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メディアグランプリ

「好き」の暴走はイタい女をつくる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西村幸知(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
「昨日のこと思い出して、仕事集中できない苦笑」
 
その言葉を送った瞬間、20代半ばのわたしはやってしまったとわかった。
彼からの返信はもうないだろう。
むしろこのメッセージで、彼との先はなくなった。
そんな現実を受け入れたくなくて、わたしは彼とのこれまでのメッセージを削除した。
 
出会いは飲みの席。彼から話しかけてくれた。
話しているうちに仲良くなって、2人で会うことになった。
年上で、スタイル、ファッションも抜群。コミュニケーションもやさしくてスマート。
経理をやりながら、投資もしているという彼は、わたしにとってよだれが出るほどの「イイ男」だった。
 
「こんどうちで餃子パーティーしない? 」
「楽しそうだし、おいしそう。いいですね」
 
そんな約束を最初のデートの最後にとりつけ、いよいよ餃子おうちデートに。
餃子を食べてまったりしていると、
「そろそろ寝る?」と彼。
手を差し伸べて、ベッドルームへ―。
見事に夜を共にした。
 
わたしは、「やった」と思った。
よだれがでるほどの「イイ男」に抱かれ、相性もいい。
女としては本望な展開に、わたしは完璧酔っていた。
「その気がなかったら、することもしないはず。このままいけば絶対連絡が彼から来る」と疑わなかった。
 
しかし、次の日になっても彼からの連絡はなかった。
今までなら数時間後に男性から連絡が来ていた。
いつもと違う状況にかき乱されたわたしは、あのメッセージを送ってしまったのだ……。
 
焦りに任せてあのメッセージを送ったことを後悔しながらも、それ以前にそもそも何がいけなかったのか…全く見当がつかない。
ありとあらゆるモテテクを惜しみなく使ったのに、なぜ… ?
どうしても納得ができず、後日、気心が知れた男友達に相談することにした。
 
「会う時はここぞという服装とメイクで臨んだし、聞き手に徹して、彼の仕事や経験のことを褒めたし、がっついてると思われないように、自分からは会いたいとか言わなかったし……なのに、全然だめだった……泣! 」
「おまえ、それさ、完璧に媚びてんじゃん。なんでそんないい子ぶってるわけ? だいたい、いい子ぶってる時点で思いっきり立場が下からじゃん 」
「え、だって、めっちゃタイプだし…自分よりもいろんな面で勝ってるし…。そうでもしないとわたしなんか…」
「それだよ。おまえさー、『わたしなんか』とか言ってるから下からになるんじゃん。逆だったらどうよ? 『俺なんか』って言ってる自信ない男、どう? 魅力的か? 」
 
そこまで言われて、ようやく気づいた。
わたしは「イイ男」に対して、完璧に「イタい女」だったのだ。
 
自信がない相手なら、そもそも「イイ男」の部類にすら入っていない。
むしろ仕事も頑張って、プライベートも充実してるー。
そう自信があるから、「イイ男」なのだ。
それは逆もしかり。
 
いかにも「めんどくさい女の相談をうけた」と呆れている男友達の冷たい視線を浴びながら、これまでのやり取りを脳内高速リプレイしていた。
思えば、いかに気に入ってもらうことしか考えてなかった。そのくせ、どこか「こんだけやったんだから、相手がその気になって当然」という幻想を抱いていた。やり方は媚びてるくせに、スタンスは上からー。矛盾した自信がそこにあった。そして、それが上手くいかないと、「なんで? どうして? 」と上手くいかないことに執着していた。
 
最悪だ……。
思い出せば思い出すほどわたしは「イタい女」でしかなかった。
 
考えれば、彼に下にでなきゃいけない要素などない。
職場では能力をちゃんと認めてもらえるし、プライベートでは趣味に没頭したり、友人もいる。家族の仲はいいほうだし、自分に合ったファッションスタイルも心得ている。
自信を持つには十分ではないか、わたしは自立した立派な大人な女性だ。
なのに、なぜ、そのことを忘れてしまったのだろう……。
 
言葉につまっていると彼が
「ってかさ、『イイ男』っていうけどさ、それってすごいタイプだったってことだろ?その『タイプ』っていう好きって感情に飲まれたんだよ」とたたみかけた。
 
何から何まで見透かされたその言葉に、わたしはただ頷くしかなかった。
相手への純粋な感情なはずなのに、いつしかその感情に支配されて自分が「消えて」いた。
いや、むしろ自分を「消して」いたのだ。がんばって自分を消したのに、相手から期待通りの反応がないことで、消した自分が出てきて、わめていたのだ。
「わたし、あなたのために消えたのに」と。
頼んだわけでもないのに、相手にしてみれば迷惑極まりない話だ。まして相手が「好き」とも言ってないのに。
 
「好き」という感情は強い。それは関係を強めるものにもなるが、時に自分を失わせる。
「恋は盲目」とは、相手が見えていないことではないと悟った。
むしろ、自分の姿が見えなくなることで、相手を見失うことなのだと。
 
その後も「イイ男」の彼から、新しくメッセージが来ることはなかった。でもそれでよかったのだ。どんなに「好き」でも、自分を消す必要などどこにもないと学べた。むしろ、好きだからこそ、自分らしくいることが大事なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2019-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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