その後も一緒に観に行った友人たちだけでなく、いろいろな人と『君の名は。』について話をした。
大学でも、バイト先でも、初対面の人とも。
皆面白いくらい、この作品を知っていて、そして観ている。
中には「面白くなかった」という人もいたが、それでも一つの作品について、こんなにたくさんの人と話せたのは初めてのことだった。
 
それ以来私は、
『ラ・ラ・ランド』
『グレイテスト・ショーマン』
『カメラを止めるな!』
『ボヘミアン・ラプソディ』
など、話題の映画はできる限り映画館で観ている。
 
どの作品も「面白いなぁ、好きだなぁ」と素直に思えるものだった。
 
「ここのシーンが好き」「この曲が良かった」「ここの意味が分からなかった」
『君の名は。』を観たときと同じように、作品についてたくさんの人と話ができるのも嬉しい。同じ作品でも、それぞれ好きなポイントや、感想が違うのがまた面白い。
 
ミーハーでいることってこんなに楽しかったんだ。
これまでの自分のあまのじゃくっぷりを思い出すと恥ずかしくなる。
 
先日久しぶりに聴いた、星野源さんの『日常』という曲の中で、
「みんなが好きなものが好きでも それでもいいのよ」
という歌詞があった。
今まで気にしていなかったのだが、「ミーハー」になった今、この言葉を聞くとハッとさせられる。
 
どうしてこんな簡単なことが分からなかったんだろう。
 
みんなが気になるものが、自分も気になるし、
みんなが好きなものが、自分も好きだ。
 
そう認めることができてほんの少し素直になれた今、以前よりも毎日が楽しくなった気がする。
 
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2018-11-29 | Posted in チーム天狼院

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