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時代の狭間で

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記事:川口 公伸(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
先日訪れた、新潟県の長岡駅であるポスターに目がとまった。
それは、今年の夏に上映される「峠 最後のサムライ」と言う映画のポスターだった。
この映画は、幕末の長岡藩士 河井継之助について書かれた、司馬遼太郎さんの小説を原作として作られたものだ。
その時僕は河井継之助と言う人を知らなければ、司馬遼太郎さんの「峠」と言う作品も知らなかった。
しかし偶然、司馬遼太郎さんのガイドブックを読んでいたタイミングだったのもあり、とても興味を持った。
それでも、上・中・下巻と3巻からなるこの作品を読むには少しハードルが高かった。
そのため、まず僕は「最後の将軍」と言う15代将軍 徳川慶喜について書かれた作品を先に読んだ。
幕末という時代は歴史好きの人の中でも、好きな時代だという人は少なくないだろう。
ある時期僕も興味を持っていて本を読んだりした。
その中でも、一番興味があったのは坂本龍馬だった。
同じ司馬遼太郎さんの書いた、「竜馬がいく」を読んだことがきっかけだった。
だから、僕の中での幕末は官軍側の目線で書かれたものからの知識がほとんどだった。
今回初めて幕府側の目線で書かれた作品を読んだ。
これまでも、徳川慶喜という人について知ってはいたが、どんな人物かまでは知らなかった。
徳川慶喜と言う人は決して望まれて将軍になったのでは無かった。
どちらかと言えば、本人も将軍位なりたくはなかったようだ。
しかし、やはりその時代に必要な人だったのだろう。
 
それが刺激になったかはわからないが、「峠」という作品に対する興味はなくならなかった。
そして、「峠」を読んだ。
主人公の河井継之助と言う人は、坂本龍馬と同様にかなり広い視野を持ち、先見の明のある人だったようだ。
しかし、坂本龍馬と違うのは、河井継之助は長岡藩に仕える武士だったと言うことだろう。
坂本龍馬の場合、土佐藩の複雑な階級もあり、藩を捨てて自分の思うままに行動をすることが出来た。
しかし、河井継之助の場合、書生としていろいろな場所へ行き、人と会い学ぶことはあったが、それも将来の長岡藩のことを思っての行動だった。
結果的に、情勢の変化とともに継之助は長岡藩で重用される。
平穏な時代であればありえない地位へと出世する。
継之助は藩を近代兵器で武装することで、官軍でも幕府軍でもない中立な独立国家を築くことを目指していたが、武装したことが官軍側に不信感を与えてしまった。
結果的に戦争へと向かって行かざるを得ない状況に追い込まれて行く。
そして、戦闘中に被弾した際の怪我が原因で命を落とすことになる。
余談になるが、河井継之助を戦争へ向かわせた官軍側の代表は、坂本龍馬を師と仰いでいた人物だった。
 
幕末という時代の魅力の一つは、その時代に活躍した人物の魅力という部分があるだろう。
もしということはあり得ないが、もし河井継之助が幕末を生き延び、明治という時代を迎えていたら、どんなことを成し遂げたのだろう?
この作品で描かれている河井継之助と言う人はそれだけ魅力的な人物だった。
しかし、実際には河井継之助は長岡藩に仕え、侍として死んでいる。
作品の中の言葉で「武士の時代は終わる、これからは町人の時代が来る」と書かれていた。
その言葉通りになっている。
今から150年ほど昔に日本の国内で起こった戦争があってそう言う時代になった。
そのために、命を落とした人もたくさんいた。
それでも、時代が動くときにはそこを引っ張って行く人が現れ、時流に乗って時代が変わって行く。
その反面、時流に乗れなかったことで敵役になってしまう人物もいる。
河井継之助はどちらかと言えば後者になるのだろう。
 
今回この作品を読んで、官軍でもなく、幕府側でもない中立を目指すと言う視点での幕末につて知ることが出来た。
きっと混乱していた時代なので、ほかの立場の人も沢山いたのだろう。
今後機会があれば、そういった別の視点で書かれた作品も読んでみたいと思う。
いろいろな立場の人が考えていたことを知ることがその時代を知ることにつながるのかも知れない。
今回、偶然に「峠」と言う作品を知り、河井継之助という人を知った。
そして、そのきっかけとなった映画は今年の夏に上映が予定されている。
このご時世だから、予定通りに上映されるか心配な部分はあるが、上映されるのであれば、ぜひ劇場へ足を運んで鑑賞したいと思う。
あのときに長岡へ行かなければ知ることもなかったかも知れない映画である。
しかし、偶然にもこの映画のことを知れたのはついていたのだろう。
上映されることを楽しみにしている。
 
 
 
 
***

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2021-05-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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