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電車に乗って、出かけよう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:一色夏菜子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「転職はとりあえずX年働いてから」
「転職はX回までにしておきましょう」
「あまり転職回数が多いと、良い印象ではありません」
 
などなど、転職に関する「べき」「べからず」はたくさんある。
 
最近では
 
「転職を考えてる人のX人に1人は、転職せずに現職に留まった方がいい」
 
なんていう人もいて、何が正解なのかよくわからないよ! という話を、20代の子と話す機会があった。
 
でも、大学卒業後に新卒入社した東証第一部上場の大企業を半年で辞めて、その後10年間でXX回転職して、今はそれなりに満足いく職場で充実した毎日を送っている30代後半の私は、思う。
 
転職は、電車の乗換えと同じだ。
 
そう考えると、世間で言われる「べき」「べからず」がいかに的外れかがわかる。
 
どれくらいの期間乗ってから乗り換えるべきだとか、乗換えは2回までにしろとか、乗換回数が多いと印象が悪くなるとか、そんなの全部「どこに行きたいか」によって決まるもので、他人に良い悪い言われる筋合いなんてない。
 
仕事を「一生住む家」のように捉えるなら、そりゃまあ、1箇所の場所に固定したほうが良いんだろう。そういう考え方をする人もいるけれど、それができる人はある意味で特殊な人なのだと、私は思う。
 
言い換えれば、それは「ひとつの家に一生住みたいですか?」という問いにYESと答えられるか、そして「その家が建っている土地は、地震や津波や台風があってもビクともしない強靭なものなんですか?」という話だ。ふたつの条件を満たせる稀有なひとは、その幸せを大切にしたほうがいいだろう。
 
でも始めに選んだ仕事がしっくりこなくて、メンタル病んじゃいそうだった私にとっては、ひとつひとつの仕事は電車のようなもので、働く私たちの旅を支えてくれる存在で、私たちは電車を使って行きたい場所にたどり着くための(または行きたい場所を探しながら)旅を続けている、必要な時は電車を乗換えたほうがいい……と考える方が、しっくりくる。
 
そういうふうに考えてみると、昔は、電車の乗換えが今よりもずっと大変だったのだということに気がつく。スマートフォンがある今は、電車の乗換検索も一瞬でできる。どの路線のどこ行きの電車が何時にこの駅を出るのか、1分もあれば確認できる。
 
しかしスマホやインターネットが普及していなかった時代は、目的地に行くためにどの電車に乗り換える必要があるかを路線図で確認して、各路線の時刻表を入手して……と、ひとつひとつを紙ベースで確認する必要があった。1分どころか10分、いや1日あっても確認できない情報もあった。遠い場所の時刻表を入手するためには、1週間単位で時間がかかることもあった。
 
その時代には、電車の乗換えは大変なもので不要な乗換えはできるだけ避けるべき、できれば乗換えなしでたどり着ける場所を目的にするべき、乗換えが必要なら十分に準備をして余裕をもつべき……とたくさんの「べき」があったし、その「べき」は合理的なものだった。
 
今年70歳になる私の両親が住む実家には、今でも紙の時刻表が置いてある。彼らが遠出するときは、いまでも紙の路線図と時刻表をめくって予定を立てる。彼らと話していると、旅のスタイルも電車の乗り方も、数十年で大きく変わったということがわかる。
 
しかし、時代は変わった。昔のやり方が必ずしも合理的とは限らない。
 
しかし、時代は変わっても、人間はそう簡単に変わるものではない。
 
スマホで電車の乗換検索ができるとわかっていても「電車の乗換は苦手」というひともいるし、「駅が大きすぎて迷うから、新宿駅での乗換えは避けたい」というひともいる。「そもそも遠出は嫌い」という人もいる。テクノロジーや常識が発達して、選べる選択肢は増えた。しかし、旅が好きな人もいれば、1箇所にとどまるのが好きな人もいる。それは自然なことだ。
 
みんなが同じ生き方をする必要はない。
 
だから私は、仕事について悩む人がいたら、伝えたい。仕事や転職についての「べき」「べからず」を考えても、あまり意味はない。それよりも「自分がどんな旅を好む人間なのか?」「そもそも旅が好きな人間なのか?」を考えて、自分にあった生き方を探すほうがいいよと。
 
1箇所にとどまるのが好きなひとは、無理をして乗り換える必要はない。でも今の電車の目的地がしっくりこないなら、乗り換え先を探してみた方がいいだろう。しかし適当に乗り換えてしまうと、その電車はあなたが「行きたくない」と思っていた場所に行く便かもしれないし、今まで来た道を戻るだけの便かもしれない。飛び乗る前に、行き先の確認は忘れずにしよう。
 
最終目的地がまだ決まっていないこともあるだろう、なにせ人生は長いのだから。でも「あっちには行きたくない」とか「あちら方向がいいな」とか、漠然とした思いはあるんじゃないかな。
 
できるだけ自分が行きたい方向へ、柔軟に旅を続けていれば、きっと自分が見たい風景を見られるようになる。そんなふうに自然体に捉えられるようになれば、うまく電車を活用して、行きたい場所に近づくことができるはず。
 
せっかくの旅路だもの。仕事という電車を楽しんで、できるだけ遠くに行ってみよう。
 
 
 
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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