【公式レポート】新進気鋭!歴史小説の革命児『蔦屋』著者谷津矢車さんを迎えての白熱リベラルアーツ・ラボ「歴史」《三宅香帆》
小さい頃、1日中夢中になった遊びがあります。
延々と国語辞典を引いていく遊び。
ある言葉を辞書で引くところからスタートして、その言葉の項目の中の、説明や例文の中でわからない言葉を引き、また次の言葉の項目の中でわからない言葉を引き……という永遠に辞書を手放すことのない遊びで、私はとりとめもなくどんどんどんどん言葉の知識がついてくるこの遊びが、とても楽しくて好きでした。
谷津矢車先生のお話を聞いていて、その遊びの感覚を、私はちょうど思い出していました。
こんにちは、遠隔インターン生の三宅です。
今は東京におり、『蔦屋』などで知られる谷津矢車さんの大ファンであり、「歴史」という私の大好きなトピックを扱う、という2重3重の要素に押され、私は8月19日のイベント「リベラルアーツ・ラボ『歴史』」に参加しました。
今をときめく新鋭歴史小説家・谷津矢車が歴史を語る!そこに惹かれた方々なのでしょう、当日はやはり歴史と小説の好きそうな方々が集まることとなりました。
登場した谷津先生は私が思ってたよりずっとお若くて、ハキハキと物を喋る方でした。
スーツをちゃきっと着こなし、歴史について溢れるような知識を惜しげもなく話し続ける谷津先生。司会進行を務める店長・三浦の歴史好きな性格も高じて、二人の話は歴史の舞台を縦横無尽に駆けずり回りました。トピックは、税制、宗教、革命、氏、王朝、神話、学問……本当に色々な視点の「歴史」が語られました。また、時代も神話の時代から現代に至るまで、範囲も世界史や現代社会と絡まりながら、谷津先生のたくさんの知識とともに、「日本史」が様々な切り口で語られる夜となりました。
一つのトピックについて、「そういえばほかの時代では……」「これは見方を変えると……」と色々な観点と知識をお持ちの谷津先生は、さながら一つの言葉に意味をいくつか載せる「辞書」のような方だなぁ……私はそんな印象を持ったため、冒頭の遊びを思い出したのでしょう。
これは個人的な感想なのですが、私は谷津先生の著書の何が一番好きって、「登場人物がカッコイイ」ことなのです。小説の中に出てくる「カッコイイ」男女に私はとっても弱いので、谷津先生の著書に弱いのだと思います。
しかし、今回のイベントを通し、納得しました。誰より何より、谷津先生自身が、「カッコイイ」方なのです!
溢れる知識はもちろん、何より小説に対するその姿勢。
店長・三浦が「若い歴史小説家ってなかなかいませんもんね~…たとえば若くて可愛い女性歴史小説家が新たにデビューしたらどうですか?歴史小説という業界も活性化しますよ多分~!」と言ったとき、谷津先生は、笑顔でこうおっしゃいました。
「そうですね~、まぁ潰しますね~!」と。
三浦が「ええー、可愛い女の子でもですか?」と笑いながら聞くと、「いやぁ小説のこととなるとね、僕は本気で潰しにかかりますよ~。それとこれとは別です。ボディーブローからの……」と『明日のジョー』流ボクシングで相手を倒す様をジェスチャーする谷津先生。歴史の話をしていた時に爛々と輝いていたその目が、ぴりっと本気の色を帯びた様が、とても印象的でした。プロです。カッコイイのです。
谷津先生の小説の中に出てくる登場人物の「カッコよさ」は、谷津先生自身の「カッコよさ」だったのだな、と私は妙に納得してしまいました。
谷津先生の小説の中には様々な場所で「革命」を起こそうとする登場人物が出てきます。
しかし、このイベントの中で、歴史の話だけでなく、「買ってくださいねー」って笑顔で著書の話をしたり、「何で歴史を小説にしようと思ったのか」という質問にしっかりと答えて下さったり、「いやーあの先生は僕が倒さなゃいけない相手なんですよねー」なんて笑顔でまたしても『明日のジョー』ジェスチャーを行っていた谷津先生ご自身が、
「21世紀の日本文学界」という歴史の舞台において、「革命」を起こそうとするカッコイイ主人公そのものなのだ、と。そんなことを私は妙に確信してしまったのでした。
トピックの一つの中に、こんな話がありました。
「革命を最初に始めた人は、必ず殺されるのではないか」。織田信長も、幕末の風雲児たちも、フランス革命の青年たちも、志半ばで殺されているじゃないか。
織田信長→豊臣秀吉→徳川家康、という日本の戦国時代を見れば分かるように、革命というものは、壊す→育てる→完成させる、という三段階で成り立つ……とすると、最初の段階の「壊す」人々は殺されるんじゃないか!えってか僕たち革命起こそうとしてるんですけど!待って、このままじゃやられちゃうじゃないか!
そんな話を谷津先生と三浦がしていました。歴史上「壊した」奴らで生き延びた奴らはいたのか?という話にまで発展していました。
だけど私は思うのです。「いやこれこそが革命なんじゃないですか!」と。
日本の出版業界で、革命を起こして、生き延びる。それを達成したら、「出版業界」での革命がまず起きる。これは当初の目標通りですよね。
だけどそれを成し遂げて生き延びる、ここまでいくことで、ある種「世界の革命史」に革命を起こすことができるんじゃないでしょうか。今まで「壊した」段階の人はやられてきた、という「革命史」自体に、「壊した人が生き延びる」という「革命」を起こす。
革命によって革命の革命!何だか二重構造のようですが、私は絶対そうだと信じながら、密かに「今もしかしてすごい歴史の瞬間を見てじゃないか私!」とどきどきしながら二人を見ておりました。いやーカッコイイですお二人とも。
とにもかくにも、「歴史」という学問の奥深さ、底知れなさ、そして谷津先生自身の底知れなさを体感したイベントでございました。
谷津先生、本当にありがとうございました。革命が起きること、楽しみにしてます。というか最新作楽しみにしてます!また機会があればぜひ天狼院書店にいらしてくださいね!
追伸:谷津先生ファンかつホームズファン(私だけじゃなくて絶対いらっしゃいますよね!?ね!?)の皆さん!最新刊『ふりだし』の「馬律流」というのはやっぱりあそこから来たそうです!いや~やっぱり~~わかってらっしゃいます(にやにや)。
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