メディアグランプリ

ダイエットに必要なのは、驚く後輩である。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ワタナベアツコ(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
母乳ってすごい。
ダイソンもビックリするほどの吸引力で、私が口に入れた養分を全て吸い取り、赤ちゃんに与える。だから、母乳をあげている時は、全然太らない。底無しに食べても、太らない。
 
ミルクとの混合育児だったし、私の母乳は雀の涙ほどしか出てないと思っていた。だから、産後、食べても体重が増えないのは、そういう体になったのだと思っていた。でも、違った。母乳をやめると、私は、ドラゴンボールの魔人ブウみたいになった。柔らかく波打つ下腹、トラックで運ばれるボトルの水のごとく、動くたびにタプタプ揺れる二の腕、大木を思わせる太腿はドラえもんの胴回りくらいあるように見えた。
 
1人目産んだ時に分かったはずなのに。なぜ、食欲の赴くままに食べ続けてしまったのか。母乳をやめても食欲は変わらない。大きくなった胃はすぐには戻らない。年齢が上がると代謝が下がって痩せない。知っていたはずなのに。バカ、バカ、バカ、私のバカ。自分を責めて拳を振り下ろしたところで、肉の塊が、タプンと波打つだけ。母乳をやめてから3ヶ月。富士急ハイランドのジェットコースターのような、目を見張る斜度で、体重は増えた。
 
「痩せなきゃ」。8キロも太ると流石に体が重くなった。子供はまだ小さくて手が掛かる。仕事も復帰したばかり。時間はない。手始めに、お昼の休憩中に、30階のオフィスの裏階段を登ることにした。
 
育休明けに電車通勤を始めただけで筋肉痛になるくらい、だらけきった私の身体。はじめは5階上っただけで、息切れした。昔、ジムに行ったら筋力がなさ過ぎて「60過ぎたら歩けなくなりますよ」って言われたっけ。しかも、2カ所で。まずは、続けることを目標にしよう。私は、徐々に上る階数を増やすことにした。
 
春に始めた階段ダイエット。夏には15階まで上がれるようになった。体重は減らない。けど、増えなくはなった。このまま階数を伸ばせば痩せられるかもしれない。期待が膨らんだ7月のある日、事件は起こった。
 
その日は、20階まで挑戦した。汗がダラダラとしたたり、顔はおでこまで真っ赤になった。春はよかった。裏階段は、人気もなく、ひんやりしていて、下りるだけクールダウンできた。だけど、気温が上がってくると、そうはいかない。裏階段に繋がる鋼板のドアを開けると、もわっとした湿気が顔を触る。階段を上り終えたらお昼を食べなければいけない。休憩は1時間。すでに20分経過している。裏階段を下りたって、クールダウンどころかますます汗が染み出してくるだけだ。業務用エレベータでオフィスまで下りた。ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。息は上がったままだけど仕方ない。そのまま弁当の置いてある休憩室のドアを開けた。すると、4人並んで弁当を食べていた後輩たちが一斉にこちらを見た。
 
「しまった!」
前髪は汗でおでこにベトっと貼りついている。顔は真っ赤のゆでだこ。しかも、真っ昼間のオフィスで、ハァ、ハァと息を上げている。まるで変質者だ。いつもはこの時間誰もいないのに、こんな日に限って4人も。早口で事情を説明する。
私、今、ダイエット中なの。お昼の前に階段で30階まで上がっててね。最近これを日課にしてるの。驚いたよね。変態みたいだよね、ごめんね、邪魔して……。一気にまくしたてた。
 
「すごーーぉーーい!!」
 
黄色い喚声があがった。え? 私??
 
「30階!?」「いつからされてるんですか」「痩せました?」「毎日ですか?」。後輩たちは、目を見開いて質問してくる。
変人と思われると思ったのに、予想外にスゴイなんて言われて、嬉しくなった。調子に乗って口を滑らせた。
「始めたのは最近。太腿とか大きいところの筋肉を鍛えると代謝が上がって痩せやすいらしくて。2キロくらいは痩せたかな」
 
本当は痩せてない。でも、リップサービスした。後輩たちは、「スゴイ」を連発し、偉そうにダイエットうんちくを語る私を称賛した。そして、「私たちも、明日から上ろう!」と盛り上がった。
 
本当は、30階まで到達したことはなかった。気が乗らない、なんて理由でやめる日もしょっちゅうだった。だから、体重だって減らない。でも、言っちゃった。30階まで毎日上ってる、体重も減ったって胸張っちゃった。明日からは皆で上るなんて話になってる。
 
次の日、私は初めて30階まで上った。足がカチカチになった。でも後輩の前で大見え切った手前、後がなくなった。何がなんでも、2キロは痩せないといけなくなった。嘘つくつもりはなかったけど、後ろめたさがあった。それに、少し、褒められたことが嬉しかった。そっか、30階まで上る私、すごいか。
 
次の日も、その次の日も30階まで上った。そして、夕飯も減らした。痩せなきゃいけない。何がなんでも2キロは痩せるんだ、と。
 
すると、1週間で効果が出た。今まで、1mmたりとも動かなかった体重計の針が、動いた。結果が出るとやる気が出る。私は、毎日サボらず階段を上るようになった。晩酌のビールもやめた。壁を使った腕立て伏せや負荷の低い腹筋にも取り組むようになった。
 
2ヶ月後、私は4キロの減量に成功した。
まだ道半ばではあるけれど、2ヶ月で4キロ痩せて、ダイエットのコツが分かった。1つ目は、食べる量を減らして動く量を増やすのを一定期間続けること。2つ目は、2週間で0.5キロなど、実現できそうな小刻みな目標を設定して、達成感を味わうこと。そして3つ目、後戻りできない環境を作ってしまうこと。私にとって、それが、大袈裟に驚く後輩だった。
 
さて、ここまで書いて、ふと気づいた。ライティング・ゼミ集中コースの受講を始めてから、体重計に乗っていない。夏休みで階段上りはできていないし、2000字を9日連続書くのに精一杯で、運動もしてない。それに毎日、ライティングしながらセブンイレブンのドーナツ(409kcal!)を食べている。
 
さて、受講してから5日目の体重。どうなったと思います?
 
なんと!たったの、5日間で!
1.2㎏減りました!!!
 
ダイエットに一番効くのは、ライティング・ゼミ集中コースかもしれません。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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