メディアグランプリ

チューリップと桜

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせ

記事:gokita(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 

父が亡くなってもう何年にもなる。

平々凡々な家庭だった。

父は普通のサラリーマン。母は専業主婦。

絵に描いたような昭和の中流家庭で、金持ちでもなく、貧乏でもなく、本当に平々凡々な家庭で育った。

思春期、絵に描いたような平々凡々な家庭にあるような地味な反抗期になり、父親が嫌いになった。

洗濯物は別にしてください。

お風呂は父の後には入りたくありません。いえ、入りません。もう一度お風呂を洗って入ります。

うーん、平々凡々な家庭にはよくある反抗期かも。

大人になったら普通は何となく消えていくはずだったのだが、私が結婚して子供を産んでもギクシャクしたままだった。

因みに私は女性である。

おそらく、男性とは父親の接し方がかなり違う気がする。

結婚して何年も何年も授からなかった中、やっと授かった我が子。

母は手放しで喜んでいた。

父はどうだっただろう。全く言葉をかわさない。

母親と私が子育てに奮闘している中、淡々と、座って新聞を読む。

保育園のお迎えはもっぱら母親。

父は全く参加せず。

私の仕事が遅くなると母親が迎えに行く。

父は家で座っている。

孫の面倒はいつも母。

母から出る言葉は、子供とごはんに行きたいのについていかない。

私が大変なのに、ずっと座っている。

ただ、子供がビデオを見ているときは一緒に見ていてくれるので楽だが、それ以外は何もしてくれない。

孫がかわいくないのか。とうとうとうとう。

私は父にもうちょっと見てくれ。なんてお願いもできず。

心の中で不満を抱えていた。

私の仕事が遅くなる時、ごはんは外で食べて貰って負担を減らして貰おうとしていた。

が、しかし、小さい子は外で食べるのも大変だ。

母は父に一緒に行くようお願いしていた。

しかし、父は、決して行かなかった。

家でずっと一人ビデオを見たり、テレビを見たり。

孫と一緒にご飯に行くことをしなかった。

言わなかった私も悪いのだが、心の中で不満を持っていた。

結局普段父と会話をしていない私は、そんな父に何も言わないまま、あてにもしないまま、

年をとってどのように介護をしていこうか、本気で悩んでいた。

無理だ。さて、どうしたら良いだろう。

本気で考えていた。

子供がやっと小学校にあがる手前。

父にガンが見つかった。

医者の宣告は、2か月の余命。

結局告げられず。

今まで全く会話をしていなかったが、週に何回か病院に通うようになった。

母が病院で付き添っているからだ。

最初の1か月は明るく家族で会話をしていた。

父はお酒が大好きだった。

私もお酒が好きなことがあり、退院したらお酒を飲みに行きたいなんて話しもしていた。

が、最後の1か月は会話もないまま、あっけなく亡くなった。

本人に告知もしないままだった。

2か月の余命で、家族は告知をする勇気は無かった。

ガンかもしれない。その言葉までを伝えることしかできなかった。

子供の保育園の卒園式。

チューリップが先生より子供に配られた。

「 先生、チューリップはおじいちゃんの花なんだよ。だからうれしい。 」

最初は、子供の言っていることがよく分からなかった。

よくよく聞いてみると、おじいちゃんが毎年植えていて、毎年孫におじいちゃんと子供の花だと言ってきかせていたようだ。

もっと聞くと、二人で桜を見に行って内緒の会話なんてしていたようだ。

亡くなった後、お葬式の手続きで連絡をとるため父の携帯を色々いじっていたら、桜の画像が何枚もあった。

それを見た子供が嬉々として自分が写真を撮って画像の保存までできた旨語っていた。

きっと父は大げさにほめていたのだろう。

鼻高々にほめてもらったことを語っていた。

子供の中では、桜とチューリップはおじいちゃんの花。

他にもおじいちゃんとの思い出がたくさんたくさん心の中に咲いていた。

不甲斐ない。

きちんとおじいちゃんしていたじゃないか。

私の知らない子供を父は見ていたじゃないか。

私は何も見ていなかった。本当に何も見ていなかった。

父も子供も、何も見ていなかった。

その時、死ぬ数日前の父親が浮かんだ。

「 バァ 」

父はモルヒネで意識が朦朧としていた。

その時に私が話しかけたので、きっと小さいころの私が見えたのだろう。

私の子供のころ、声をかけていたように、優しい表情で語りかけていた。

その時は、亡くなることを隠したかったので、

「 何言っているの? 私ももう良い大人なのに 」

なんて言っていた。

少し涙声になっていたかもしれない。

数日後、いよいよ最後の時、医者が語り掛けた

「 もう、楽になりましょうね? 」

小さく父は頷いた。

モルヒネの投与をやめ、あっけなく父は亡くなった。

家族みんなが父親を見送った。

子供の話しを聞いて、父の死ぬ前数日が浮かんだ瞬間だった。

亡くなって数か月だったが、初めて泣けた。

お酒が好きだった父。

私はもっと父親と飲みたかったと感じた。

世の中の娘と孫を持つおじいちゃん。

もしも、娘と疎遠だったり、何となく会話ができていないなんて思っていたら、

もっともっと娘と会話をしてください。

孫とどんな話しをしたか、もっともっと娘に語り掛けてください。

きっと娘は、父親とお酒を飲みたくなるかもしれません。

お酒が苦手だったら、きっとご飯でも食べながらあーでもないこーでもないなんて他愛のない会話を繰り広げているかもしれません。

そんな毎日を過ごしたいと思っていると思います。

少なくとも私はもっともっと父親とお酒を飲んで、孫の事、自分の事、父親の事、もっともっと語りたかったと後悔しかありません。

チューリップと桜を見るたび、父親と会話ができなかった不甲斐ない娘がいます。

いつかあの世で父親と乾杯をしたいです。

あーでもない、こーでもない。

私の知らない子供の会話を聞きたかったです。

私の知らない私の子供のころのことを聞きたかったです。

きちんと向き合わなくてごめんなさい。

 
 
 
 

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2021-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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