テコンドーの型(トゥル)を通してライティングについて考える
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事;verde(ライティング・ゼミ日曜コース)
「肩に力入りすぎ」
「肩に力入れないで」
週一回のテコンドー教室にて、型(トゥル)の練習になると、必ずと言っても良いほど指摘される。
自分ではあまり意識していなかったが、外から見るとやはりわかるらしい。
思い返して見れば、確かに、型を構成する一つ一つの動作が気になって仕方がない。
動作の順番は正しいか。
動きは正確か。型(トゥル)は、相手との攻防パターンを学習するためのものだ。踊りなどではない。
テコンドーのことに限らず、日常のことなどに関する不安に意識が向くと、動きが鈍くなるのが、さすがに自分でもわかる。
まずい、と内心冷や汗をかきながらも、次の動作へ進む。しかし、「まずった!」という思いが錘つきの枷となって、手足が思うように動いてくれない。
それでも次へ、次へ。
師範からは、「最後まで通しでやる」ことを優先するように言われている。失敗した、という思いに囚われている暇はない。
先へ。先へ。
頭ではわかっていても、うまくできない。
そのことにいら立ちながらも、最後の動作へとたどり着く。
「トサン!」「ウォニョ!」などと、今さらった型(トゥル)の名を叫んでから、終了姿勢へ移行する。そこまで到達して、初めて終わる。
そして、師範から直すべき点などについて、コメントを貰う。
「まだ、肩に力が入りすぎている」
そのように言われるときは、頭の中で何か考えてしまっている時が多い。
実際に、大抵このようなコメントが続いてくる。
「次の動作は何だったっけ、とか考えながらやらない」
「実際に戦う時って、頭の中でごちゃごちゃ考えている暇はないよ」
つまりは、一々考えずとも動ける、反射神経で対応できるくらい体に馴染ませるのが理想、というわけである。
天狼院ライティング・ゼミの課題投稿に唸っているうちに、こんな事を思い出していた。
文章を書く事は、この「型(トゥル)」を通しでやることと通じるものがある。時折、そんな事を考えるのだ。
頭の中にごちゃごちゃと「雑念」が入っていると、「型」の動きは鈍くなるし、「文章」も書き進められない。とにかく「終了」地点を目指して、一息に走るしかない。
字数や文体、細かい単語などは、今は考えるなかれ。とにかく先へ。気になる点は、後で全体を通して見直して、チェックすれば良い。
「型(トゥル)」なら動画を録画してもらう手がある。
文章なら、こうして目の前に形としてある物を見れば良い。
……とまあ、開き直れるまでには長くかかるが。
もう一つ、師範から言われたことで印象に残っていることが、
「日本人は失敗を気にしやすい」
「気にしすぎる」のが、在日韓国人の師範にとっては気になるポイントらしい。
確かに、一度失敗してしまうと、そのイメージに囚われて先に進みにくくなる。「また失敗するかも」という雑念が頭の中を転がり、また動きを鈍らせる。
「『たまたま今回はうまくいかなかっただけ』と捉え、『これからやる事』だけに集中する」
「これからやる事」―――それは時に「型(トゥル)」であり、蹴るべきミットであり、そして時には週一回のこのライティング・ゼミの課題投稿である。
私は先週一回目の課題文の投稿ができなかった。
何を書くか、そしてゼミで言われた内容や、「ちゃんとした物を書いて出したい」など様々な思いが体に釣り糸のように絡みついて、思うように動けなかったのだ。
他に「片づけるべき」事があって、そちらに意識が向いていたことも理由として挙げられる。
ちゃんと出そうと決めていたのに。少しでも書く回数を増やすことで、自分を鍛えたかったのに。
締め切りに間に合わなかったことに気づいた後の30分は、頭を抱えて唸っていた。
「しょっぱなから、何をしでかしているんだ、私は!」
先日、ゼミの二回目の講座に出席した時も、その思いは完全に頭から抜けていなかった。
そう、白状すると、この文章を書き始める瞬間も。
私は、また「失敗」を恐れていた。
もしも、また出せなかったら。間に合わなかったら。
ああ、また頭の中に雑念が埃のように舞い始めた。
気づくと同時に、私はワードの新規ファイルを開いていた。
とにかく書こう。今この瞬間、頭の中にあるものを引っ張り出してしまおう。
そうすれば、他に抱えている問題も、片づけやすくなるだろう。
そして、このライティングを通して「雑念」を引っ張り出す習慣を、できるなら体に染み込ませてしまおう。
「型(トゥル)」の練習のように、最後まで書き切ることを目指そう。
それをここに宣言する。
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