メディアグランプリ

23年間生活を共にした相棒を見送って知ったこと


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記事:深谷百合子(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
つい先日、23年間共に生活してきた相棒と別れた。私がひとり暮らしを始めてから、いつも一緒に過ごしてきた相棒だ。
 
それが、いつの頃からか私に小さなイライラを感じさせる存在になった。ずっと我慢をしてきたけれど、やっぱり毎日できるだけ気分良く過ごしたい。しなくていい我慢ならしたくない。そんなわけで、色々迷ったけれど、別れることにしたのだ。
 
だって、毎日扉を開けるたびに、床がビショビショに濡れるのだ。そのたびに拭き掃除しなければならない。サッと拭けばすむことなのだけれど、毎回毎回だとさすがにイライラする。野菜室に入れている野菜も濡れてしまうと傷みやすい。水漏れしている場所は分かっていたから、漏れ出す水を受ける容器を置いてしのいでいたけれど、受けきれずに落ちた水が下に溜まって、扉を開けた途端に床へ漏れ出すのだ。
 
「この冷蔵庫も、そろそろ手放す時期かな」と思う一方で、23年も使っていると愛着がある。「物を冷やす」という機能は保っているし、まだ使える。でも、水漏れのせいで、やらなくていいことが増えていると思うと、やっぱり買い換えようかと気持ちが揺らぐ。そんなわけで、電気屋に行くたびに冷蔵庫を品定めしては手ぶらで帰る日々が1年位続いた。
 
結局のところ、水漏れが段々ひどくなるに従って、日々の小さなイライラを解消したい気持ちが大きくなってきて、買い換える決心をした。それに、新しい冷蔵庫の方が省エネになるに違いない。
 
かくして、長年連れ添った古い冷蔵庫はきれいに掃除して送り出し、新しい冷蔵庫が家にやってきた。以前のよりひと回り大きいから、買いだめをしても、今までのようにぎゅうぎゅう詰めにしなくてもすむ。使いやすいし、物は取り出しやすいし、快適だ。
 
そして、新しい冷蔵庫になって初めて分かったことがあった。扉を開けて物を取り出す度に、寒いのだ。標準モードにしているのに、よく冷えてるなぁと感じるのだ。つまり、前の冷蔵庫は「冷やす」という機能もどうやら弱っていたようだ。
 
やっぱり買い換え時だったんだな。そう思いながら、扉に貼られているラベルを見た。そこには冷蔵庫の型式や容量、冷媒の封入量やら消費電力等が記されている。
 
さて、どれくらい省エネになっているのだろう?
 
私は興味津々で、古い冷蔵庫のラベルの写真を出しながら、見比べてみた。
「容量は新しいのが168Lで、前のが137Lだから、1.2倍かぁ」
「電力量は新しいのが月26kWhで、前のが月41kWh。ずいぶん減ったな」
数字を見ながら、電卓で計算をしてみる。
 
計算の結果、なんと、容量が1.2倍になったのに、消費する電力量は従来の6割位になるということが分かったのだ。冷蔵庫は24時間365日動き続けるから、この差は大きい。もちろん、毎月の電気代も安くなるはずだ。地球に優しいだけでなく、お財布にも優しいとは、まさにこのことだ。
 
さらにラベルの写真を見比べてみると、冷やすために使われている冷媒の種類も変わっていることに気が付いた。今までのはR134aという、二酸化炭素の1300倍もの温室効果を持つ冷媒だったのに、新しい冷蔵庫の冷媒はR600aと書いてある。調べてみると、温室効果は二酸化炭素の3倍だ。1300倍から3倍って、すごくない? もちろん、きちんとリサイクルすれば、1300倍の温室効果を持つ冷媒を使っていても、温暖化への影響はないのだけれど、この23年でこんなにも変わっていたとは!
 
もっと調べていくと、冷蔵庫に使われている材料も、人の健康や環境への影響に配慮したものが使われている。23年前だって、各家電メーカーは、製品の環境に対する影響には配慮していたはずだけれど、技術は確実に進歩しているんだな。私は真新しい冷蔵庫を前に、ちょっと感慨にふけっていた。
 
家電品は、そうそう買い換えることがない。家の中を見渡してみると、冷蔵庫と同じタイミングで買った洗濯機、炊飯器、電子レンジがある。そして、どれもまだちゃんと動く。多分最新のものに買い換えたら、「使いやすいじゃん!」、「ご飯、こんなに美味しいなんて!」、「そんなことまでできちゃうとは!」といった驚きが沢山あるに違いない。でも、壊れてもいないのに買い換える気にはならないのだ。新しいのにすれば、省エネにもなるかもしれないけれど、冷蔵庫ほどのインパクトもないだろう。だから寿命を迎えるまでは、大事に使おうと思う。
 
今回買った新しい冷蔵庫も、この先よほどのライフスタイルの変更や故障が無い限り、この先20年以上使い続けていくだろう。今度買い換える時には、どんな冷蔵庫になっているのだろう? 今とは全然違う、電気の使わない冷蔵庫とかになっていたら面白いだろうな。そんな妄想を繰り広げながら、私は夕食の支度に取りかかった。
 
 
 
 
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2021-05-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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