夢なんて叶わない?知ってるよ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:岩井聡史(ライティング・ゼミ日曜コース)
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「ほんとにフリーランスになれると思ってるの? なれるのはごく一部の人だけだよ」
ほら、きた。もうこうやって言われることには慣れてるし、想定済みだ。両親にも、兄にも、そして友達にも言われ続けた。
僕だって、フリーランスで絶対に生きていける、なんて確信があってやってるわけじゃない。
新入社員として入った会社を一年で辞めた。理由は、ごくありきたりな上司との関係だ。ミスをして、怒られて、萎縮してミスをして、また怒られる。新入社員はみな通る道なのだろう。
でも僕は毎日「死ね」と言われることに慣れるほどのメンタルを持ち合わせていなかった。それを無視する大胆さもなかった。
幸い公立大学を出ていたこともあって、転職はすんなりと出来た。僕は広告代理店の営業になった。理由は、本好きな性格から文章を書くことに興味が湧き、そしてコピーライティングに興味が湧いたことだ。我ながら、何ともつながりの薄い動機である。しかし当時はとにかく間をあけずに転職せねばと、焦っていた。
ところがだ。
まさかここまで自分が営業をできないとは。毎朝、始業時間の2時間前にきて資料の作成や先輩にロープレもしてもらった。そして半年間苦しみに苦しんだ。市場的には需要があるのに、全く売れない。結局、僕は半年間一件も売れないという、その会社で誰も成し遂げていない、負の歴史を刻むこととなった。
前の会社のこともあって、自分は人とのコミュニケーションも仕事のスキルも全くない人間だと心の底から思った。人間として、自分は明らかに他の人とは劣等種なんだと思った。
転職した身である事実もなおさら僕を追い詰めた。転職が当たり前になってきている世の中とはいえ、流石に新卒で入社をしてから2年で2回転職。明らかに世間的な評判を考えると悪い。
しかし結局、僕は会社を辞めた。コミュニケーションも仕事もできない自分を責め続ける日々で疲れ果てていた。
そしてフリーランスのライターになることにした。なぜライターかというと、書くことが面白かったし、新しい知識がついていく感覚も好きだったのだ。会社で働いている間、僕は寝る前の2時間をwebライティングにあてていた。
なにより普通の会社で働くことは、もう難しいと僕自身がひしひしと感じていたこともある。
フリーランスになると友達に言ったとき、お前の考えは甘いし、夢よりもっと現実と向き合え、と言われた
両親や兄には、フリーランスに簡単になれると思うな、とこれまた釘を刺された。
至極もっともだ。会社を2回ドロップアウトした人間が、会社の看板に頼らず、自分のスキルのみで生きていこうというのだから。友達や家族には、遂に僕が会社だけでなく、現実から逃げようとしているように見えたことだろう。
クラウドソーシングや別のフリーランスの人に仕事を回してもらいながらの、フリーランス4ヵ月目。僕は何とかライティングで、最低限の生活費を払えるだけの収入を得ていた。大学の同期の年収や、それに大学生の頃のアルバイト代よりも少ないけど。しかし何とか自分の生活を維持できる稼ぎを得たのは、僕の中で自信となった。
ただ周りの声はやまなかった。まだ僕が現実から目をそらし、夢を追っている人間に見えるみたいだ。もはや皆が僕に抱いている感情は呆れに近いのかもしれない。周りから見て、僕は「夢は必ず叶うんだ!」と盲目的に信じているようなイタイ奴なのかもしれない。
そうやって言葉や態度で暗に示されているなか、僕は心の中でひそかに反論していた。
「知ってるよ」と。
僕だって自分の力量のなさやいかに仕事ができないのかはこの2年で嫌というほど学んだ。フリーランスがいかに仕事が安定しないのかも学んだ。そして、何の実績や専門性もない人間が、いかに案件を受注できないのかを学んだ。
毎日が不安だ。なんとかギリギリの量で仕事を埋め、とにかく自分のスキルも収入も上げていく。もしかしたら、仕事がなくなるかもしれない。そもそもwebライティングに未来があるのかもわからない。
でも僕はこの道を突っ走ると決めたのだ。日々の生活費をいかに削減して、いかに収入を増やすのか。映画を観るという趣味や友達との飲み会の時間もなくした。それでも全く構わなかった。
もしかしたら、フリーランスでは全く収入が伸びずにいつか会社に戻るかもしれない。いつかフリーランスでありながら、会社員と同等、それ以上の給料を得てやるという夢が覚めるのかもしれない。
ただ一つだけ、周囲の人にこそっと反論しておきたい。
僕は、夢が絶対に叶うと信じて頑張っているわけではない。毎日、叶わないかもという不安と闘いながら、それでも叶うにはどうしたら良いのか必死に考えている。
きっと夢を追っている人は、皆そうなのだと思う。夢が叶わないかも、いつか覚めるのかも、という時限爆弾のような不安を抱えながら、日々夢を追っている。なんなら夢は叶うと信じ込まないと、心も身体も止まってしまいそうな危うい自分と向き合いながら。
夢から目覚めさせることも優しさなのかもしれない。ただ、そんな不安も心に抱えていることだけは知っておいてほしい。
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