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好奇心という名の踏み切り板


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西片 あさひ (ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
コーヒーを飲むことです。
 
あなたの趣味は何ですか?
という質問をされたら、きっと私はこう答えるだろう。
 
平日の仕事のあとも、まずコーヒー店に行って、コーヒーを堪能してから家に帰ることもしばしば。
休日も、よくコーヒー店に行く。
 
家の近くのお店はもちろんのこと、車で一時間、二時間もかかるようなコーヒー店であっても、ネットやSNS等で調べては訪れて、新たな味を堪能している。
 
これだけ聞くと、さぞかし昔からコーヒーを好きだったのでは? と感じる人も多いことだろう。
 
しかし、そんなことはない。
むしろ、数年前までコーヒーには全く縁がなかった。
親や親戚といった、身近な人でコーヒーに親しんでいる人が誰もいなかったのだ。
私の幼少期には、コーヒーという存在は影も形もなかった。
 
中学生、高校生、そして大学生と、年齢を重ねていくうちに、友人の中でコーヒー好きな人がだんだんと増えてきたが、それでも私がコーヒーに親しみを持つことはなかった。
むしろ、苦手になった。
 
友人たちが飲んでいたのは、ブラックの缶コーヒー。
勧められるがままに飲んでみたが、それが口に合わなかった。
 
苦みしか感じなかったのだ。
 
これのどこがおいしいのだろう。
友人には悪いとは思いながらも、そんなことを思ったのを今でも覚えている。
 
この出来事が、私にコーヒーへの苦手意識を植え付けてしまったのだ。
しかし、ある時それが180度変わった。
 
今のようにコーヒー好きになったのは、2年前のある一言がきっかけだった。
「甲府のまちに行ってみたらどう? きっと面白いと思うよ」
妻からそう言われたのだ。
 
音楽ライブに行くことが趣味の妻。
好きなバンドマンが出演するなら、たとえ遠くのまちであっても、駆けつけるくらいだ。
 
その時も好きなバンドマンのライブが山梨県甲府市であった。
家から電車で片道4時間はかかる場所にも関わらず、意気揚々と彼らの応援に向かった。
 
ライブから帰宅した妻から、その言葉が出たのだ。
聞くと、ライブハウスがある甲府市自体が良かったという。
お店で出会った全く知らない客と意気投合し、観光案内など、いろいろよくしてもらったらしい。
 
旅行が趣味なのに、仕事で忙しくて好きな旅行がなかなかできなかった私を気遣った提案だったのだろう。
 
しかし、それにしても驚いたのは普段とは違う妻の旅先での様子だった。
人見知りな妻は、家族や友人以外と話すことをとても苦手としていた。
その妻が、その日にあった見知らぬ人と仲良くなったという。
 
甲府市とはいったいどんなまちなのか。
なにか面白いことがあるんじゃないか。
 
私の好奇心に火が付くのに、さして時間がかからなかった。
 
2週間後。
私は甲府市に訪れた。
 
ほうとう、ワイン、甲府城など、甲府市を代表する食べ物や名所を堪能した私。
ここまでは、一般的な旅行と変わらないが、それに加えて、必ずすることがある。
それは始めて行った場所の商店街を散策すること。
 
さまざまな食べ物、建物、そして人の気配を感じられる商店街は、その場所の日常を感じられる、いわば顔のような場所だ。
 
その時も、いつものように、甲府市の商店街を散策することにした。
寿司屋、生花店、呉服店と地元の人に長く親しまれているような店を眺めながら、何の気なしに歩いていると、ある建物が目に留まった。
 
ブティックと居酒屋の間にある白一色に塗られた、細長いお店。
年季の入った建物ながらも、きれいな店だなと思った。
 
店は2階建てで、1階はレジ兼カウンターになっている。
 
何やら、飲食物を扱っているようだ。
 
なにか、この店はビビッと来る。
電波を受信した感じがして、店に向かって足を進めた。
しかし、それはすぐに止まった。
 
長い髪の毛を束ねたおしゃれな男性店員。
店員と談笑するセレクトショップにしか売っていないようなおしゃれな服を着た男性。
そして、手に持っているのはコーヒー。
 
まさに異世界のような光景だった。
 
「おしゃれなじゃない人は浮いちゃうんじゃないか」
「それに、コーヒー苦手だしな……」
 
店に行こうか行かないか、悩みに悩んだが、結局行くことにした。
自分の好奇心、そして感覚を信じてみることにしたのだ。
 
満を持して、店の前へ。
 
「ご注文は何にしましょうか?」
長髪の店員さんは優しい声で話しかけてくれた。
 
良かった。まずはほっとした。
メニューを見ると、聞いたことがない名前のコーヒーが二つ並んでいた。
名前の下には、オレンジやベリー、ナッツと言った文字が。
 
てっきりコーヒーの付け合わせと思い、聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「付け合わせではなくて、コーヒーの風味のことですよ」
「特に、ホットで飲むと風味をより感じることができるので、おすすめです」
 
驚いた。
 
フルーツって、どういうこと?
コーヒーって苦いだけじゃないの?
 
疑問がどんどん湧いてきたが、店員さんは至って普通。
冗談を言っているようにも思えなかった。
半信半疑ながらも、オレンジの風味がする方を選んだ。
 
2階席で待つこと、およそ10分。
注文したホットコーヒーが運ばれてきた。
恐る恐る口を近づける。
そこで、何かに気づいた。
 
え?、これはコーヒーなの?
思わず声を発してしまった。
 
鼻に入ってきたのは、柑橘系のさわやかな香り。
私の知っているコーヒーの香りではなかった。
 
コーヒーというと、今までは苦いだけのイメージしかなかった。
しかし、このコーヒーは違った。
オレンジを思わせる風味がした。
 
そして、あとからくる爽やかな甘み、最後に感じるほのかな苦味。
どれをとっても初体験だった。
これは、ぐいぐい飲める。
 
今までコーヒーだと思っていたものは一体何だったんだろう。
自分の記憶を疑ったくらいだ。
「コーヒーって、こんなにおいしかったんだ!」
 
お店を発見してから、コーヒーを飲み終えるまで、およそ30分間。
 
短い時間だったが、この経験が私の価値観をがらりと変えた。
 
それからというもの、平日も休日も、おいしいコーヒーを求めて、お店周りをするのが私の日課となった。
最近では、道具を揃えて自宅でコーヒーを楽しもうという計画も進行中だ。
 
2年前までの私がみたら、きっと驚くことだろう。
 
人生が楽しくなるきっかけは意外なところに転がっているんだなとつくづく感じる。
人には苦手なこともあるし、それを全て克服することは難しい。
でも、好奇心を頼みに一歩進んでみたらだろう。
 
好奇心は踏み切り板みたいなものだ。
 
使えば、苦手なことでも乗り越えられる。
苦手なことが実は大したことがなかったことに気付いたり、むしろそれが得意なことや好きになったりする。
日常がもっと楽しくなる。
 
そんな気がしてならないのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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