あなたのことは「察せません」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:光﨑 智美(ライティング・ゼミ平日コース)
「なんで分かんないかなぁ! 察してよ!」
と思うことありませんか?
会社の私の後輩でとても遅刻が多い方がいた。数分程度の遅刻ではあるが、月に2回も3回も遅刻する月もあり、事前に連絡さえない。数分なら良いと思っているのか。しかし遅刻は遅刻である。遅刻がわかった時点で連絡するべきだし、そもそも遅刻するべきではない。しかし彼女は遅刻した時も定時に出勤したかのように、「おはようございます」と遅刻の謝罪はなく、私に挨拶してきた。私は小さな声で「おはよう」と少し不機嫌そうに返し、「私の遅刻への苛立ち察してよ」と思っていた。しかし、後輩ちゃんはその後も遅刻を繰り返し、私はその度イライラ。「イライラ察してよ」オーラを出しているつもりでいた。しかし、そんな「察して」は後輩ちゃんに届くわけもなかった。
会社だけに限らず、私はイライラしてしまうと不機嫌になり「イライラ察してよ」と、不機嫌になることで相手を変えようとした事は、恥ずかしながら少なくない。
私もイライラしていたいわけではない。いつも穏やかそうに見える人に憧れ、「あんな風になれたらなぁ」とよく思っていた。そして「すぐイライラしてしまう」「イライラしないには」などの言葉でネット検索もしていた。
“イライラしてしまうのは、相手に期待してしまうから。相手を変えようとするのはやめて、自分が変わろう”とよく見るような記事を見つけても、「期待をするのって無意識だし、やめれないよな。自分が変わるのもどうしたらいいかわからないなぁ」と解決策が見つからない。
そんなイライラの解決を見つけるために、ネットサーフィンを繰り返していた時、とある記事に出会った。
“感情と行動をわける。
「感情」は自分と向き合い自分を知るための大切なデータ。おさえつけることなく、我慢する事なく、全肯定して受け止め、いかなる感情も許しながら、丁寧に扱う。感情の吐き出し口は「相手」にせず、自分と共有する。
「行動」は目的を叶えるためのもの。自分がどんな行動をとったか、で現実は変わる。どんな感情であっても、行動とは関係ないという事がポイント”
私は目から鱗が落ちた。イライラをなくすのではなく、イライラはそのまま自分の感情として大切にして、自分の行動だけを変えるのだ。今までイライラしたら、イライラした行動しかしてこなかった私は「おいおいおい、そんな大事な事、義務教育で教えてよ!」と心の中で義務教育のあり方に一石を投じたい気持ちにさえかられた。
そのサイトにはアドラーの言葉も載っていた。
“あなたのために他人がいるわけではない。『〜してくれない』という悩みは自分の事しか考えていない何よりの証拠である”
と書いてあった。まさに私はいつも「察してくれない。あれしてくれない。これしてくれない」と怒っていた。相手の事を考えていないのは私の方だったのだ。
その記事を読んだ後、私は頭の中で何度もイメトレし、ついに後輩の遅刻と対峙する時が来た。まずは感情と向き合う。イライラした自分は責めない。「イライラするよね。」と感情を認める。そのあと自分は後輩とどうなりたいのか。それに従って行動する。私の場合は「後輩に私のイライラを察して欲しい」のが、本来の目的ではない。後輩と良好な関係を保ち、遅刻をやめて欲しい。その為に行動する。
私は不機嫌を表に出すのをやめて、「後輩と良好な関係を保ち、遅刻をやめてもらう」ために、後輩と話す事にした。
「なんで遅刻しちゃうの?」
「すいません。私、夜眠れない時があって。昨日も夜中の3時くらいまで眠れなかったんです。前からなんですけど。ただ、眠れないとやっぱり朝も起きられなかったり。」
「そうだったんだね。夜眠れないのはしんどいね。私もたまにあるけど、眠れないと寝ないとって思って、余計眠れないよね。せめて遅刻する時は連絡できない?」
「連絡ですか?」
「『遅刻してしまいます。何時くらいには着きます』って言う連絡」
「え!? 前の上司の永瀬さんにいちいち連絡しなくていいって言われて、するの辞めてました。明日から連絡します! ……って言うか、遅刻頑張って減らします!」
「そうだったのね! 連絡はしてね。うん、遅刻も頑張って減らしていこう」
「なんかすいません。私のために時間割いてもらって。ありがとうございます!」
まさかの連絡しないのは、前上司からの指示だった。彼女と話さないままでいたらずっと知る事はできなかったかもしれない。私の中で勝手に後輩ちゃんは常識がない子だ、と思い込んでいたので、最後にしっかりお礼も言ってくれて、いい意味で裏切られた。
その後、なんと後輩ちゃんは遅刻の回数も減っていった。行動を注意した事で、「見られている。見てもらっている」と思い、行動が変えてくれたのかもしれない。
自分の感情をコントロールするのは難しい。しかし、行動だけをコントロールするならなんとかできるのかもしれない。
文章が上手くなりたいと思っているのに、めんどくさい気持ちを重視して書かなければ、上手くならないし、仲良くなりたいと思っているのに、恥ずかしがって声をかけなければ、仲良くなる事はできない。どんな事であっても目的を達成させるためには行動をする必要があるのだ。ただ、めんどくさいと思う自分や、恥ずかしがってしまう感情を否定する必要はないのだ。
特に人間関係において、他人は他人。
黙って「察して欲しいオーラ」を出していても、あなたの事は「察せません」
想像する事はできるかもしれないが、他人を言葉なしで察する事はできない。
感情は自分で向き合って、良好な関係を築きたい相手であるなら言葉で会話しようじゃないか。
***
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