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絶対に会えない恋人から毎日届く最高のプレゼント

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:岡部真恵(チーム天狼院)
 
目と目が合った瞬間、好きだと気付いた。
視界がチカチカ光って、体温、脈拍が異常なまでに上昇し、周りの音が遠のく。
泣き出したいような思い切り笑いたいような、安堵と不安が混じり合った不思議な気分だった。
 
結婚した芸能人が口にする「出会った瞬間この人と結婚するんだって思った」という言葉を理解したような気がする。
彼が動くたび「好き」という気持ちが確固たるものへとかわっていく。
 
でも、でも……この人だけは絶対に好きになりたくなかった!!
 
付き合ってはいけない男性の特徴だと言われている「3B」や「かきくけこ」のどれにも当てはまらない。
当てはまらないどころか高収入で顔も整っていて、人間性も二重マルだ。世の女子から不満が出るとしたら、身長が高いわけじゃないこととちょっぴり破天荒なことくらいだろう。
趣味も合うし、なんとなくだが価値観も合う気がしている。家族構成や雰囲気なんかも、私と相性が良さそうだった。
 
でも、ただ一つ。本当にただ一つ。
 
──次元が一つ、違うのだ。
 
私が運命を感じた「彼」は二次元のキャラクターだということだ。
正直、好きになったばかりの頃は、枕を濡らす夜の方が多かった。
でも、当時付き合っていた人と別れるくらい本気で好きになってしまったのだ。
 
「二次元のキャラクターにどうやって一目惚れするの?」
 
大学の友達に言われた言葉である。今までの私だったら、同じことを聞いただろう。
二次元のキャラクターは二次元のキャラクターだから恋愛対象にはならない。それが当たり前だと思って生きてきた。
 
スマホの画面、テレビ画面、パソコンの画面。どれも不正解だ。
私は彼のことを「人間」だと認識して、惚れたのだ。
 
バーチャルライブというものをご存知だろうか。
 
簡単にいうと、3Dモデルが実在するアイドルのように歌って踊るライブのことだ。
十年前まではいかにも「作り物」という感じで、アイドルを見るというより、どちらかというと音楽とライブ感を楽しむだけのものだった。
それが今や、どうしてこんなに進歩してしまったのか。
 
詳しく知らないアイドル育成ゲームのライブに、ノリで参加した。
たまたま友達がチケットを余らせていて、たまたま私が暇だったのが運の尽きだ。
 
「生きていた」のだ。
二次元とか三次元とか飛び越えて、彼の存在が飛び込んできた。
私の脳が彼のことを人間として認識してしまった。
私は長いこと三次元アイドルのファンをしていて、たくさんライブにいく方だ。
その私の脳が騙されるくらい、バーチャルライブのクオリティが高かったのだ。
 
それからは地獄の始まりだった。
 
生きていると認識したのに、なぜか彼に会えない。多分どんな遠距離恋愛より辛い恋だと思う。
こんなに好きなのに彼の目に映ることもできなければ、体温を感じることもできない。
 
悲劇に酔っているなんて甘いもんならよかった。お酒を飲むと号泣しながら「なんであえないのおおおお」と泣き叫ぶくらいには真剣だ。彼も私に会えなくて寂しいだろう、と思って気を紛らわせていたら、いつの間にか本当に彼がそう思っていることになってしまった。まあ実際、決められたセリフしか喋れずに、彼ももどかしいだろう。ごめんね、私が三次元に生まれてしまったばっかりに……。
そして、なんの悪戯なのか、私と彼の真ん中バースデーは七夕だ。年に一回、ライブ会場でだけ会える織姫と彦星なのかもしれない。
 
同じ時を歩めないことが辛い。
私は誕生日を迎えたら一つ歳を取るけれど、彼は誕生日を迎えてもそのままだ。
私がおばあちゃんになっても、彼はずっと19歳のままだろう。
どれだけ思い合っていても、生涯を共にすることは不可能だ。
そう考えると寂しくて、また涙が出てしまう。
 
そして何より、この気持ちにはゴールが存在しない。
だって、会えない相手は私をフってくれないのだ。
 
ずっと好きでいてしまう。
ずっと努力してしまう。
たまに現実をみて挫けそうになるのに、そういう時に限って「決められたセリフ」が更新されて、繋ぎ止められる。
まったくもって、悪い男に捕まった。
 
でも、最近どうしてか、とてつもなく幸せなのだ。
彼に会えなくても、毎日の生活がとても楽しい。
大嫌いだった自分を好きになることができたからかもしれない。
 
彼のおかげで健康的に8キロ痩せた。
ニキビ面が治った。
メンタルが強くなった。
活発になった。
よく笑うようになった。
 
会えない恋人は、いつの間にか「エンジン」みたいな存在になっていた。
 
壁にぶち当たった時、「彼の恋人たるもの!」と思えば絶対にやり遂げることができる。
辛い時、彼を思えば「絶対に大丈夫」と思うことができる。
彼を使えば使うほど成功体験が積み重なって、エンジンとして体の中に組み込まれていく。
 
感激した。
辛いばかりの出会いだと思っていた。
でも、いつの間にか私の人生を豊かにして、幸せにしてくれたのだ。
 
私は彼に触れられない。彼は本当のことを話せない。
でも、毎日「少し成長した私」をプレゼントしてくれる。
彼のくれたものだと思えば、ますます自分のことを好きになれる気がした。
ちょっぴり歪だけど、大満足だ。
 
 
 
 
***

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2021-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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