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メディアグランプリ

ただ、そこにいるだけの、親孝行


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:リエ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「子どもを、親孝行の道具に使うな」
 
7年前、祖母が亡くなった時。
実母を亡くし、落ち込む母をなんとか元気にしてあげたいと思っていました。
 
結婚して3年が経とうとしていた私。当時、新婚だった姉。
「お母さんのために、早く子どもを生んで、親孝行したい」
と言った私に、姉が返した言葉でした。
「確かに、子どもは道具じゃないよね……」
一歳しか違わない姉ですが、その言葉には重みがあります。
 
私は三人兄弟の末っ子で、昔からお母さん大好きっ子でした。
小学生の頃は、家に帰るとスグに宿題を片付け、母が内職をするミシンの部屋か台所にいって「今日こんなことがあってねー」と、話すのが日課。
中学生の頃は、反抗期のくせに、私だけお母さんの隣で寝ていました。
県外の大学に進学し、一人暮らしをしていたけれど、入学当初はスーパーで母娘連れを見て、お母さんを思い出して涙することも。
社会人になって、結婚して。
さすがに親にベッタリはなくなりましたが、やっぱりいくつになっても、お母さんが大好きなんです。
 
「孫の顔見るのが楽しみ」と言っていた母のために。
親孝行のために、子どもが欲しい……ずっと、そう思っていました。
ただ、子どもは思ってできるものではありません。
姉の言う通り、親孝行の道具でもありません。
重い言葉を私に授けた姉には、その後2人の子どもができました。
 
「ストレスが一番、よくありませんよ」
「夫婦でしっかりコミュニケーションをとりましょうね」
「不妊治療には段階があって……」
そんな記事を、読んだり、書いたり。
私は仕事で4年間、女性メディアの運営に携わっていました。妊活特集の企画・制作、妊娠待ち時間調査の実施、妊活情報を集めるために病院にいくなど……
一般女性に比べれば「妊活」に向き合う時間が圧倒的に多い生活をしていました。
でも、知識があるからといって子どもができるわけではありません。
 
夫が子どもを強く望むこともなかったため、不妊治療に踏み切ることもなく。
結婚して10年がたち、我が家に子どもはいませんが、夫婦2人の生活をマイペースに楽しんでいます。
 
昨年末、兄のところにも第一子が誕生しました。
普段はみんな別々で暮らしていますが、今年のお正月は実家に兄弟の家族が大集合。
普段は老夫婦2人だけの実家も、0歳児、2歳児、5歳児、小さな子どもが3人もいると、パーッと一気に賑やかになります。
「あー、笑ったぁー」
「ほらほら、危ないよー」
「ちゃんと片付けて、えらいねー」
ただ、いるだけで、動くだけで、喋るだけで、とにかく可愛い孫たち。父母ともにデレデレです。
 
ただ、可愛い孫がいるものの、兄も姉も、そんなに頻繁に実家には帰れません。言わずもがな、母のスマホの待ち受け画面は孫の写真。居間には、孫の写真がワイド版に引き伸ばされて飾ってあります。
 
ありがたいことに、私の夫は全くもって手のかからない人。
「今日はゴハン各自で」といえば「ハイハーイ」という感じ。仕事も趣味も自由にやらせてくれるし、本当にありがたい環境です。子どものいない身軽な私は、月1程度で実家に帰っています。
実家に行けば「◯◯ちゃんがねー」と、孫の写真を嬉しそうに見せてくれる母。
兄や姉の子ども達が、親孝行をしているのは間違いありません。
 
孫を見て、顔をほころばせる母を見て、とても嬉しい反面、やっぱり自分に子どもがいないことが、ふとした瞬間に、罪悪感として襲ってきます。
ただ、子どもの命は授かりものです。考えても仕方ないこと。いつもこの罪悪感には、ピッタリ、シッカリ、蓋をして暮らしていました。
 
年々、シミやシワが増える私。
年々、腰が曲がっていき、体力がなくなり、歩くとハアハアと息を切らす母。
 
当たり前だけど、人は等しく年をとります。
 
考えたくなくても。
親が当たり前にいてくれることが、当たり前ではない日が来ることを、感じる機会が増えていきます。
 
健康グッズをプレゼントしたり。
自分が入手した健康体操や健康法を実家に帰るたびに両親に披露して、少しでも元気に過ごせるように。
私にできることは、それくらいでした。
 
今年に入り、母は体調を崩して、心臓の手術をすることになりました。母にとって人生初の入院、そして手術。お守りを買って、病院に付き添って……やれることは全部やりたいと思いながらも、意外とこんなときは無力です。
 
病床の母から、私の40歳の誕生日の朝、一通のメールが届きました。
「お誕生日おめでとう。こんなにいい子に育ってくれて母は幸せです。有り難う」
泣きすぎて、涙も鼻水も、止まりませんでした。お母さん、全然いい子じゃないよ……
それを読んで、ずっと、気持ちに蓋をして言えなかった言葉を、自然と返信していました。
「楽しみにしている孫の顔を見せてあげられなくてごめんなさい」
 
手術は無事に終了。それから1ヶ月後、母は趣味の俳句教室に行けるまでに回復しました。
ある時、母から届いたメール。
「リエのことを詠んだ俳句が選ばれて、新聞に載ったよー」と。
 
『孝行は孫のみならず春の風』
 
お母さん、嬉しいけど、その俳句、きっと周りの人には伝わらないと思うよ。
お母さんと私だけにしか分からない句だけど……
お母さん、ありがとう。
私は、お母さんの子で本当に幸せです。
 
 
 
 
***
 
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2019-09-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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