メディアグランプリ

100年前の和食器に思いを馳せる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:フジ サワ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
先日、古い和食器を取り揃えているお店に行く機会があった。
場所は、東京の吉祥寺である。
 
賑やかな駅前を抜けて、昭和とフランスの文化が混じり合ったような商店街を歩く。
進んでいくと、店の前に噐がずらりと並べてある。その先の狭い間口を入ると、そこは和食器の森のようだった。
 
私の胸は高鳴る。古い和食器には、とても素敵な魅力があるからだ。
 
所狭しと並んでいる器を、傷つけないよう、注意深く見て回る。少し色褪せた、藍色の食器を見ていると
「それは、明治初期のものです」
とお店の人が教えてくれた。
 
ここでは、古伊万里、幕末伊万里、明治前期の器等、明治初期から昭和にかけての食器を取り揃えている。しかも、普段使いの出来る良心価格だ。
 
御飯茶碗や、塗りのお椀、大皿、すべての食器が、現代のものより小さい。
今使っているような、焼き魚用の長方形の皿は見当たらない。小さめの、長方形の刺身用皿ならある。
焼き魚は、大皿に家族分盛り合わせ、小皿で取り分けたのかな。大きめの丸皿に乗せたのだろうか。
 
100年前の、日本人の食卓を想像してみる。
 
そして、お茶碗やお椀には蓋がついている。
昔は、作る場所と食べる場所が離れていたから冷めないように、ということらしい。また、大家族で、全員が揃うまで待つための配慮なのかもしれない。
なんというか、蓋ひとつにしても、日本人の生活に対する細やかさを感じる。
 
「これはどこで仕入れているんですか」
所狭しと並んでいる噐をながめながら、お店の人に気になっていることを聞いてみた。
「骨董市で仕入れたり、蔵に眠っているものを買い取らせて頂くんです」という。
 
お祝い事や、人が集まった時に使うための食器が、今も地方の蔵に眠っていたりするらしい。
当時は、事あるごとにご馳走を作り、親族を集めて振舞っていたんだろう。生活が見えて、温かい気持ちになる。
 
お祝い事の為に眠っていた器とはいえ、価格も小皿なら500円からとリーズナブルだ。
ただ、お値段以上のものも多い。
絵付けが丁寧で、皿の裏側にも模様が描かれていたりする。明治前期の色絵皿は、全て職人さんの手書きだと言う。現代の量産品とは違い、人のぬくもりが感じられる。
 
伝説の動物、麒麟の絵が底に描かれた器があった。松竹梅、桜、龍、鳥、蝶、あたりは一般的だが、ユニークなモチーフも多い。お茶碗をぐるりと回すと、ストーリー仕立てになっているものもある。
 
深みのある藍色が料理を引き立て、食べ終わると様々な絵柄が出て来る。目でも楽しめそうだ。
 
どのくらい前になるだろうか。
好きな人の事を考えながら試着室で服を選んだら本気の恋だ、というような内容のキャッチコピーがあった。某ファッションビルのものだった。
これには共感した女性も多いのではないかと思う。
サイズチェックのための試着だけではなく、この服を来て誰とどこへ行こうか、と考えながら服を選ぶのだ。試着室で、楽しい未来のことを想像する。なんと素敵なんだろう。
 
人は何かを選ぶ時、いつもその背景を想像しているのだと思う。
 
100年前の食卓に思いを馳せながら、同じ器に自分の料理を盛り付ける事を想像する。
焼き物、煮物。パスタやチャーハンも意外と合うはずだ。
私の作る、上手くはないし見栄えもよくない料理だが、その器によそった途端に華やかになる気がする。
 
高い骨董品には興味が無いが、毎日使える味のあるものを選びたい。
何だか、長い年月をかけてごろごろと転がり、角が取れてきた今の自分みたいだな、とも思った。
古いものには、古い良さがある。
 
結局、2時間居座り、選びに選んで、ほぼ予算内でいくつかの器を購入した。
 
藍色の器の中央には、ひっそりと松竹梅が描かれている。
件の麒麟柄の茶碗も、我が家の器となった。食事がすすみ、ご飯がなくなると麒麟が少しずつ姿を現す。
器を使い出して良かったことは、前より品数を作るようになった事かもしれない。
そして、器が良いと料理まで美味しそうに見えるから不思議だ。
 
年末には、お正月用の大皿を購入しようと目論んでいる。
おせちを御重ではなく、大皿に盛り付けてみたくなったのだ。
きっと、そこには、100年前と変わらない家族の幸せがあるような気がする。
 
 
 
 
***

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2020-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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