良質なノートはホットラインだ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:晏藤滉子(7月開講ライティング・ゼミ通信限定コース)
ずっと私は「書くこと」が苦手だった。
正確にいうと「自分の想いを書き記す」ことが子供の頃から苦手だった。
夏休みの読書感想文だって悪戦苦闘し、「あらすじ95%」の読書感想文を悪びれもなく提出したものだ。当然先生からの赤ペンでは「貴方は、この物語からどう感じたのですか?」との指摘を受けるのだが、学生時代は結局そこから抜け出すことはなかった。
それから数十年経ち、その苦手意識は(多分)払拭されていると思う。多分と表現するのは、特定の相手、環境の下に限ったことだから。
大人になると、自分の想いを書いて伝えるという機会は滅法少なくなる。特に「本音」を外に出す行為は大人になるほどしなくなる。大人としてのTPOが求められるのだ。
今の私はその点に関しては、子供の頃よりずっと自由になったと思う。
それは「良質なノート」との出会いから。それだけなのだ。
心の内を表現することと良質なノート。その繋がりに気づいたのは5年程前のこと。当時参加したワークショップで手に入れた情報の中のひとつだった。
「本当の自分との対話は質の高いフィールドで行うことが重要」
正直、当時はその情報の意図が分かるような、分からないような・・・・・・。
本当の自分とは、「ありのままの自分」だ。本音で生きている自分。
子供の頃から生きていく上での知恵を身に付け、「賢い生き方」を鎧のように身に付け生きている。鎧までいかなくても立場に応じて仮面をつけ外しする行為は無意識にしているものだ。それはそれで自分の心身を守る為だけれど、「本当の自分」は満足しない。何故なら上手く生きていく為の鎧や仮面なんて真っ平御免なのだ。
「本当の自分」と繋がれるのか?
怪しい話ではないのか?
私は興味半分、いわば検証するような意味合いでノートとの付き合いが始まった。
心の内側を表現することに必要なものは良質なノート。
分かり易く言うと「値段の高いノート」だ。何気に俗っぽくない? と感じたものだが、「なるほど」と感心する理由は確かに存在する。
その理由は後述するが、私が最初に選んだのはドイツのノートブランドであるロイヒトトゥルムA5サイズ。値段は張るが紙の質がとてもよく、随所に細やかな配慮が感じられる一目惚れしたノートだ。もちろん高級感もある。
「本当の自分」と対話する場は整った。
人に見せられないような心の叫び、不安や焦り、過去の痛みまで。
「今ここに居る自分」と「本当の自分」との接点がノートであり、
両者を繋ぐホットラインのようなものだった。
文章だったり、手紙のようだったり、キーワードだったり書き方はその時次第。でも、本音をオブラートに包むことなく真っすぐ伝えることは一貫してきた。ホットラインでの「本音語り」は、ガチガチの鎧を緩めていくことに役立ったのかもしれない。この場での見せかけの社交辞令は不要なのだ。
誰に強いられたことでもないのに夢中で書く毎日。まるで、恋人に話しかけるような時もあり。それはいつの間にか眠る前の日課となっていた。
「本当の自分」とのホットラインも5年目に入った頃、当時とは大きな変化を感じる事が多くなった。
当初、私の影の部分や痛みを訴えるような苦しい内容が多かったものだ。それが今では未来へのアイデアや夢など穏やかな部分も増えてきた。とは言っても無理やりポジティブということでもない。起こった出来事を自分の思い込み抜きに受け止めることが出来るようになったからかもしれない。どんな自分も受け止めて貰えると感じる安心感も穏やかさに繋がるのだろう。そして、自分の想いをストレートに表現することは、心を整えることに役立ったと実感する。また、書くことから「何故だか繰り返してしまうパターン」に気づいたことは面白い副産物だった。
そして、肝心な「良質なノート」の存在意義。
「本当の自分との対話」は、質の高いフィールドで行うことがネックとなる。
「自分の内面をさらけ出すノート」がそのフィールドとなるのだ。
誰に見せる事もなく、今までひた隠してきた本当の自分の声を拾う場所、表現する場所だ。それは「影」「心の声」「トラウマ」「本当に欲しいもの」など個人的なトップシークレット。と同時に繊細な扱いが必要だ。
今まで心の奥底に沈ませていた「本当の自分」と向き合う場ならば
雑然とした安易な場ではなく「尊厳が守られる。相応しい環境」が理想的。
大事な接見なればこそ「其れなりの場所」が相応しい。
例えば本命とのデートならば「とっておきの場所」を当然選ぶはずだ。
だからこそ、「質の高いノート」は会見の場として適している。
確かに良質なノートには、いい加減な気持ちで殴り書きが出来ないのだ。
そして個人的な意見として、ノートは大きい方が良いと感じている。
A5サイズが暫く続き、ふとしたタイミングでA4サイズに切り替えたとき
その違いには目を見張るものがあった。とても意識が拡大するような伸びやかさ自由さを実感したのだ。これは記入している最中、無意識のうちに「枠」を設定していたのかもしれない。ノートのサイズだけでこんなに違うものかと新しい発見だった。
良質なノートは「本当の自分」とのホットラインだ。
現実には一方通行の発信に過ぎない。でも、自分の想いや感情を文字によって具現化する時「本当の自分の姿」が朧気ながら見えてくるようだ。
そして身に付けていた鎧や仮面を外す時間、私は確かに自由なのだ。
ノートで繋がったホットラインは、「今の自分」と「本当の自分」との作戦会議の場なのかもしれない。「満ち足りた豊かな人生」を創造するために。
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