それがアナタのアナザースカイ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:Osa (ライティング・ゼミ日曜コース)
「それがアナタのアナザースカイ!」
ある日、私は心の中で強く呟いた。
〝アナザースカイ〟
これは日本テレビ系列で毎週金曜日に放送されている番組のタイトルである。番組MCの今田耕司さんがゲストの輝かしい実績の数々を紹介し、尋ねる。
「○○さんのアナザースカイはどちらでしょう?」
「ロサンゼルスです!」
ゲストが自信に満ちた表情で答える。ロサンゼルスの空、風景に映像が切り替わる。ゲストがその地を巡りながら、これまでどんな人生を歩んできたのかを回想していく。今は輝かしい活躍をしているゲストでも、過去を振り返ってみると多くの苦労や葛藤をしていることが多い。
その苦労や葛藤に打ち勝つきっかけになった地がゲストにとってのアナザースカイだったりする。はたまたゲストにとっての憧れの地がアナザースカイだったりすることもある。
そして、番組の最後にはゲストがお馴染みの言葉を発する。
「ここが私のアナザースカイ!!」
いつかあんな風に番組で取り上げてもらって、ここが私のアナザースカイ! と言ってみたいものだと思いながら番組を見ている方がいるかもしれない。私もそう思ったことがある。
しかし、アナザースカイに出演するゲストは輝かしい実績をあげている方ばかり、主に芸能人/有名人だ。彼ら彼女らと比べると、一般人が番組に出ることは難しい。番組に出演できるのは芸能人/有名人に限られるが、アナザースカイは誰にでもあると私は思っている。そして、アナザースカイを見つけるお手伝いをする仕事がこの世の中には存在する。
それは、【キャリアコンサルタント】という職業である。私はキャリアコンサルタントとして相手のアナザースカイを見つけるお手伝いをしている。
キャリアコンサルタントとは、学生、求職者、在職者等を対象に職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門職(国家資格)である。
コンサルタントという言葉のイメージから、なにか小難しいことをしているような印象を持たれるが、実際は相手(クライアント)のキャリアや仕事に対する想いをさまざまな角度からお聴きしていき、アナザースカイを発見するお手伝いをすることだと私は考えている。
キャリアコンサルタントは、職務上知り得た事実、資料、情報について守秘義務を負う。決して漏らしてはならない。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金という非常に重い刑が課される。
そのため、プライバシー保護、相談者や関係者が特定されないように最大限留意しながら事例を紹介する。
ある夏の日、私はとあるクリニックを訪れた。クリニックの代表から、従業員のキャリアコンサルティングを実施して欲しいと私に依頼があったからだ。
相手(クライアント)となるのは、クリニックで長く働いてきた大ベテランの方だった。
「はじめまして、キャリアコンサルタントのOsaです。よろしくおねがいします」
「よろしくおねがいします。社長からキャリアコンサルティングを受けるようにと言われていますが、私は何を準備すればいいのでしょうか?」
ほとんど多くの方がキャリアコンサルティングを受けるのは初めてのことなので、最初は何をやるのかわからないといった不安の表情をのぞかせる。
「キャリアコンサルティングを実施するにあたり、事前にジョブカードというものを作成していただく必要があります。ジョブカードは、キャリアプランシート・職務経歴シート・職業能力の証明と主に3つのシートで構成されています。○○さんのこれまでのお仕事の経験を棚卸ししていただき、将来について今考えていることで構いませんのでご記入いただけますでしょうか。こちらを面談当日お持ちください」
より良いキャリアコンサルティングを実施するには、クライアントに自分自身と向き合っていただく必要がある。
面談当日はクライアントが持参するジョブカードをもとにキャリアコンサルティングを実施する。あらためてお伝えするが、キャリアコンサルティングは相手のアナザースカイを発見するお手伝いをすることである。
「○○さんがこれまでご経験されてきたお仕事について詳しくお聴かせいただけますか?」
「その時、どのような役割を期待されていましたか?」
「そのお仕事を通じてどのような能力や経験が得られたとお感じになっていますか?」
私はジョブカードを拝見しながら、様々な質問を通してクライアントの話を引き出し傾聴する。主役はクライアントであり、私の頭の中はクライアントとともに歩む。テレビ番組アナザースカイでゲストとめぐる数々の映像のように。
ジョブカードにはクライアントがこれまで経験してきた様々な仕事が書かれている。ただ多くの場合、なぜその仕事に就いたのかという点については記載がない。どうしてその仕事を選択したのか、そこに至るストーリーの中に相手の価値観が潜んでいることが多い。
「○○さんはこれまで患者様に寄り添いながら、より良い生活を送ってもらい満足いただけるように、日々様々な工夫をしながらお仕事をされてきたのですね。○○さんはお仕事に対して情熱をお持ちですが、この職業に就こうと思ったきっかけや理由についてお教えいただけますでしょうか?」
「実は私、学生の時に大きな事故に遭い入院したことがありまして・・・・・・
(守秘義務及びプライバシー保護の観点で残念ながらこれ以上は記載できない)」
「それはとても辛いご経験でしたね。でもその時のことがあったからこそ、患者様の痛みを自分ごととして感じることができ、今のお仕事に情熱を持って取り組まれているのですね!」
「はい^^ そうなんです。」
「○○さんは今後5年後、10年後、どういう仕事をしていきたいとお考えでしょうか。もしよろしければお聞かせいただけますか?」
「実は・・・・・・」
と言って、将来の夢、やりたいこと、そのために今何に取り組んでいるかを熱く語り始めた。
「それがアナタのアナザースカイ!」 私は心の中で強く呟いた。
相手の過去、現在、未来について、様々な角度から相手の話を引き出し傾聴していく。そうしていくうちに相手の大切にしている価値観が見えてくる。それは、普段は自分一人では意識しないことであることが多く、キャリアコンサルタントが聴き役になることで相手の頭の中が整理されていき、自分の価値観に気付く。
人生を大きく変えるきっかけになった出来事、将来の夢やあこがれ、これこそがキャリアコンサルティングにおけるアナザースカイだと私は考える。
アナタがもし自分のキャリアで悩んだ時には、一人で抱え込まずに、キャリアコンサルタントに話をしてみてアナザースカイを一緒に探してみることをお勧めする。
テレビ番組では、「夢の数だけ空がある」と謳っているが、私は言いたい。
「人の数だけキャリアがある。それがアナタのアナザースカイ!」
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