経営改革は経営”会議”改革から
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記事:やまぐちりょう(ライティング・ゼミ通信限定コース)
「経営改革の第一歩は、経営”会議”改革です」
私がまだ新米コンサルタントだった入社1年目の冬のことだ。
ある大企業の経営陣を前にして、
入社25年目のプロジェクトリーダーの先輩はこう言った。
経営会議は、一般的に社内の最高意思決定機関だ。
社内で開催される数多くの会議を考えた場合、
ピラミッドの頂点に位置するのが経営会議、ということになる。
普通、企業における多くの意思決定はピラミッドを登っていく形で行われる。
まずは担当課で素案が練られ、会議で議論・検討がなされる。
課長の承認が下りれば、次は部の会議で議論・検討。
部長の承認が下りれば、次は担当役員が確認し、
そして最後は経営会議で意思決定がなされる。
ピラミッドを登っていく構造は、スポーツ選手がステップアップしていくのに近い。
例えばサッカーの強豪高校の部活動をイメージしていただくと良いだろう。
3学年で100人近い部員が所属するような強豪校では、
Aチームと呼ばれる1軍の10数名を頂点に、
Bチーム、Cチームと実力に応じて選手が振り分けられる。
実力やその時々のコンディションに応じて、選手は各チームの間を行ったり来たりする。
1年生のほとんどは入部当初Cチームだ。そこで力をつけ、活躍すれば、
Bチーム、Aチームとステップアップし、レギュラーのポジションを獲得し、公式戦に出場できる。
新入部員として入部した1年生は、レギュラーポジションを獲得するために、
どんな力をつければ良いのだろう?
香川選手のようにテクニックを磨くべきだろうか?
あるいは長友選手のように試合中走り続けるスタミナが必要だろうか?
本田選手のように当たり負けしない強靭なフィジカルが必要だろうか?
答えは、「1軍の方針次第」だ。
1軍の監督が重視しているスキルを身につけなければ、どれだけ他のスキルに長けていても、
レギュラーのポジションを獲得するのは難しいだろう。
「そんなのは当たり前だ!」
と言う声が聞こえてきそうだが、これは企業経営でも同じだ。
企業の役員の方と話をしていると、
「うちの会社は本当に非効率なことが多くて。毎回の社内会議には膨大な資料が作られていて、資料作成に時間がかかってしまっているんです……」
なんてことを言われることがある。
社員の方に話を聞いてみると、1時間の打合せに数十ページの資料が準備され、
1時間の予定の会議が、30分、1時間延長することも珍しくないという。
なぜこんなことが起こるのだろう?
その原因は企業における会議のピラミッドの頂点に位置する、”経営会議”にある場合が多い。
最終的な意思決定の場となる、経営会議に参加する役員が、
詳細な情報を求めていると、資料は膨大にならざるを得ない。
その膨大な資料は、経営会議にぶら下がる部長会議、
さらにその下の課長会議
……
と、あらゆる会議でも準備する必要が生じる。
一つの意思決定をするために膨大な資料を作ることになり、
非効率が生じるのだ。
こんな時、我々が提案するのは、
「経営会議は1つの議題に対して、資料はA4裏表1枚までにしましょう」
といったものだ。
経営会議がA4裏表1枚の資料で行われるようになると、
経営会議にぶら下がるあらゆる会議が、ポイントを絞った端的な資料で運営されることになる。
むやみやたらに資料を作る必要がなくなり、企業運営は効率化される。
これが、
「経営改革の第一歩は、経営”会議”改革」
の意味するところだ。
実際には、会議だけに通じる話ではない。
人材登用でも同じことが言える。
近年よく聞く声は、
「うちには積極的に自らアイデアを出して、チャレンジしてくれる社員が少なくて……」
といったものだ。
こういった企業では、着実に成果をあげてきた方々が役員に就任されているケースが多い。
この場合、部長への昇進、課長への昇進も、着実に成果をあげることが評価されることになりやすい。
結果として、失費のリスクを冒して積極的にチャレンジするよりも、
目の前の仕事をミスなくこなし、着実に成果をあげる人が増えていく。
「社員がチャレンジする会社」にするためには、役員自身がチャレンジする、積極的にチャレンジしてきた人を役員に登用する取り組みが不可欠だ。
「経営改革の第一歩は、経営”会議”改革」
この言葉を直接的に表現するならば、
「企業が変わるためには、まずは役員が変わらなければならない」、だ。
しかし、この言葉を直接言ってしまえば、あたかも企業の問題の元凶が役員にあるかのように聞こえてしまう。
役員にも受け入れられやすい言葉で言い換えた先輩は、コンサルタントの鑑だと思う。
***
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