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背中合わせの結婚を目指して


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:望月まりえ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「結婚なんて誰としても同じよ」
 
身近な既婚女性から聞いた言葉だ。それも一人だけでなく、何人かの女性が同じことを言っていた。そして、このセリフを言っていた女性は私から見て、魅力的で人間として好きだなと思う人ばかり。だから、根拠はないのだけれど、きっとこの言葉は真実なんじゃないかと思うようになった。
 
とはいえ、以前の私だったら「結婚なんて誰としても同じ」だなんて到底思えなかった。現に世の中、結婚相手選びに失敗したせいでとんでもない不幸に見舞われる人が後をたたないではないか。
 
何より、好きな人、もっといえば理想の男性と結婚するのと、そうでない男性と結婚するのでは、幸福度が違って当然じゃないか。
 
そう信じていた私は、理想の男性と結婚することを夢見ていた。
 
ある男性と出会う前までは。
 
***
いまから数年ほど前、私はある既婚男性に恋をしていた。誓って不倫関係ではなかったと言えるが、公私ともに大変よくしてくれた男性だった。
 
彼は私にとって恩師とも呼べるような存在だったので、ここでは「先生」と呼ぶことにする。
 
先生は、私の理想そのものだった。
 
知的で、クールで、気高くて。
一見無愛想だけれども、実はすごく温かくて、思いやりにあふれていて。
それでいて厳しさも持ち合わせていて、私がダメなことをしたときには厳しく叱ってくれる人だった。
 
フリーランスとして働いていた先生に憧れ、先生と出会って数年後に私もフリーランスになった。
駆け出しのフリーランスだった私には大した経験も実力もなかったが、先生が仕事の面倒をみてくれたおかげで何とか露頭に迷わずにすんだ。
それでも生活が苦しい時期には、先生が金銭的な援助までしてくれた。
 
そのことを友人に話すと、「下心があるからに決まってるじゃん!」とか「手を出されないように気をつけなよ」と言われたが、私たちは肉体関係はおろか、手すら繋いだことはない。
 
先生が下心をもっていたのかどうか真偽はわからないけれど、仮に持っていたのだとしても、それを表に出すようなことは一切なかった。
 
私が先生にハマってしまった一番の理由はここにあると思う。先生は惜しみなく与えながらも、決して私になにかを求めてこない人だった。
 
先生が無償で与えてくれる愛情の心地よさに溺れる一方で、「先生から早く離れなきゃ」と思う自分もいた。
 
一番の理由はもちろん、先生が人のものだから。はじめから既婚者だとわかっていて好きになったくせに、「誰かを傷つけたくない」なんていい子ちゃんぶっていた私には、奪う勇気も度胸も覚悟もなかった。
 
先生から離れなきゃと思った理由はもうひとつある。それは、このまま先生といたら自分がダメになるという予感だ。
 
先生といると私はどうしても甘えてしまう。仕事においても、自分が不得意な部分は先生がフォローしてくれていたので、私は次第に努力をしなくなっていった。
というより、するのが怖かった。
 
私は心のどこかで思っていたのだ。先生が私を必要としてくれるのは、私が手のかかる出来の悪い弟子だからなんじゃないか。
そして、私の面倒をみることに自分の存在意義を見出しているのではないか、と。
 
それなら、何の義理もない私に無償で与えて続けてくれた理由も説明がつく。
 
もしこの仮説が正しかった場合、私が成長してしまったら、先生から必要とされなくなってしまうかもしれない。
そのことを恐れていた私は、「成長したい」という思いと「成長するのが怖い」という思いの間で揺れていた。
 
先生のことを吹っ切るきっかけをくれたのは、友人からの問いかけだった。
 
「もしこのまま先生と一緒に居続けて、いまみたいな生活を5年後も送ってるとしたらどう思う?」
 
迷うことなく「嫌だ!」と声を上げた瞬間、私は先生と離れることを心に決めた。
 
「これからは先生の助けを借りずにやっていきたい」と話す私に、先生は悲しい顔を見せた。それでも「それが君のためになるなら」と言ってくれた先生は、最後まで私の理想の男性だった。
 
***
先生との出会いを通してわかったことがある。
それは、たとえこの先私が理想の男性と結婚できたとしても、私自身が変わることはないということだ。
 
かつての私はずっと、理想と現実の自分のあまりのギャップに苦しんでいた。
そんなとき先生という理想の男性と出会い、「この人と一緒にいれば私は変われるかもしれない」と期待してしまった。
 
いま思えば、先生と私は人間的なタイプがよく似ていた。けれども、先生のほうが人生経験や教養、懐が深く、人間性も優れていた。
 
先生はいわば「私がなりたい姿」そのものであり、私のアップデート版だったのだ。
 
私は先生を手に入れることができれば、先生と同じような人間になれる気がした。
もっといえば、先生が努力して身につけた人生経験や教養、人間性をラクして手に入れたいと思っていた。
 
「先生から必要とされなくなりそうで成長するのが怖かった」なんて言い訳で、私は単に努力を放棄していただけだったのだ。
 
私と同じように、恋愛相手や結婚相手の力を使って欲しいものを手に入れたり、自分の地位を上げたいと思っている人は多いと思う。
 
けれども、結婚しようとなにをしようと、他人が努力して得た力を自分のものにすることなんてできない。
 
「結婚なんて誰としても同じよ」と言っていた女性の真意はわからないが、私は「誰と結婚しても自分は変わらない」ということだと解釈している。
 
たしかに、誰と結婚するかで人生は変わると思う。
でも、誰と結婚しようと「自分」という人間はそう簡単には変わらない。
 
結局、自分を変えられるのは自分だけなのだ。
 
先生から離れて1年以上たったいま、自分の恋愛観、結婚観が変わりはじめている。
 
以前の私は本当に自分のことしか考えていなかった。
自分が幸せにしてもらうことばかり考えていたし、自分の勝手な思いで周囲の人を傷つけることにもおかまいなしだった。
 
そんな私もようやく、与えられるだけでなく、与えたいと思えるようになった。
 
最近さらに芽生えはじめた思いがある。
それは、「結婚して夫婦2人だけが幸せになるなんてもったいない」という思いだ。
結婚して互いが幸せになるのはもちろん、足りないものを補い合って相乗効果を引き出し、その力を周囲の人にも分け与えたい。
 
イメージとしては、夫婦2人が互いに向き合っているというより、背中合わせで一緒にいる感じが理想だと思う。
 
互いに外の世界に目を向けて、社会や人のために働きながら、背中を預け合える。
 
自分だけが幸せになるのではなく、夫婦2人だけで幸せになるのでもなく、周囲を巻き込んで幸せになる。
 
いつの日かそんな結婚をするために、成長し続けたいと思う今日この頃である。
 
 
 
 
***

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2021-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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