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メディアグランプリ

何度怒られても理解できなかった上司の真意


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:庄島圭一(ライティングゼミ・日曜コース)
 
 
こんなに楽しい仕事だとは思わなかった。人から人へつないでいく仕事そのものじゃないか。
今、1時間の昼休みに書いている(昼休みといても時刻は19:45なのだが)。
 
僕は今、物流倉庫での商品仕分け業務を行っている。
 
昨日、一人で、180種類、15,000商品を仕分けた。昨日出社したのは14時、この時には台車が1台しかなく、とてもすぐに仕分けを開始できる状況ではなかった。台車を用意し、仕分け開始は14:40。通常は18時から60分の昼休みをとるのだが、前半は全く体が動かなかった。昼休みをいつもより早めにとり、後半の作業が終わったのは22:10頃。その後台車を並び替え、通し番号を書いた紙を貼り、機材を片付け、、、全ての業務が終了したのは23:00だった。
 
22時を過ぎるとトラックドライバーさんが積荷を取りに作業場に来る。トラックドライバーさんに会ったのは初めてではないが、昨日は1人だったこともあり、現場にいることができたので、少しだけドライバーさんに話しかけた。
 
「いつもお疲れ様です。ちゃんと積めていますでしょうか?ここが下手、とか、ここに注意してほしい、とか、あったら教えてほしいんですが。」
「いやいや、ある程度はしょうがないですよ。どうしてもというときは自分で積み替えて持っていきますので。」
「そうなんですね。お手数をおかけしてすみません。どういったところに気を付けて積むべきでしょうか?」
「いつも気にするのは、4個パックヨーグルトの上に角が当たらないかどうか、ですね。僕らがトラックで輸送する際中は、細かな揺れがつきものなので。ちょっとした角でも簡単に破れるくらいとても弱いんですよ。」
「そうなんですね、ありがとうございます」
 
初めてお話しさせていただくのに、とても朗らかな笑顔で返してくださった。
 
「そうそう、ちょうどこういうのですね。積荷がずれて落ちた時どうなるかとか……」
と言いながら積荷を見て、積み替えを始めた。僕は初めて、目の前で積み替え作業をしているドライバーさんを見た。結局昨日はヨーグルトだけではなく、箱のサイズなどもバラバラで、うまく積めていなかったようだった。そのためドライバーさんは、僕の目の前で3度積み替えを行っていた。たった今まで、僕が積んでいた積荷そのものを、だ。
 
大変申し訳なく感じた。ドライバーさんの積荷積み替えは20分程度だっただろうか。貴重な時間をいただいてしまった。最初からきれいに積むことができていればこんなことにはならなかっただろうに。そんなことを考えたが、同時に積み替えて綺麗に積まれた積荷を見て感動を覚えた。流石だな、と感じるくらい安定しているのが素人目にもうかがえた。
 
「お疲れさまでした」
 
と言って積荷を持って出て行くドライバーさんの背中に、これまで仕事のゴールを勘違いしていたことに気づかされた。
 
物流の仕事といっても、川上から川下までたくさんあるが、一番大切なことは「人から人へ、ものを動かしていく仕事」だということである。誰かが作業場で僕の目の前に商品を運んでくる。そしてその商品を僕が仕分け、各店舗ごとにドライバーさんがトラックに積み、届けてくれる。届いた商品は店員さんの手によって陳列され、お客さんの手に渡り、はじめて消費される。これまで私は「物流とはものを扱う仕事である」という感覚で仕事をしていたから、段差が多くできていて、商品が揺れるような状況でも気にならなかったり、できたスペースを無理やり埋めようとして箱の商品を立てて積んだりしていた。
 
確かに、「積む」という、自分で完結させる作業であればそれでもいいのかもしれない。しかし、上司には毎日のように怒られていた。本当に、息をするように怒られていた。たまにあまりにも理不尽だと思うことも確かにあるが、なぜ怒っているのか、ということを考えると、今ならわかる気がした。やはり上司は「次の人に渡すために仕事をしている」からなのだ。次の人に渡すとなると、どんな状態が望ましいだろうか。どう積んでいればドライバーさんは安心して運転できるだろうか。どう積めば商品は無事にお客様の手元に届くだろうか。そうやって、「次の人に渡す」ことを意識して目の前の積荷・台車と向き合っているのだ。だから、積むことが目的の僕の仕事は雑だし商品を大切にできていない。ドライバーさんが積み替えなければならないほど、自己満足の積み方になってしまっていた。上司に怒られる内容と、ドライバーさんの言葉は、完全に一致していた。いくら上司に言われてもわからなかったことが、昨日ドライバーさんの積み替えを見て理解できた気がした。
 
物流って面白い。1か月で何もわかるはずがないが、今日の仕事は上司も上機嫌だったしとても楽しく終わることができた。昨日23時までかかった業務が、19:00に終わるなんて思わなかった。
 
今日の仕事もあと2時間半程度。
今日が終わると、この仕事ができるのもあと4日。まだまだ知らない気づきがたくさんありそうだ。
 
 
 
 
***
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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