頑張っているママへ「パートタイムママでいい」という提案
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記事:高田 麻由(ライティング・ゼミ平日コース)
「パートタイムママでいいんだからね」
出産前、元職場の上司が私に助言してくれた言葉である。
この言葉を聞いた時は「ふーん。なるほどね」くらいにしか思っていなかった。しかしながら7月に第一子となる長女を出産してから約4ヶ月、この言葉を思い出しては、ありがたさをひしひしと感じる日々である。
この言葉を知らなかったら、私は産後うつやノイローゼになっていたかもしれない。
「パートタイムママ」
聞きなれない言葉だと思う。「パートをしているママ」という意味ではない。どういうことかというと「パートタイムのようにママをするという考え方、あり方」である。つまり、「ママ」も、仕事(役割)の一つであり、「わたしのすべてではない」ということだ。おっぱいをあげている時は「ママ」であっても、子供が寝たら「わたし」に戻って好きなことをしていい。時には、おっぱいをあげるのだって、寝かしつけるのだって「今日はもうママの時間は終了しました」と、誰かにお願いしてもいい。24時間全部を「ママ」しなくていいのだ。
子供が生まれると、女性は特に「わたし」という存在のすべてが「この子のママ」になり、24時間すべての時間を「子供に注がなくてはいけない、いや注ぎたい」と思ってしまう傾向が強いと思う。ものすごく分かる。それはとても素晴らしいことだと思うが、昼も夜もなく数時間置きの授乳やオムツ替え、抱っこ、寝かしつけ……の毎日をこの心持ちで過ごしていると、ものすごく辛くなる日がやってくる。
私自身がそうだった。「パートタイムママ」という言葉は、子供が生まれてから、しばらくすっかり忘れていた。特に娘は、うまくおっぱいを飲めず、なかなか寝ない上に、物音がするとすぐに目を覚ましてしまう子だったため、むせ返って泣く娘をあやしながらなんとか飲ませる授乳時間は幸せというよりは戦いの時間、娘が寝ていても常にヒヤヒヤしながら毎日を過ごしていた。最初の二ヶ月は、娘を心から可愛い、と思えたことはなかったかもしれない。両親がサポートしていてくれたにも関わらず、常になにかの強迫観念のようなものに追われて過ごしていた。
そんなある日の夜。娘の隣で横になった時「またすぐに起きなくちゃいけない。なんで私だけこんなことしなくちゃいけないんだろう」とマイナスな思考で眠りにつく自分に気づいた。
その時、ふと「パートタイムママ」この言葉を思い出した。そして「そうか! これは仕事だ。ならばやってやろうじゃないか」と、妙に納得して腹がくくれたのだった。「よし、起きるなら起きてみろ。どーんと、おっぱいをあげてやろう! まずは、寝よう!」と。なぜだか久々にぐっすりと眠りにつくことができた。一時間後に起きて授乳だったのだが、すがすがしく迎えることができた。
その日から、「パートタイムママ」を意識して過ごすようになった。自分の体が疲れている時は、ママをお休みして両親に子供を頼んで自分は寝るようにした。自分のやりたいことができず時間を取られてしまう……と、感じてしまうこともあった子供と過ごす時間も「これが仕事だったら、このぐらいやるよね!」と仕事と考えたらとっても楽になり、いかに高いクオリティで満足感を提供できるか、と考えると、むしろ楽しくなった。
「パートタイムママでいい」という言葉には3つの効果があると感じている。一つ目が、「いつでもママを降りることができる」ということ。子供のことを考えず、自分だけの時間を持つことに罪悪感を持たなくていいのだと思えるだけで本当に心が軽くなる。
二つ目が、「ママに集中することができる」いうこと。いつでも降りられると思えば、「ママ」の時は、目一杯ママをやろう! という前向きな気持ちが湧いてきて、子供との時間を楽しめる。
最後の三つ目が最大の効果だ。それは、「ママ(である自分)に誇りをもつことができる」ということ。家事や子供と過ごす時間も立派な仕事だ、と思えると、今日1日をやりきった自分に誇りをもつことができた。
そんな風に接してきた娘も、もうすぐ4ヶ月。あやすと笑い返してくれるようになり、夜もぐっすり眠ってくれる。今はすっかり可愛くて仕方がない。「パートタイムママ」の感覚はだいぶ薄れてきた。
でも、時折、私は「パートタイムママ」を思い出して、少し楽をしたり、自分を褒めたりしている。そして、子供を抱っこしながら、この先の自分の人生プランやキャリアを考えている。この言葉のおかげで、自分の様々な可能性に気づき、この先もいろいろな挑戦ができそうな気がしている。
「頑張っているね。頑張りすぎないでね。パートタイムママでいいんだよ……」
この言葉を、世の中の頑張っているママ達にそっと伝えたい。
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