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おじさんテニス、すなわち愛

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おじさんテニス、すなわち愛
 
記事:樋野敬太(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
テニスは相手をよく見てプレーすることが大事なんです。テニスは勝負なんだから、そんなの当たり前? いやいや、おじさんがテニスをするときには、勝ち負けよりも大事なものがあるんです。それは相手のプレーを好きになること。コート上では勝負するより好きになること。昔に置いて来てしまった、恋愛中のデートの感覚が大事なんです。
 
私は大学からテニスを始めて、ずっと強くなりたい、勝ちたいと思って練習してきました。速い球、強い球を打ちたい。相手のいないところにボールを打って、ポイントを取って、勝負に勝って一つでも上に勝ち上がりたい。
 
たぶんスポーツをしたことがある人、そうじゃない人でも、この感覚って分かるんじゃないでしょうか。
 
大学時代はもちろん、社会人になっても、勝負に勝つために練習をして、強いところをもっと強く、弱いところをなくすために繰り返し練習をしてきました。でも、テニスってどこまで行っても自分より強い人って、たくさんいるんですよね。
 
大学時代は初心者から始めたので、はじめは同学年の初心者のやつに負けないように練習しよう。今度は初心者から始めた先輩よりうまくなってやろう。今度は経験者だった後輩に負けないようにがんばろう。そう思ってテニスボールをひたすら打ち続けてきました。
 
でもどっかで負けるんです。どこかで負けちゃって、それをバネにすることもできるんですけど、がんばり過ぎると、心が折れちゃうこともあるんです。
 
学生時代は時間もたくさんあって、仲間もいたから、自然とテニスに帰っていくことができました。でも社会人になって、テニスがやりたいことの一つになってしまうと、がんばって失敗した後、帰ってくる理由が必要になってしまう。
 
そんなこんなでテニスを始めてから20年ぐらいになりますが、実働は10年ぐらい。やってはやめてを何度か繰り返しました。数年前に再開した時も、はじめはやる気満々だったんですが、周りの勝負師たちのやる気が途中で息苦しくなって、足が遠ざかってしまいました。
 
勝負になっちゃうと、こっちも必要以上に力が入っちゃって、疲れちゃいます。勝っているときはいいけれど、負けだすとなんでこんな気持ちになってまでやっているんだっけ、としらけてしまって、次に行く理由を探すのが面倒くさくなってしまいました。
 
それでも根本的にはテニスを好きみたいで、去年引っ越した時も、これまでと同じく、地元のスクールに入会しました。どうして毎回嫌になるのにスクールに入るかって? それは勝負して負けるのは嫌なんだけど、お互い良いプレーをした時の満足感がたまらないんです。
 
自分と相手が良いプレーをして、コート上が盛り上がれば、勝ち負けは二の次。勝負に負けても嫌になることなんかありません。ただ、自分のことばかり考えて、自分の満足だけを追求したら、結果として勝負になってしまう。大事なことは相手の良いところを引き出すことです。
 
今回入会したスクールは、私よりも平均すると一回り年上のおじちゃん・おばちゃんが多く通われていて、こんな私でもかなり上手な方でした。こんなことは初めてなので、もしかしたら自分の全力プレーができずに楽しくないかもな、と不安交じりのスタートとなりました。
 
これまでは強い奴に勝つための全力プレーばかりだったのですが、今のスクールではそんなことしたらクラスで浮いちゃうし、上手アピールするだけの迷惑プレーヤーになってしまいます。そんな中でコート上での満足感を追求すると、おのずと相手のプレーを見る。つまり、周りの人のたちのプレーのクセや特徴、良いところを観察して分析するようになりました。
 
周りの人の良いところが分かってくると、今度はその良いところ、得意なプレーをもっと出してほしい、私のその部分をもっと欲しくなってきます。そのためには自分のプレーの幅も広げなければならないし、器用にならなければならい。自然と私が若いころに見ていた「おじさんテニス」プレーヤーの方向に成長していきました。
 
この世界、実は思っていた以上にすごく楽しいんです。相手の好きなところが見つかって、どうやったらその部分を見せてもらえるか。その魅力的な部分を出してもらうことで、私はうれしいし、きっと相性が良ければ私とのプレーを楽しんでもらえるはず。最後に勝ち負けはつくけれど、もはやこれは勝負の世界ではなく、むしろ共同作業の感覚なんです。
 
いいなと思う人とデートをするように、コート上でいい雰囲気を作り上げていければ楽しいし、好きなタイプのプレーヤーが見つかると、ついつい目で追いかけちゃうし、ラリーができるとすごくうれしい。
 
若いころのテニスは勝負なんですが、おじさんテニスの神髄は、相手を想う気持ち、すなわち愛なんです。勝負の世界のテニスも楽しいことは間違いないのですが、相手を想う世界を土台にすることで、よりテニスを長く、広く楽しめるようになりました。テニスっていいもんだな、とあらためてはまっています。
 
 
 
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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