39歳おじいさんからの提言
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:武田智幸(ライティング・ゼミ平日コース)
わたくしはハゲである。
吾輩は猫である、のような書き出しになってしまったが、この記事はフィクションでも自虐でもない。ハゲの方に少しでも元気と勇気を与えるべく、39歳のハゲによる、ハゲのためのハゲ論である。ハゲでない人はご笑覧いただきたい。
……
4月の日曜日、私は小学一年生の息子と公園にいた。野球の楽しさを教えるためだ。
「だんだん投げるのが上手になってきたぞ」などと調子のいいことを言いながら、息子を褒めて褒めて褒めまくる。これも息子が高校野球をやってもらう可能性を育むためだ。
「おとうさん、うしろにサッカーボールきてるよ!」
後ろを振り向くと、サッカーボールが転がってくるのが見えた。
「おじいさん、ボールとって〜!」
向こうの少年が叫んでいる。
おじいさん?
周りを見渡すが、大人はこの公園に自分だけ。
明らかにこちらに向かって言っている……。
いま、おじいさんって……?
俺まだ39歳だよ……。
「ねぇねぇおじいさん、ボール蹴ってよ〜」
少年の目は、やはり私に向けられていた。
僕はサッカーボールを蹴り返した。
「ありがとう、おじいさん」
おじいさんとは私のことだったようだ。
帰り際、息子がつぶやいた。
「お父さん、さっきおじいさんって言われてたよ。ふふっ」
おじいさんねぇ……。
いや、さすがにまだおじいさんではないぞ。
なんて自分に突っ込むが、子供から見たら、ハゲ=おじいさんと見えるのかもしれないな。人は見た目で判断するものだ。仕方ない。
さて、そんな私だが、自分の特性である”ハゲ”は、むしろ仕事においては大いに役立っていると言える。簡潔に言えば、ハゲという、誰にでもわかりやすい、一方で誰もがなりたくないものである特性を有効活用している。ハゲが仕事に役立つ? と疑問符が湧くと思うが、役立てるための2つのポイントについてお伝えしたい。
(そのポイント解説は必要ないという、突っ込みがあることは承知の上で)
まず、1つ目は、周囲にハゲを公言することである。
これは、自分がハゲという事実を認めた人間であると認識してもらえる。
「こんな頭しちゃってますが、まだ◯◯歳なんですよ」
言葉は人それぞれだが、自分でハゲを認めていることが相手に伝わると、相手との心理的距離感はグッと近づく。心を開いてくれたと思ってもらえる上に、相手方がこちらに対して、少しは気を遣わずに済むようになるから不思議だ。初対面でこれを実行すると、相手にかなりの印象付けを与えることができる。実際に私も、これによって打ち合わせの雰囲気がかなり和んだことを数々経験している。自分で自分を受け入れねばならないが、大事な一歩である。
2つ目は、丁寧な仕事を心がけることである。
これは、丁寧な仕事をするハゲと思ってもらうことにつながる。
人は見た目が9割という言葉もある。残念ではあるが、ハゲという時点で、なんとなく格が一枚落ちて見えてしまうかもしれない。これは仕方がない。漫才でいう、出オチみたいなものだ。でも、行動でカバーしていければ、加点方式でどんどん加点されてゆく。
「相手方が、その先のお客さんにそのまま渡せるように、相手が作成したような書き方で書類をしたためる」
といったように、とにかく相手を思って仕事をする。すると、あいつはよくやってくれる、意外と丁寧なハゲだという思いが相手方に形成される。おそらくハゲという第一印象からのギャップが、良い方に振れるのだろう。想像以上に好印象への転換度合いが大きくなると感じる。これは特筆すべきメリットだ。
私の場合には、ありがとうを言われる機会が多い。これが嬉しいから、また喜んでもらえるように努力するといった、好循環ループが形成される感じだ。誰でも当たり前に大事な姿勢だが、ハゲにとっては、ギブ(まずこちらから提供する)やサービスの精神はとても有効である。
この2つのポイントは、ぜひ参考にしてみてもらいたい。きっと明るい兆しを感じる場面に出くわすことだろう。ぜひハゲを有効活用しよう。
ただし、これらを遂行する上で必要な絶対条件が一つある。
清潔さだ。
これだけは本当に人一倍気を遣った方がいい。サイズ感のあっていない服、くたびれたバッグなどは最悪。本当におじいさんの仲間入りになってしまう。絶対に清潔感をキープすること。先に述べた2つのことも、清潔さが大前提にあることをくれぐれも忘れないようにしておきたい。
さて、ここまでハゲに関して、真正面から書いてきたが、最後にもう一つお伝えしたい。
私は、物事は大抵がコインの裏表のような関係だと思っている。
一見マイナスに思えることも、きっかけさえあれば、オセロのようにプラスに転じさせることができるということだ。だから、ハゲという事実を受け入れ、許容し、それを凌駕する行動をとることだ。そうすれば、ハゲなんて大したことではないのだ。これが、39歳おじいさんからの提言である。
さて、この記事は果たして世に出るのだろうか。天狼院ライティングゼミの課題審査という、高きハードルを乗り越え、全世界のハゲの仲間を筆頭に、少しでも皆さんに僅かな勇気と活力を与えることになれば幸いである。
ハゲの方、ともに頑張ろう。
ハゲでない方、ここまで読んでくれてありがとう。
ではまた。
***
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