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ワンオペ育児 母を追い詰めるのは忙しさではない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:神保あゆ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「あんたのせいやからな! こんなに遅くなってしもたやんか!」
月曜日の朝9時30分。
 
朝の通勤、通学が一段落して少し静寂を取り戻した住宅街に金切り声が響き渡る。
 
声を張り上げているのは、私と同じくらいの年齢の女性。
40代半ばであろうか。
もしかしたら、もう少し若いかもしれない。
いや、ずっと若いかもしれない。
 
鬼の形相で怒鳴り散らしているので、年齢がずっと上に見えるだけなのかもしれない。
 
その声の向く先は、その女性の娘である4歳くらいの女の子だ。
 
「ごめんなさいー。お母さん、ごめんなさいー」
 
住宅街に母と娘の悲鳴が広がる。
 
今朝、リビングで仕事をしていると、目と耳に入ってきた光景だ。
 
我が家の近所には保育所、幼稚園、小学校、中学校があり、我が家の前の道路は通学路になっている。
子どもの声というのはありがたいもので、毎日通学している他所のお子さんの声を聞いているだけで、なんだかパワーが出てくる。
ランドセルを揺らして歩く後ろ姿からは生命力を感じる。
 
うちの子たちもあんな時代があったな、と嬉しくなるのだ。
 
そんな毎日の中で、今朝の金切り声は、私の心を「ぎゅっう」と締め付けた。
寝坊したのかもしれない。
朝ご飯をだらだら食べていたのかもしれない。
とにかく、ぐずぐずとしていたのだろう。
 
保育所に登園させる時間が過ぎてしまい、お母さんはイライラのピークが来て、怒鳴り散らしながら自転車の後ろに娘さんを乗せてペダルをこいでいた。
 
お母さんを非難する気持ちにはなれない。
その背景もわからずに非難などできない。
 
それに、その母娘に昔の自分を重ねてしまうのだ。
 
今でこそ「ワンオペ育児」という言葉があり、世の中の共通語になっているが、今から15年ほど前、私の育児がマックス大変だった時代には、そんな小洒落た言葉はなかった。
朝早く夜も遅い主人は、正直日々の子育ての戦力にはならない。
私の実家も主人の実家も遠く、じじばばの力を借りることもできない。
 
5歳の長男と2歳の長女の手を引き、背中には0歳の末娘をおんぶして、寒空の下散歩していた姿は、さながら敗戦後のようだった。
保育所の送迎も、3人分のお昼寝布団を抱え、着替えを持ち、背中に0歳児を背負い、前に5歳と2歳を歩かせる。
雨など降ろうものなら、登園前からもうなんだか泣けてくるのだ。私が泣ける。
 
ココロの余裕もなく、時間の余裕もなく、日々の生活を回すだけで精一杯だった。
 
子どもたちが小学校に上がった頃。
真ん中の娘が算数でつまずいた。
数の概念がわからないのだ。
夫は
「これではダメだ。忙しいと思うけど、勉強みてあげて」
と言う。
宿題につきあった。
進研ゼミもした。
職場に娘が解いた進研ゼミを持って行き、昼休みに○付けをした。
帰宅後、わからないところを教えた。
 
それでも娘はトンチンカンな答えを言うのだ。
はじめは穏やかに教えているのだが、毎日教えるうちにイライラしてきて
「なんでわからないのー!!」
と怒鳴ってしまった。
娘がちゃんと算数を理解しなければ、私が夫に咎められる、と思ってしまったのだ。
 
一度イライラに火がつくと、止められない。
自分の暴走を止められないのだ。
何度も何度も娘に暴言を吐き、ダメ出しをし、娘を追い詰めた。
娘はおびえていた。
 
散々怒鳴り散らした後、はたと我に返り、おびえた娘に謝った。
 
金切り声で娘さんを怒鳴り散らすお母さんを見て。
自分で自分を追い詰めていた過去の自分を思い出した。
自分一人だけが頑張っていると勘違いして、夫からのアドバイスも、私に対する「ダメ出し」という風に勘違いして捉えていた。
被害者意識があった。
 
金切り声のお母さんを追い詰めているものは何なのだろう。
日々の忙しさだけではないような気がした。
 
誰か、お母さんの頑張りを認めてあげられたら。
「いつも子どものことお世話してくれてありがとう」
「送り迎えも手伝ってあげられなくてごめんな」
こんなねぎらいの言葉があれば、お母さんも住宅街で叫ばなくても済んだかもしれない。
 
実は私は、その「金切り声」のお母さんの、穏やかな面も知っている。
 
ある土曜日の午後。
リビングから外を眺めていたら、娘さんを保育所まで迎えに行って、その帰り道の母娘の姿が見えた。
 
「今日、お母さん、会社で褒めてもらえてん。来週からもう1個、する仕事が増えてんよ」
お母さんは嬉しそうに娘に話しかけていた。
「お母さん、良かったな-」
娘さんもなんだか嬉しそうだった。
 
穏やかな時間が流れていた。
ココロにも時間にも余裕があれば、こんなにも穏やかな会話ができているのだ。
 
お母さんが穏やかな気持ちになるには。
お母さんだけのチカラでは無理だ。
 
お母さんの身近な人、家族であったり、会社の仲間であったりが、お母さんの頑張りを認めてあげて、優しい言葉一つかけてあげるだけでいいのだ。
 
それだけでいいのだ。
 
周りは私を認めてくれている、という安心感こそがココロの余裕につながるのだ。
 
もし、奥様にいたわりの言葉をかけてないな、と思われましたら、是非とも今日は言葉に出して伝えてみてほしい。
その一言が、奥様を孤独から救う言葉になるから。
 
そして、ご安心ください。
算数が苦手だった娘は、今では簿記2級を取得するほど数字に強い子に育った。
暴言を吐いたママを許してね。
 
 
 
 
***
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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