ラグビー日本代表のトレーニングに悲観的なおじさんがトライした話
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記事:田岡一宏(ライティング・ゼミ日曜コース)
「何度もチェックしたはずなのに……」
やってしまった。ミスだ。売上計画の数字を間違えた。本部長に提出する重要な資料だった。計算式を間違えるなんて、自分が信じられなかった。上司からミスを指摘されてひどく落ち込んでいた。初歩的なミスをしてしまった自分が情けなかった。
何でこんなミスをしてしまったのか?
何がいけなかったのか?
頭の中がネガティブな感情で一杯だった。家に帰ってからも頭が切り替わらない。家族との会話も上の空だった。そんな時は、早く寝てしまおうと思ったのだが、ネガティブな感情が頭にこびりついてなかなか寝付けない。布団の中で悶々とした苦しい時間を過ごす羽目になった。
私は、悲観的になりやすい性格だ。心配性と言っても良い。気持ちの切り替えも下手くそだ。仕事をするときは、いつも最悪のケースを想定して、リカバリー案を準備しながら行っている。チェックもしっかりしているつもりだ。だから、ミスをしてしまったときは、自分を責めて落ち込んでしまう。
自分を責めないように自分に言い聞かせる努力をしたが、気持ちをうまくコントロールできない。何とかしたいと切望していたが、上手くいかない日々が続いていた。
そんなとき、ある本に出合った。1年ぐらい前だったと思う。
『リーダーシップを鍛える~ラグビー日本代表「躍進」の原動力~』(荒木香織・著、講談社・刊)だ。
2015年ラグビーWカップで、日本は優勝候補の南アフリカをやぶるという大金星を挙げた。南アフリカはWカップで優勝2度、かたや日本は24年間もWカップで未勝利。偉業の達成だ。著者の荒木さんはメンタルコーチとして、2015年の日本代表の躍進を支えた人だ。記憶に新しい2019年のWカップ日本大会でも日本は、初のベスト8入りという大活躍をした。その下地を作った1人とも言える。
万年弱小チームだった日本代表をどのようにして「one team」に変えたのか? それを知りたかった。
本を読み進めていくうちに、一生懸命、適切な練習をすることに加え、「レジリエンス」という能力開発に成功したことがポイントだと分かった。
レジリエンスとは、気持ちを前向きにし、環境変化に適用する能力のことで、トレーニングで養うことができるというのだ。ラグビー以外のトップアスリートのトレーニングにも導入が進んでいるという。悲観的になりやすい私にとって、気持ちを前向きにするレジリエンスは、手に入れたいと切望している能力だと確信した。何としても、身につけたいと思った。
本には、レジリエンスを鍛える10の方法が紹介されていた。
一度に10もやるのは大変だったので、自分が取り入れやすい3つに挑戦した。
1つめは、「人生を長い目で見る」だ。
そのときは最悪な状況だと思っていても、あとで振り返ると、覚えていないぐらいの事であることが多い。例えば、今日、上司から指摘を受けてすごく落ち込んだとしても、10年後はきっと覚えていないだろう。その程度ことだと思えば、深刻にならないで済む。実践してみた。仕事上のミスなんか、大したことないと思えるようになった。ミスをしても1時間後には、平常心でいられるようになった。
2つめは、「できたことや良かったことを確認する」だ。
どんな些細なことでもいいので、1日の終わりに自分のできたことや良かったことを10個書き出し褒める。出来たことを確認して、褒めることで、自分自身に自信がつくというものだ。
確かに、落ち込んだまま寝ようとしても寝つきが悪く、1時間ぐらい布団の中で悶々として翌日睡眠不足になる。1日の終わりをポジティブな気持ちで終わられると気持ちよく寝られそうだ。10個も書くのは大変だから、まずは1個、書くようにした。幾分気持ちが楽になって、寝つきが良くなった気がした。
3つめは、「イライラや不安を自分でストップする」だ。
「ストレスを感じる出来事をどのように受け止めるかでストレスの度合いも変わってくる。自分の感情をコントロールし、物事を大きくするのをやめてみる。「できない」、「無理」といったネガティブな考えは何の助けにもならない。イライラしたら自分の思考自体を停止させる。お湯の沸いている鍋にパッとフタをしてしまうイメージ。例えば、思考自体を停止したいとき、どこか体の決められた部分を叩くと決めておくのもよい。練習すれば、できるようになる」というものだ。
私は思考自体を停止したいとき、左手で、右手の親指をぎゅっと握ることにした。今は、ぎゅっと握っても、すぐには思考停止とはいかないが、意識が右手の親指にいくのですこしは気分が紛れるようになった。
この3つのトレーニングは、今も継続している。今も悲観的な気持ちになることがあるが、深く落ち込むことはなくなったし、落ち込んでいる時間が短くなった。気持ちが上向きな時が多いのか、なんか心が軽い。妻からも「最近調子良さそうだね」と声を掛けられた。
今後も継続することで、ラグビー日本代表がじり貧から躍進できたように、私もその波に乗ってゆきたい。
もし、あなたが悲観的になりやすいと悩んでいるなら、この方法をお勧めしたい。また、本書にはこれ以外にも効果的な7つの方法が紹介されている。是非一読されることもお勧めしたい。
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